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最後にやってきたのは鶴岡市の市街地にある南岳寺。市街地に即身仏があるなんて、ちょっと不思議な気分です。
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南岳寺は注連寺の末寺ですが、昭和31年に火災にあい、堂舎ことごとく燃えてしまいました。しかしご本尊と即身仏は奇跡的に無事だったのだそうです。現在は再建された本堂の下に安置されています。
市街地にあり、滞りなく祠に到達。こんな簡単に祠チャレンジ成功していいのでしょうか? 再び疑問を抱きつつ、中に入ります。
南岳寺に安置されている鉄竜海上人は今回訪ねた4体の即身仏の中で最も年代が新しく、明治になってから入定したと言われています。空海と同じ62歳で即身仏となるべく木食行を遂行しましたが途中で病気になってしまい、「埋葬後3年してから掘り返し即身仏にしてほしい」と遺言しました。しかし明治13年(1880)に発令された墳墓発掘禁令により墳墓発掘と遺体損壊が禁止されてしまったため、入定した年を明治元年とし、官憲の目を盗んで遺体を墓から掘り出したと言われています(『日本ミイラの研究』)。
そのような経緯からか、鉄竜海上人はこれまでの即身仏よりも「生っぽい」という印象を受けました。うつむき加減で、少し苦悶の表情を浮かべているようにも感じます。鉄竜海上人も人々の眼病平癒のため左目をえぐったらしく、左目部分が陥没していました。本人の手形がついた掛け軸も展示されており、「そこにいる感覚」がこれまで以上にリアル。喋り出しそうな錯覚すら覚えました。
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南岳寺のもうひとつのみどころは淡島大明神です。こちらは明治時代の超能力者・長南年恵を祀っています。長南年恵は20歳の頃から食事をしなくなり、排泄物などもなかったといいます。また、何もないところから物品を取り出す超能力を備えており、空の瓶を水で満たすことができたのだそうです。これは神水と呼ばれ、万病に効いたといわれています。
不食を貫き、超常現象によって人々を救った長南年恵。出羽三山を有する庄内地方には、不思議な力が生まれる土壌があるのでしょうか? シーカー族も真っ青ですね!
というわけでリアル祠チャレンジ終了! 4つの即身仏を巡り、体力が少しだけ増えたように感じます!
…という冗談はさておき、他に類を見ない、日本の即身仏に触れ、何事かを成さんとする人の思いの強さをひしひしと感じました。即身仏そのものが奇跡の産物なのに、それは空想などではなく、今もなお庄内地方の人々の生活の中にあるのです。事実はゲームより奇なり! 祠の導師もすごいですが、即身仏もすごい!
今回は4か所に絞ってリアル祠チャレンジを遂行しましたが、新潟県から山形県にかけて、6体の即身仏をみることができます。興味を持った方はこちらのサイトやこちらのパンフレット(PDF)から情報を集めてみてはいかがでしょうか? リアル祠チャレンジの道はまだまだ続きそうです!
参考文献:
『日本ミイラの研究』 日本ミイラ研究グループ編 平凡社
『日本のミイラ仏』 松本昭 臨川書店
『日本のミイラ仏をたずねて』 土方正志 晶文社