【E3 2013】光と影の世界を行き来しながら進めるフィルムノワール風アドベンチャー、『CONTRAST』プレイレポ
AAAタイトルとカジュアルゲームに業界が二分されつつある中、がぜん注目度が高まっているのがインディゲームです。
ソニー
PS4

E3プレスカンファレンスでも各社が支持を表明。ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)ブースで、PS4タイトルとして出展されたアドベンチャーゲーム『CONTRAST』もそのひとつ。開発はカナダのモントリオールにあるCompulsion Gamesです。
ゲームは1920年のフィルムノワールの世界観とヴォードヴィルを題材にしたアドベンチャーで、影をレベルデザインにうまく活用した、ユニークなパズル性が特徴です。主人公は影の世界にシフトする能力を持つ年齢不詳の女性Dawn。大人の世界に足を踏み入れたくてしようがない、早熟な8歳の少女Didiにふりまわされるように、20世紀初頭のパリを舞台に繰り広げられる光と影の物語が展開していきます。
最大の特徴は現実世界(3D)と影の世界(2D)を行き来しながら進めていくパズル部分です。Dawnは光源に照らされ、自分の影が背後にできる環境ならどこでも、実体から影の分身に姿を変えて、周囲の影を足場に移動できます。たとえば建物の外側から壁を伝って1階から2階に移動したいとします。壁の前で影になり、壁に照らされた建物の影を伝って進めば、なんなく到着できるというわけです。
影を足場にできるということは、光源を動かして影の形を変えれば、足場も変わるということになります。つまりレベルデザインにプレーヤーが介入することが、パズルの主要素になっているのです。影をうまく使ったゲームデザインは、ハードウェアの進化でリアルな影をリアルタイムに生成できるようになったことで、徐々に見られるようになってきましたが、本作もまたその系譜にあるタイトルといえるでしょう。
一方で時に影が邪魔をする事もあります。目の前に電柱など別の影が映り込み、通れなくなるなどの事態がそれです。このような場合でも○ボタンを押してダッシュすれば、するっと通り抜けることができます。実際、パズルの中には現実世界と影の世界を行き来しながら進んだり、ジャンプしながら影になって進むなどの場面も見られました。
ゲームはストーリー部分とパズル部分のサンドイッチ構造で展開し、プレイデモではダンサーに憧れるDidiがDawnを牽引する形で進んでいきます。はじめに路地裏で影を伝って建物の二階に上がり、窓から劇場の中に入りこみます。次にスポットライトを動かすと舞台にジャズ楽団の影が浮かび上がり、人気ダンサーと男性の不幸な気配を漂わせた人間関係が紹介されました。
次いでメリーゴーランドに移動し、壁に映って回る木馬の背中を移動しながら電気関係を修理。すると上空に浮かぶ気球にカメラがパンし、さらにパリの街を上空から見下ろすようにカメラが移動して……というところでデモプレイが終了。伏線だらけのストーリーが今後どのように進むのか不明ですが、この独特な世界観に魅了されるユーザーは少なくないと思われます。まあ、筆者がその一人だったわけですが。
というのも、ちょっとタイミングや操作関係がシビアで、何度も同じところで失敗し、イラッとさせられたことも事実だったりするんですよ。また謎が解けなければ先に進めない仕様にもかかわらず、ヒントの提示もなし。そのため途中で試遊台から立ち去る人も少なからず見かけられました。プレーヤーを引き込む魅力は高いだけに、さらなる「磨き込み」を期待したいところです。ま、プレイデモですからね。製品版に期待しましょう。
ちなみに同社が本社をかまえるモントリオールがあるケベック州はカナダでも唯一、英語に加えてフランス語が公用語となっており、フランス文化が色濃く残る地域です。一方で本作はフランスのパブリッシャー、Focus Home Interactiveから、年内にPS3・Xbox 360PC(Steam)で販売が決定ずみのタイトルでもありました。ところが同社サイトによると、E3にあわせて急遽PS4でもリリースが決定したとのことで、スタッフは喜びを隠しきれない様子。それだけSCE内で高く評価されたことが分かります。
個人的にも試遊台で何度もイラッとさせられながら、それでも最後までプレーしてしまった、妙に心に残るタイトルとなりました。はたして日本でどの機種で配信されるのか、またローカライズは行われるのか気になるところですが(まあ、最後の手段でSteamからダウンロード購入し、PCで英語版を遊べば良いわけですが)、ともあれ完全版のリリースを期待したいところです。
《小野憲史》
この記事の写真
/