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名作ゲームブック「ドルアーガの塔」三部作や、ベニー松山氏が手がけたウィザードリィ小説「隣り合わせの灰と青春」などを電子書籍化し、Kindle版として意欲的にリリースしている“幻想迷宮書店”が、更なる作品を2冊同時にリリースしました。
今回は2冊同時配信となっており、1冊目は「ドルアーガの塔」シリーズの著者である鈴木直人の傑作「パンタクル1」を復刊。本著の電子化に当たり、魔法を使う場面すべてにミニパンタクルを設置し、またリンクシステムを利用することでよりゲーム的な変更を加えるといった改良が行われています。
そして2冊目は、幻想迷宮書店では初となる完全新作ゲームブック「バリアントナイト―魔眼の騎士―」が、満を持しての登場です。「魔人竜生誕」「夢幻の双刃」の著者、松友健氏によるこちらの作品は、もともと創土社から書籍として刊行予定だったもの。5年前の時点で原稿の8割は完成していたにも関わらずお蔵入りとなっていた幻の作品が、電子書籍で見事な復活を果たす形となりました。
Kindle版「パンタクル1」と「バリアントナイト―魔眼の騎士―」は、11月21日より配信を開始。価格はそれぞれ500円(税込)と、今回も手軽に楽しみやすい価格です。ゲームブック好きの方は、よければチェックしてみてください。
また今後の予定に関してですが、早ければ12月中に「パンタクル2」が、そして来年2月に「ティーンズ・パンタクル」が登場します。加えて、まだ詳細は明かされていませんが、長編新作ゲームブック「護国記」をリリースするとのこと。この他にも、海外ファンタジーノベルの翻訳も予定されています。今後も更なる展開を見せる“幻想迷宮書店”の活躍に、ご期待ください。
著者は、あの「ドルアーガの塔」シリーズや「スーパー・ブラックオニキス」で国内ゲームブックの金字塔を築いた鈴木直人氏。
本作はこれらに続く作品で、円熟味を増した構成力、描写、鈴木直人ならではの高密度のパズルと、読み応え十分の要素がこれでもかというくらい詰め込まれています。にもかかわらず、内包するパラグラフ数はたったの500項目。
さる大手企業では新人プログラマーの教育育成に本書を読ませて、効率の良いプログラム構造の勉強をさせたというエピソードがあるほどです。
■パンタクル1の電子化にあたっての改良点
・魔法を使う場面すべてにミニパンタクルを設置
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(画像はKindle for PCで本書を開いているところをキャプチャしたもの)
旧版は魔法を使うときはアドベンチャーシートに記載された魔法ごとの番号に飛び、結果を参照していました。電子版でも「パラグラフ直リンク」機能を使って、これと同じことができるのですが、もっと快適に遊べるように、魔法を使うことができるシーン全てで画像のようなミニパンタクルを表示するようにしています。
・パズル要素だったところをリンクシステムを利用してよりゲーム的に変更
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(旧版)
例えば、旧版では「1はどの場所にあったか? 〈A―1〉とか〈B―2〉とか、一つだけメモしたうえで(二二八)へ進む。」と文章で進めていく形になっていました。これは紙である以上、やむを得ない処置でした。このシーンは、電子版では以下のようになっており、よりゲーム性が高まるように変更されました。
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(Kindle版)
これまで幻想迷宮書店のゲームブックはすべて名作と言われた過去作品の電子リメイクでしたが、ついに完全新作の登場です。著者はかつて創土社から刊行されていた「魔人竜生誕」や「夢幻の双刃」の作者、松友健氏。
デビューが2006年と80年代のブームから離れていたため、知名度では他の有名作家に一歩譲るものの、過去の著作では一部読者から熱狂的な支持を獲得しており、アプリ化などのリメイクもされています。
彼の特徴とも言えるバラエティに富んだストーリー展開は今作でも健在。ヒロインと愛を育む恋物語から、男たちの熱き戦いに生きる英雄譚まで、あなたの選択次第で物語は千変万化していきます。
「魔人竜生誕」「夢幻の双刃」は比較的“手間の多い”ゲームブックで、腰を据えて取り組む作品でした。しかし本作では、本文中に表示されるタップジャンプのリンクだけで構成されていて、手軽に物語を楽しめることを重視して作られています。といっても、ルールやシステムが手抜きされているわけではなく真面目に遊ぼうとすれば、シビアな難易度にもなる、読者に遊び方を委ねた作品となっています。
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