【プレイレビュー】フルボイス/フルモーションで進行する4次元フローチャートADV『タイムトラベラーズ』 ― イシイジロウ氏のコメントも到着!

デベロッパーからスタートし、送り出すゲームの完成度が高く評価。後にパブリッシャーへと移行し、様々なヒット作を生み出してきたレベルファイブの15周年を記念(ゲームソフトが半額!)して、筆者のお気に入り作品『タイムトラベラーズ』をご紹介いたします。

任天堂 3DS
タイムトラベラーズ
タイムトラベラーズ 全 40 枚 拡大写真
デベロッパーからスタートし、送り出すゲームの完成度が高く評価。後にパブリッシャーへと移行し、様々なヒット作を生み出してきたレベルファイブの15周年を記念(ゲームソフトが半額!)して、筆者のお気に入り作品『タイムトラベラーズ』をご紹介いたします。
※この記事には若干のネタバレが含まれています。

筆者は動かない画面というのがどうにも苦手で、ADV系のゲームはそれほど触れて来ませんでした。そこにLive2Dが登場し立絵が動くようになったり、そもそも絵ではなく3Dモデルになったりと、ADVも進化してきました。

その進化の中でも飛び切り目を引くのがこの『タイムトラベラーズ』です。

■フルボイス/フルモーションで進行するADV
『タイムトラベラーズ』はレベルファイブによるADVゲームで、ディレクターにイシイジロウ氏(代表作:428 ~封鎖された渋谷で~)、シナリオ に北島行徳氏(代表作:428 ~封鎖された渋谷で~、閃乱カグラシリーズ)、音楽に坂本英城氏(代表作:無限回廊、龍が如くシリーズ)、プロデューサーに日野晃博氏(レベル5作品全般)という豪華面々によって作られました。

ジャンル的にはSFに分類でき、刑事・ニュースキャスター・高校生・詐欺師・リアルライフヒーローという5人の「自覚なきタイムトラベラー」達(主人公)による物語です。

ゲームはフルボイス、フルモーションで進行。特に注目なのがフルモーションの3Dアニメーションで、これにより従来の読む形のADV「ビジュアルノベル」から見る形のADV「群像劇」へと変化、よって映像効果を利用した演出が可能となりました。

映画的演出はもちろん、カメラ目線やズームなど、映画ではあまり使われない演出もゲームを盛り上げるために使用されており、ゲームへの没入感を高めてくれます。

また本作はゲームであり、映画館で見る映画と違いスキップ機能が存在します。プレイヤーによっては、不要と判断した場面をスキップすることもあるでしょう。

そこで開発陣は「いかにスキップされることなく楽しんでもらえるか」という点を考え、適切なセリフ(テキスト)量、ボイスの速さなどを1つ1つ調整し、テンポよくゲームが進行するように仕上げたそうです。さらに、スキップ機能もフルモーションなものの、セリフ単位でのスキップを可能にしています。

■「コンテニュー」は「タイムトラベル」
肝となるゲームシステムは、5人の主人公を正しい選択へと導き、ENDを目指す内容となっています。ここで1つ例をあげましょう。刑事が犯人を追いかけ、必死に走っています。

走っているがゆえに、赤信号に気が付かず歩道から飛び出してしまいました。そこに運悪くニュースキャスターの乗った車が接近、衝突事故を起こしてしまい、刑事が死んでしまったとします。この場合、主人公1人が欠けることになるため、ゲームは最悪の結末へと進行してしまうのです。

では、どうすればいいのか。答えはこの事故を避ければいいのです。それを行うのがプレイヤーで、ニュースキャスターの視点から事故が起きないように適切な「選択肢」を選んでいきます。

この様に本作は、5人の主人公が同じ世界・時間軸で同時に行動しているので、プレイヤーはそれぞれの主人公を正しい選択へと導く必要があります。この「導く」という行為に失敗した場合、通常のゲームだとゲームオーバーになったり、リセットすることになるでしょう。

この「導く」行為が本作で言う「タイムトラベル」で、5人の主人公は自覚がないままタイムトラベルをしているという設定です。因みに、バッドエンドになった場合でも、1つ1つ障害を取り除いていくと、バッドエンドのデータをトゥルーエンドに持っていくことも可能です。

■ゲームでしか表現できないフローチャートの4次元化
このストーリー表現はゲームでしか表現できないことで、プレイヤーは世界を操る神であり、第3者として見る観測者であり、主人公たちと同じタイムトラベラーでもあります。

従来のADVとは異なり、それぞれが同じ時間軸で行動する5人の主人公が居て、彼らの行動によって未来が変わってしまう本作。そこにプレイヤーが干渉し、タイムトラベルだけでなく、未来を変えることにより過去も変化する「4次元フローチャート」の実装、そして専門用語もたくさんでます。

通常ならば情報量が多く、それを構成するシナリオも複雑になってしまうため、理解が難しい作品になってしまいます。ところが本作では、そもそものシナリオ構成や、PCE(※1)による直感的な体験、ゲーム中に出てくるキーワードについての補足を確認できる「TIPS」などにより、ゲーム世界観や個人、全体の流れがスッと理解できる作品に仕上がっています。それらをディレクターであるイシイジロウ氏が「シナリオ構成」ではなく「ゲームデザイン」と言っていたのが印象的でした。
※1:プレイングシネマイベントの略で、QTE(クイック・タイム・イベント)に近い演出です。

とあるテロリストの声がボイスチェンジ―ではなく、VOCALOIDだったり、某小動物型ロボットやレッドショルダー が出てきたり、他ゲームとのタイアップなどニヤっとさせる場面を豊富に取り入れつつ、感動のストーリー。

そして、本編クリア後に解放される『TTフォン』はおまけの域を超えた内容で、2002年とリアルが連動する恋愛ゲーム。本編とは異なり、タイムトラベルできず(するとデータが消えます)、結末は本編と同等いやそれ以上の内容となっています。

レベルファイブのADV『タイムトラベラーズ』、ADV好きも、筆者の様に普段プレイしない人も、SFやタイムトラベル作品が好きな人にも幅広くオススメできる作品です。

さらに、今回のレビューに際してイシイジロウ氏よりコメントを頂きました。

もっと多くの人にテキストアドベンチャーゲームを遊んで欲しい。僕たちはそんな思いで「タイムトラベラーズ」を作りました。

だけど「タイムトラベラーズ」はテキストアドベンチャーゲームではありません。
全てのキャラクターがフルボイスで台詞を喋り、走り回り、カメラも動き回る。まるで映画やドラマの様に画面が進んでいきます。

アドベンチャーゲームは紙芝居だから、文字だらけでゲームをやっている気がしない。そんな理由でアドベンチャーゲームに触れられないのは寂しかったからです。

おかげさまで発売より約一年、無料体験版も含め本当に沢山の方々に「タイムトラベラーズ」を触れていただく事が出来ました。そして今回の半額キャンペーンでまた多くの方々が「タイムトラベラーズ」に触れていただける事でしょう。

もしこの作品であなたがアドベンチャーゲームの面白さに触れたらなら「428 ~封鎖された渋谷~」など、多くの傑作と言われているテキストアドベンチャーゲームにも触れてみて下さい。

「タイムトラベラーズ」をプレイし終えた皆さんはもうお気づきでしょう。アドベンチャーゲームにおいての物語とは、ゲームの添え物としての物語ではなく、物語をゲーム化した、まったく新しい姿の物語のカタチなのですから。

タイムトラベラーズ監督 イシイジロウ


通常ならば、ここで本作のPVを張りたいところですが、ネタバレを大量に含んでいるため、今回はオリジナルサウンドトラックのPVにしておきます。なおインサイドでは過去に、BGMを担当した坂本英城氏にもインタビューを行っているので、併せてご覧ください。



PSP/PS Vita/3DSに対応した『タイムトラベラーズ』は好評発売中。価格はパッケージ版が5,980円(税込)で、ダウンロード版が4,980円(税込)です。

なお2013年6月11日までは、レベルファイブの創立15周年を記念して、ダウンロード版が半額の2,990円(税込)となっていますので、これを機会にプレイしてみてはいかがでしょうか。

(C)2012 LEVEL-5 Inc.

《栗本 浩大》

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