──それでは、音楽面に関しても伺えればと思います。『ガンヴォルト』というゲームシリーズの音楽作りに関して、重視している部分などはありますか?
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山田氏:まずは「スピード感」。そして「ノンストップ」ですね。アクションゲームというよりも、シューティングゲームのイメージで作っています。アクションゲームは地に足着けて進むというイメージですが、『ガンヴォルト』の場合、上手くなるほどガンガン進んで、通り過ぎてから敵を撃破する……みたいなプレイになるんですよ。
──なるほど。確かにそのシチュエーションは、シューティングゲームに近いテイストですね。
山田氏:そういう風に遊んで欲しいところもあるので、シューティングゲームを意識した音作りをしてますね。飛んでいる感覚を味わって欲しいというのが、コンセプトのひとつです。
あとはノンストップということで、流れを止めたくなかったんですよ。どんどんクロスフェードで繋げていきたくて、ローテンポだろうがハイテンポだろうが全て同じクリックで曲を作っています。
──1曲1曲が完成されているのはもちろん、ステージ全体を通して大きな1曲でもあるわけですね。
山田氏:そうですね。ステージ全体を組曲のように楽しんでもらうという試みは以前も行ったことがあるんですが、(『ガンヴォルト』で)やれたかなと思います。
ちなみに『爪』はダブル主人公です。普通は「同じステージを異なる主人公で楽しめる」という形が一般的ですが、本作ではGVとアキュラでプレイするステージはそれぞれ異なりますし、BGMもGVの方は従来に近くて、アキュラの方はアレンジを全て変えています。レイヴ系に近い感じですかね。
もちろんGVとアキュラでは、クードスで流れる歌も違うので、アクション性や物語だけでなく、音楽面でもひと味違うものを楽しむことができます。「違うゲームが2本入ってる」みたいな作品にしたいなと思って頑張りました。……何度か挫けそうになって、「それはやめようか」みたいな話も出ましたが(笑)、でもなんとか形になりました。
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──GVとアキュラ、それぞれで異なるゲーム体験が楽しめるんですね。
山田氏:あともうひとつ言わせて欲しいのが、敵キャラクターについてです。前作の敵も個性的だったんですが、『爪』では輪をかけて個性的にしすぎてしまいました(笑)。
津田氏:前作であれだけやったので、『爪』ではもっと上回らないと、みたいな感じでやってましたね(笑)。
山田氏:例えば今回、ガウリというラップのリズムを刻んで戦うキャラがいるんですが、ラッパーのACE君にガウリの台詞を全部ラップしてもらったんですよ。それを声優さんに学んでもらって音声収録してもらいました。
あと、ニケーというロシア系のキャラがいるんですが、彼女はカタコトで喋るので、ロシア生まれのジェーニャさんをキャスティングした上で、ロシア訛りな感じで発音してもらったこともありました。こんな感じで、表現もキャラごとに拘ったんですが、そのためクセが付きすぎてしまったかもしれません(笑)。
津田氏:ちなみにジェーニャさん、別に日本語下手じゃないですからね?(笑) 上手なのに、わざとロシア語訛りを入れて喋ってもらったんです。
──では、そういった部分もデザインに反映されているんですか?
荒木氏:んー……いや、ないですね(笑)。そういう個性付けは田井が考えていて、デザインの段階では普通に喋る恰好いいヤツだと思ってます。だから、声が入った時に驚きます。「こんなヤツだったんだ!」って(笑)。
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山田氏:デザインコンセプトとキャラコンセプトは、ちょっと別ですよね。特にデザインコンセプトは……これ言っちゃっていいのかな?
荒木氏:あれですよね。前作の時は「七つの大罪」がモチーフでしたよね。『爪』で同じ事やるのもどうかなと思いまして、今回は「童話の女の子」をモチーフして盛り込んでみます。キャラクター性とはちょっと違う部分ですよね。
山田氏:童話モチーフのテイストがあって、そこから転じた性格をそれぞれが持っているんです。だから、一段階踏んだキャラクター造詣なんですよ。
──関連性があった上で、ひと味違う仕上がりになっているんですね。
山田氏:前作の時は、「七つの大罪」だったので、モチーフと性格付けがイコールに近かったんです。なので、音楽とデザインとキャストの声がひとうのコンセプトで通っていたんですよ。でも今回はちょっと複雑で、全体的にヒネりのある感じになっています。出身も様々なので、音楽的にもちょっと民族色が感じられると思います。テンジアンだとちょっと中国風だったりと。
──そういった民族的な拡がりも、前作とは違う音楽面のひとつと。
荒木氏:ちなみにキャラクターをTwitterとかで公表すると、モチーフになった童話がバレちゃったりしてますね。バレるまでは「そうじゃないんだなー」みたいな気持ちで楽しませてもらってます(笑)。