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昔話をモチーフとしたゲームは今も多くありますが、ファミコン・スーパーファミコンの時代にも当然リリースされています。その中でも、暖かみのあるグラフィックと大胆なアレンジで注目を集めたのが、『平成 新・鬼ヶ島(前編・後編)』です。
本作は、ディスクシステム用ソフトとして登場した『ふぁみこんむかし話 新・鬼ヶ島』(前編:1987年9月4日、後編:1987年9月30日)の続編的な作品となっており、鬼退治に向かう三匹のお供を掘り下げる物語を描きました。
1998年5月23日にROMカセット版として発売された『平成 新・鬼ヶ島(前編・後編)』。ですが本作の歩みはやや複雑なものとなっており、当時遊んだ方同士でも、それぞれ異なる環境でプレイしているかもしれません。そこで今回は、ROMカセット版の発売20周年を記念し、その歩みや特徴について振り返ってみたいと思います。
◆3つの形態でリリースされた『平成 新・鬼ヶ島』
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おじいさんとおばあさんが授かった男の子と女の子が鬼退治に向かうストーリーが展開する『ふぁみこんむかし話 新・鬼ヶ島』。その物語は、前編・後編の二部作で紡がれ、結末へとたどり着きます。今から31年前に発売されており、年号で言えば昭和の時代です。
『ふぁみこんむかし話 新・鬼ヶ島』は、名前から分かる通り、有名なおとぎ話「鬼ヶ島」をベースとしています。そして鬼ヶ島と言えば、3匹のお供「犬・猿・キジ」も欠かせません。そんな3匹が、どういう経緯で鬼退治をするに至ったのか。彼らの過去を掘り下げたのが、本作『平成 新・鬼ヶ島(前編・後編)』です。
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ですが、初めて本作が展開したのは、ROMカセット版の発売から2年遡る1996年。スーパーファミコン向けの衛星データ放送サービス「サテラビュー」での配信が、一番最初の形態でした。今となってはスマホのGPS機能などもあり、衛星を介するサービスは珍しくありませんが、当時は個人で衛星データ放送を楽しむというのはまだ一般的ではなく、残念ながら本作が広まることはありませんでした。
ですが、サテラビュー配信の翌年となる1997年に、ゲームソフトを書き換えるサービス「ニンテンドウパワー」向けのソフトとして新たに登場。サテラビュー版はプレイ時間の枠が定まっていたため、じっくり遊べる製品版とはプレイスタイルも異なっており、そのためゲーム内容に手が加えられています。
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そして、ニンテンドウパワー版がリリースされた翌年の5月23日に、ロムカセット版『平成 新・鬼ヶ島(前編・後編)』の発売が開始されます。2つの異なる配信形態を経た後に、ロムカセット版が登場するという流れは、当時かなり珍しいものでした。こういった流れがあるため、どの環境で本作をプレイしたのかが人によって違ってくるわけです。
◆親しみのある物語を、大胆な改変で楽しく描いた『平成 新・鬼ヶ島』
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男の子「どんべ」と女の子「ひかり」(名前は変更可能)が鬼を倒す物語が軸ではありますが、そちらは『ふぁみこんむかし話 新・鬼ヶ島』でしっかりと紡がれているため、本作でより掘り下げられているのは、犬の「りんご」、猿の「まつのすけ」、キジの「おはな」の物語。しかも、鬼ヶ島だけでなく、様々なおとぎ話が入り交じって展開します。
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例えば、野良犬生活を送っていた「りんご」を拾ったおじいさんは、灰を蒔いて花を咲かせることができます。こちらも日本人にはお馴染みの物語「花咲かじいさん」がモチーフです。また、「おはな」が活躍する後編の三話には、漁師の「太郎」や竜宮城の「乙姫」が登場。こちらも、説明するまでもないほど有名なおとぎ話です。
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慣れ親しんだ「鬼ヶ島」がベースですが、有名すぎる話なだけに、それだけでは先の展開が読めてしまいます。ですが、そのベースに「花咲かじいさん」や「浦島太郎」などを大胆に加えることで、個々の話は知っているけど先の読めない展開が広がり、“知っているのに知らない話”という不思議な感覚を提供してくれます。
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この奇妙ながらも魅力的な世界を、暖かみのあるグラフィックが彩っており、視覚面でも多くのユーザーを魅了。その可愛らしさに和むのはもちろん、驚きの展開を見せる場面でも優れたビジュアルセンスがしっかりと支え、物語への没入感を底上げします。
プレイしたユーザーの満足度は高く、今でもお勧めできる作品のひとつです。実機以外では、Wii U向けのバーチャルコンソールソフトとしてもリリースされているので、クラシックゲームとはいえ比較的遊びやすい部類に入ります。バーチャルコンソールは、本作に関する4番目のリリース形態とも言えるでしょう。
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昭和、そして平成を駆け抜けた『平成 新・鬼ヶ島』。来年には、新たな元号に変わることが決まっていますが、その暁には『新元号版 新・鬼ヶ島』のリリースを期待したいところです。
(C)1997 Nintendo
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