【hideのゲーム音楽伝道記】第51回:『ファイナルファンタジーVII』。「F.F.VIIメインテーマ」=「クラウドのテーマ」説

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【hideのゲーム音楽伝道記】第51回:『ファイナルファンタジーVII』。「F.F.VIIメインテーマ」=「クラウドのテーマ」説
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インサイドをご覧の皆さま、こんばんは。ゲーム音楽大好きライターのhideです。ゲーム音楽連載「hideのゲーム音楽伝道記」第51回目の今回は、もうすぐ発売20周年を迎える『ファイナルファンタジーVII』について書きたいと思います。



『ファイナルファンタジーVII』(以下『FFVII』)は、1997年1月31日にスクウェア(現スクウェア・エニックス)からプレイステーションで発売されたRPG。全世界での累計販売本数はなんと1,100万本を超える、『FF』シリーズの中でも屈指の人気作です。

「魔晄(まこう)」と呼ばれる、人々の生活に欠かせないエネルギー資源を地中から汲み上げて管理を行う巨大企業・神羅(しんら)カンパニー。しかし、この魔晄の正体は“星の生命”とも言えるエネルギーそのものであり、「魔晄炉」という施設を使って魔晄を無理矢理に吸い上げる神羅の行為は、星を急速に滅亡へと導く危険性を孕んでいました。魔晄を資源として使うことに反対する者たちは、反神羅組織「アバランチ」を結成して、神羅への抵抗活動を展開することになります。

過去に「ソルジャー」と呼ばれていた主人公・クラウドは、アバランチに雇われ、神羅が支配する魔晄都市「ミッドガル」の一角にある、壱番魔晄炉の爆破作戦に参加します。やがて彼は、幼なじみのティファとの再会や、古代種の末裔である少女・エアリスとの出会いを経て、自らの故郷を奪った仇であるセフィロスの復活を知ることに。さらにセフィロスの存在がこの星の危機を意味することを知った彼は、セフィロスを追う旅へと出ます。そしてクラウドは、自分自身の“存在”を大きく揺るがす真実に向き合うこととなるのです。果たしてクラウドたちは、危機が迫る星の命を救うことができるのでしょうか――。

本作の音楽を担当したのは、『FF』シリーズの音楽を多数手がけてきた作曲家の植松伸夫氏。彼の紡いだ美しくメロディアスな旋律には、多くのファンが魅了されてきました。『FFVII』のゲーム内容や音楽についてはご存知の方も多いと思いますので、今回はより深くマニアックな視点で、本作の音楽について紐解いていきたいと思います。

◆「F.F.VIIメインテーマ」=「クラウドのテーマ」説



『FFVII』は、オリジナル・サウンドトラックも発売中です。本作には全85曲にもおよぶ多数の楽曲が用意されているのですが、『FFVII』の楽曲一覧を眺めてみると、ひとつ、気づくことがあります。それは、本作の主人公・クラウドのテーマ曲となる、「クラウドのテーマ」という曲名の音楽が存在していないということ。「ティファのテーマ」や「エアリスのテーマ」、「バレットのテーマ」、「レッド13(XIII)のテーマ」、「ケット・シーのテーマ」といった各キャラクターのテーマ曲が存在するにも関わらずです。僕がこのことに気づいたのは、つい数年前でした。「ほかのキャラクターごとのテーマ曲は存在するのに、なぜ主人公であるクラウドのテーマ曲が無いんだろう?」と、不思議に思ったものです。

さて。ここで1曲、『FFVII』の楽曲をご紹介しましょう。

本作で特に印象的な楽曲として、フィールドマップ画面で流れる楽曲、「F.F.VIIメインテーマ」があります。起伏に富んだ、壮大で情感豊かなメロディが美しい名曲ですが、今回は、この楽曲についてひとつの仮説を提示してみたいと思います。

それは、
「F.F.VIIメインテーマ」こそが、「クラウドのテーマ」なのではないか?ということです。

「F.F.VIIメインテーマ」という楽曲は、基本的にはフィールドマップで流れるものになるのですが、じつはそれ以外にも、クラウドに関する重要なイベントで使われています。それは、ゲーム中盤に訪れるミディールという村での出来事。クラウドとティファが、「ライフストリーム」と呼ばれる、この星に生きるものすべてが宿している命の力・“精神エネルギー”のうねりの流れの中に沈んでしまうことに。そして、彼らがクラウドの精神世界で5年前の過去と向き合って、すべてを思い出す……という非常に重要なシーンが展開されるのですが、ここで流れる楽曲こそが、「F.F.VIIメインテーマ」なのです。この楽曲の、ゆったりとしていながらも雄大な旋律は、すべてを思い出したクラウドの晴れやかな安堵感が感じられ、非常に印象的でした。

また、この楽曲は起伏が大きいのが特徴なのですが、これは、“クラウドの不安定な心理”を表現しているように感じたのです。これらのことから、「F.F.VIIメインテーマ」は、「クラウドのテーマ」なのではないか?と僕は思いはじめるようになりました。

これだけだとまだ仮説の域を出ないのですが、今回提示した、「F.F.VIIメインテーマ」=「クラウドのテーマ」説について、大きなカギとなるものがあります。


それは、こちら。『FFVII』サントラの限定版です。『FFVII』サントラの発売当時に数量限定で販売されていたものなのですが、この限定版のブックレットのとあるページに、非常に興味深いページがありました。


なんと、「クラウドのテーマ」というメモが書かれている、植松氏の手書きの楽譜が掲載されているのです(著作権上の観点から、楽譜の部分にはモザイクをかけさせていただいています)。

この楽譜を初めて目にした僕は、「クラウドのテーマ!? はて?そんな曲、サントラの楽曲一覧には無かったけど、どういうことだろう?」「この楽譜を実際に演奏すると、どういう曲になるんだろう? これがもしF.F.VIIメインテーマと同じメロディであれば、F.F.VIIメインテーマはクラウドのテーマだ、と言えるかもしれないぞ」と思った僕は、友人の協力を得て、この楽譜について調べてみました。……その結果、この楽譜に書かれている音階は、「F.F.VIIメインテーマ」のメロディほぼそのままだということが分かったのです。このことから、「F.F.VIIメインテーマ」は「クラウドのテーマ」とほぼ同義だと言ってもよいと思います。

ちなみに、この楽譜が掲載されているページは通常版サントラのブックレットには無く、限定版にのみ存在しています。限定版は希少なため、今となっては入手困難かもしれませんが、もしご興味をお持ちの方は、現物を入手のうえご覧になってみてくださいね。

なお、植松氏が近年『FFVII』についてのインタビューで語られたお話によると、「『FFVII』では、僕らは常にクラウドを操作して動かしますので、フィールドで流れているF.F.VIIメインテーマは、自分(クラウド)のテーマなんだという解釈です」と語られていました。植松氏の発言からも、「F.F.VIIメインテーマ」=「クラウドのテーマ」という認識は合っているとみてよさそうです。

『FFVII』という作品は、クラウドというひとりの人物の内面や、苦悩しながらの自分探しが、深く濃く描かれています。この作品の最重要人物といっても差し支えありません。「F.F.VIIメインテーマ」が「クラウドのテーマ」というのは、必然的なのかもしれませんね。

◆さまざまな楽曲で顔を見せる「F.F.VIIメインテーマ」


考えてみれば、「F.F.VIIメインテーマ」は、『FFVII』のさまざまな楽曲で顔を見せていました。たとえば、ゲーム序盤の舞台となるミッドガルを脱出し、広い世界に出る直前に流れる楽曲「想いを胸に」は、「F.F.VIIメインテーマ」のアレンジ曲です。クラウドら登場人物それぞれが、これから始まる、セフィロスを追うための長い旅に対して抱く複雑な想い。それを、基本的に前向きだけれど、若干の不安さも見え隠れする絶妙なバランスで表現しています。

また、クラウドがカームの町の宿で、皆に過去の話をするイベントなどで流れる楽曲「5年前のあの日」にも、「F.F.VIIメインテーマ」のモチーフが入っています。うすら寒く響くストリングス風の音色が、心にうっすらと“もや”を抱えながら、自らの故郷・ニブルヘイムでの思い出を語るクラウドの複雑な心情を演出しているように感じます。

続いて、古代種の残した知識が眠っている神殿「古代種の神殿」の壁画の間などで、クラウドが突然錯乱してしまって自分を見失い、悩み、もがく……というシーンで流れる「俺は…誰だ」という楽曲。これは、「F.F.VIIメインテーマ」を重苦しく陰鬱にアレンジしたものになります。自分の中に、自分とは違う誰かがいる恐怖感。自分を見失ってしまって、己の存在意義を必死に探すクラウドの苦悩。そういった苦々しい感情が、見事に音楽で演出されています。

さらに、世界の最北端にある巨大なクレーターや、ゲーム後半のフィールドマップで流れる楽曲「北の大空洞」や、飛空艇に乗る際の楽曲「空駆けるハイウインド」も、「F.F.VIIメインテーマ」をアレンジした楽曲です。

こうして見てみると、本作ではじつに多くの箇所で「F.F.VIIメインテーマ」がアレンジされて使われていることがお分かりになるかと思います。クラウドに関係するイベントで「F.F.VIIメインテーマ」のアレンジが多く使われている部分から考えても、これはクラウドのテーマ曲と言ってよさそうです。それだけクラウドは本作の根幹を成す重要人物であり、彼の旅をさまざまな形で演出する「F.F.VIIメインテーマ」は、本作でもっとも重要な楽曲だといえるでしょう。

◆人間のさまざまな「感情」が詰まっている作品


『FFVII』は、登場人物たちの中にある悩み、不安、怒り、復讐心、絶望、それに抗う勇気や希望……といった、さまざまなリアルな感情が詰まっている作品です。また、己の境遇や過去について悩み苦しむクラウドや、彼を心配しながら見守るティファ、己に待ち受ける運命を恐れず使命を果たそうとするエアリスといったキャラクターたちの数々の言葉には、「逃げずに、己と向き合う」「己に打ち克つ」といった多くの熱いメッセージが込められているように思います。本作をプレイすればきっと、彼らの想いに共感したり、心に残る言葉やシーンに出会えると思いますので、未プレイの方はぜひ、クラウド達が織りなす『FFVII』の物語に触れてみてください。そして、植松氏の音楽は、この物語を音楽面で大いに盛り上げてくれていますので、プレイの際にはぜひ音楽にも耳を傾けてみていただきたいです。

『FFVII』は、近未来的でスチームパンクな世界観になったことにより、それまでの『FF』シリーズとはやや方向性の異なる楽曲になりました。植松氏は、『FFVII』発売当時のインタビューで「グラフィックが2Dの頃とは違って説得力がありますよね。そこにベタベタのわかりやすいメロディがつくと、うるさい感じがすると思いまして、絵が語っているところは1歩引いてメロディをつけずにリズムだけ、伴奏だけにするなどの工夫をしてみました」と語られていましたが、ここぞというシーンには植松氏ならではの美しくメロディアスな旋律が響き、プレイヤーを魅了します。現在はPS4や、ゲームアーカイブス(PS3、PS Vita、PS Vita TV、PSPでプレイ可能)やスマートフォンなどでもプレイできますので、若い世代の方にもぜひプレイしてみてほしい作品ですね。

余談ですが、『FFVII』の物語は非常に深みがあり、複雑です。一度のプレイだけでは、物語の全貌が理解できないかもしれません。しかし、2回、3回と周回を重ねてプレイしていくと、「ああ、このキャラのこのセリフは、こういう意味だったのか…!」と思わず唸ってしまうような部分もたくさんあります。何度遊んでも新しい発見がある、非常に奥の深い作品だと思いますね。そんなところも、『FFVII』が多くの人に愛されている理由のひとつなのかもしれません。


今回ご紹介した『FFVII』は、『FINAL FANTASY VII REMAKE(ファイナルファンタジーVII リメイク)』と題してPS4でリメイクされることが発表済みです。全面的なフルリメイクとのことで、グラフィック面のパワーアップや新規要素の追加も期待大ですが、個人的には音楽面がどのようにアレンジされるのかが一番気になるところですね! 続報を楽しみに待ちたいと思います。

【筆者プロフィール】
 hide / 永芳 英敬

ゲーム音楽ライター&ブロガー。ゲーム音楽作曲家さんへのインタビュー記事、ゲーム音楽演奏会のレポート記事など、ゲーム音楽関係の記事を執筆。最近は『GRAVITY DAZE 2』をプレイ中。オープニング曲が大のお気に入りです。生演奏で聴いてみたい!
[Twitter] @hide_gm [ブログ] Gamemusic Garden

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《hide/永芳英敬》

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