鉄道・箱庭・経営、全方位のおもしろさが進化! 『A列車で行こう3D』飯塚ディレクターインタビュー

鉄道会社の社長となって、会社と都市を成長させる。アートディンクの『A列車で行こう』シリーズは、日本の風景で遊べる箱庭ゲームであり、列車の運行を楽しむ鉄道ゲームとしても多くのファンがいます。

任天堂 3DS
飯塚正樹ディレクター
飯塚正樹ディレクター 全 8 枚 拡大写真
■詳しくなったチュートリアル、シナリオ作成

―――今回初めて遊ぶ人も多いと思います。チュートリアルは改良されましたか。

前作よりも図解を増やして、丁寧に説明する感じです。前作と同じで3つにわけてじっくり理解を深めていただくと。ただ、遊ぶ要素が増えているので、配分は変わってます。チュートリアル1で資材まで扱います。

―――丁寧に説明しつつ、チュートリアル部分でもたっぷり遊べる

チュートリアルで挫折しないように、と考えて作りました。

―――前作も、チュートリアルとはいえ「あっ、こんなことができる」「これもできるんだ」という、テンポ良く発見する喜びが演出されていました。

そのリズム感は変わってないです。何も知らない人にいっぺんに機能を見せると、混乱しちゃうので、ちょっとずつ自然に理解を深めてほしいなと。

―――チュートリアルでどこまで学べるんですか。減価償却とかも?

そこなんですよ。それを説明しはじめるとたいへんなことになるんです。そこは経理部長がいろいろ説明するんだけれども、秘書さんがフォローしてくれて、社長がそこまで詳しくならなくても大丈夫ですよ、みたいなシナリオにして。

―――あとはプレイ中のフォローアップですよね。ヘルプ機能というか。

はい。細かいことはその都度、経理部長にきいてくださいねという感じです。今回はチュートリアルもログをあとで読み返せるようにしました。軽く読み流しちゃっても、あとでじっくり読めます。

―――もう一回チュートリアルを遊ばなくちゃ、とはならないんですね。それは便利ですね。

―――マップコンストラクションでは会話シーンも設定できるというのがあって、かなり物語を作り込めそうな感じですね。

ええ、ここはみなさんに自由に使っていただいて、オリジナルのシナリオをつくっていただきたいなと

―――もしかしたら、経営ゲームなのにアドベンチャーゲームを作れるかも?

ゲームシナリオと言っても、別のゲームを作れるわけではないですよ。会話シーンを設定できると言うだけですから。会話シーンの発生条件にしたがって会話を表示させるだけです。

―――儲かったら艶子さんに色っぽく褒めてもらえるとか。

はいはい(笑)。

―――マップの広さ、前作は176マス×176マスだったそうです。

今回は224マスです。

―――これは12のマップすべて同じ広さですか。

そうです。同じ広さです。

―――公共施設は撤去できるようになりました。

前作はただの邪魔者だったかも。でも今回も撤去にはお金がかかります。おいそれとどかさない方がいいと思います。前作と同様に、立地条件をよくする効果があるので。住宅が建ちやすくなります。

―――前作はセーブが3カ所でした。もっとふやして……と。セーブ数を増やしてもう一つゲームを買った、なんて人もいたようで……

今回はセーブが50個です。これは、セーブ場所の仕様をカートリッジからSDカードに変更したためです。カードリッジ側はシステムデータのみ保存しています。SDカードにセーブするけど、50で制限している理由は、任天堂さんからのガイドラインに合わせています。ひとつのゲームでSDカードを独占するわけにはいかないので。でもガイドラインの最大値まで使わせていただくと。
―――コンストラクションもセーブ可能にと、これはさきほどの50の中に入りますか。

前作は完全にコンストラクションモードではなくて、自動生成マップであそべるという機能でした。今回はコンストラクションモードですけれど、通常のゲームで使える機能はすべて使えるんですよ。だからセーブもできます。

―――ダウンロード、データのやりとりができますよね。SDカードで。公式サイトでマップを交換できるようになりませんか。

サーバを持つということは考えてないです。ユーザー間でうまいことやってほしいなと。あくまで友達とメールで交換してくださいと。

―――SDカードにデータがあるよ。それ以上は内緒。

データのセーブ場所など、ある程度は説明していますけど。

―――新マップはニンテンドーストアで提供するんですか

ニンテンドーストアのシステムを使っていますが、DLCはゲーム内から購入できる仕組みが必要なので、タイトル画面にDLCのボタンをつけたんです。

さらにシナリオコンテストをやるんです。優秀なシナリオを集めたらパッケージ化して販売しようと思っています。

シナリオの中に、ユーザーが作ったマップや車両が含まれるので、シナリオの作者が、街に合わせてデザインした列車を出せるという感じですね。

■追加した要素をゲームに必要な機能にしない

―――プロモーションムービーの中で、どっちの社長さんが優秀か競い合うという説明がありました。あれはどんな仕組みですか。

ライバル機能ですね。前作でもちょっとあったんですけれど、あまりにも目立たなかったので遊ばれなかったんですね。ゴーストとの競争です。同じシナリオをプレイしたセーブデータと競争してみようという機能です。前作は会社情報から履歴だけ比較できたんです。それだけだと地味すぎて競争感がなかったので、今回はリアルタイムで秘書さんが「ライバル会社さんが何々を達成したようですよ」と報告してくれて、ライバルボタンを押すとそのマップを見られるようにしました。視察できるんです。ライバルとして競争してもいいし、なかなかゲームクリアできないというひとが、先にクリアした人のデータを参考にしてもいいですし。

―――ダウンロード版という要望が高いようですが

検討中です。まだ正式にやるかどうかはわかりません。

―――気が早いですけど、次回作の構想なんて

今後も作り続けていきたいですけど、現行のニンテンドー3DSではもう難しいですね。ほんとに限界まで機能を詰め込んだので、この機械でこれ以上は無理だなあと感じています。

―――ハード自体がバージョンアップしてくれないと無理?

そうですね。

―――もしかして、今回も入れたいけど入れられなかった要素があるとか

ありますね。たとえば路面電車の専用線とかね。これは機械の性能と言うより、容量と選択の問題でしたけど。

―――都電荒川線とか、広島電鉄の宮島線みたいな機能ですよね

そんな、自分の中でのこだわりみたいな路線はないんですけど、ただ、普通の線路にも路面電車を走らせたかったなと。

―――やりたいこと、いっぱいあったんでしょうね。

もちろんネタ的にはいくらでも。ただ、性能の問題だけではなくて、シェアが広がってくれないと会社としては開発にリソースを投入できないですよね。

―――おっと、リアルな経営の話だ(笑) みなさん買ってくださいと。話を変えて、飯塚さんの好きなマップ、思い入れのあるマップはどれですか

今回、マップはあまり関われなかったんですよね。デザイナーさんに任せてしまって。だから、個人的に思い入れのあるマップというのはないです。

―――ネット上では、マップの元ネタはどこだ、という話題で盛り上がっているようですが、あれは当たってますか。

あたっているのもありましたね。広島だったかな。マップは元ネタとして実際の地形があるんです。でも、シナリオを作り上げていく過程で形が変わってしまいますから、実在の地形と同じではないですね。だいたいなにかしらモチーフにしています。

―――奥の深いゲームになりましたね。

難しすぎるという声が多くなりそうで心配なんですけどね。ただ、今回心がけたところは、追加した要素をゲームに必要な機能にしないように気を付けました。

―――追加要素がゲームの難易度を左右しないようにとは

おもしろさを追加して、難易度は上げない。ダイヤは細かく設定できるけど、その機能を使わなくたって街は発展できますよ、とか。

―――そういえば、資源の種類が増えましたけど、お金儲けの要素を追加しただけで、街の発展とは関係ないという話でしたね。

そうです。ジオラマ的にパーツが増えるけど、ゲームに影響しませんよ、と。電化非電化についても、風景を飾る程度なら楽しいけど、運行できる列車に制限ができたら楽しくないなと。

―――3Dということで、プレビューモードも楽しくなりましたね。ここにこだわりは?

ここはすんなりと3D化できたなと思います。このゲームの場合、3Dは見るだけなので、そこで操作することはないのでやりやすかったです。PC版のように操作もできるようにすると、奥行きがある中で操作するって大変なんですよ。上画面はタッチできないので、見るだけと割り切れた。

―――プレビューの間は街の成長は止まっている?

いえ、時間は進んでいます。操作ができないだけです。

―――そのほかの3Dプレビューで配慮したところは

ほんとは、クォータービューと3Dビューで、よくみると違うオブジェクトだったりします。ほとんどの建物は同じなんですけど、見え方によって描き直したところもあります。あと、実は車両と建物の縮尺が、クォータービューと3Dビューで違うんです。3Dビューで人を出したら、デフォルメとはいえ建物と車両のバランスの差が目立ってしまったので、電車をちょっと大きくしています。

―――最後にプレイヤーの皆さんへメッセージを

シナリオコンテストが始まりました。ぜひ応募してください。公式に作れないような(開発者スタッフが思いつかないような)作品を見たいなあ。じっくりと実際の地形を作っても楽しいでしょう。さっくりとしたネタマップも歓迎します。期待して待っています。

―――ありがとうございました
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《杉山淳一》

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