絶望を希望に変えるスマートフォンRPG『メギド72』において、個性豊かなメギドと一緒に世界救済の冒険を続ける主人公です。本作のモチーフは、史実で登場するソロモン王と、彼が従えたとされる72柱の悪魔です。
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魔術は物語だけに登場するわけではなく、現在も世界各地の魔術研究家によって研究が続けられています。歴史上、魔術師と呼ばれた人も多くおり、中でも稀代の天才魔術師とされるのが古代イスラエルの王・ソロモン。彼の名を冠した『ソロモン王の書』は魔術書の代名詞にもなっています。
本稿では、『メギド72』をより楽しむための豆知識として、ソロモン王と『ソロモン王の書』について、広く浅く紹介します。
■古代イスラエル王ソロモン王
ソロモン王について記述されているのは旧約聖書。在位は紀元前971年 から紀元前931年頃とされています。
現在のイスラエルとヨルダンがある地にできたダビデ王朝の2代目でした。ダビデ王とその王朝については、長らく聖書以外の証拠が見つからなかったのですが、1993年に発掘された「テル・ダン石碑」にイスラエル王国とダビデの家柄の記述があったことから、聖書考古学的にも実在したとみなされています。
羊飼いから王になったダビデとは違って、生まれながらに王として育ったソロモン王は神に何を望むかを問われた時に、知恵を求めています。
「聞きわける心をしもべに与えて、あなたの民をさばかせ、わたしに善悪をわきまえることを得させてください」(旧約聖書 列王紀上3:9)
「見よ、わたしはあなたの言葉にしたがって、賢い、英明な心を与える。あなたの先にはあなたに並ぶ者はなく、あなたの後にもあなたに並ぶ者は起こらないであろう。」(旧約聖書 列王紀3:12)
この部分が、天才魔術師と呼ばれる根拠でしょう。
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ソロモン王の知恵はすさまじく、その王国は歴史上類を見ないほどの栄華を極め、隣国はおろか、遠く離れたシバの女王の国にまで伝わりました。シバの女王はソロモン王の知恵を試すために訪問しています。
「シバの女王は主の名にかかわるソロモンの名声を聞いたので、難問をもってソロモンを試みようとたずねてきた。彼女は多くの従者を連れ、香料と、たくさんの金と宝石とをらくだに負わせてエルサレムにきた。彼女はソロモンのもとにきて、その心にあることをことごとく彼に告げたが、ソロモンはそのすべての問に答えた。王が知らないで彼女に説明のできないことは一つもなかった。」(旧約聖書 列王紀上10:1~3)
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聖書にはソロモン王の金銀財宝についての記述もあり、例えばソロモン王は、神を祀るために7年をかけて、本殿の長さ20キュビト、幅20キュビト、高さ20キュビト(※1キュビトは50センチ弱)に黄金に輝く巨大な神殿を建てました。
■ソロモンの書とは?
現代に伝わる魔術書群は『グリモワール』(魔術奥義書)と呼ばれており、そこには敵を呪ったり、精霊や悪魔を使役したりする様々な方法が書かれています。これらは中世ヨーロッパに、様々な魔術師が自らの経験を書き記したものです。
ソロモンの名を冠した『ソロモンの書』と括られる魔術書は全て、初出は中世ヨーロッパ以降とされています。この中にはソロモン王が悪魔を捕獲して使役したという話や、悪魔をコントロールするための「ソロモン王の指輪」などのエピソードを記述しているものもあります。
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もちろん、ソロモン王自身が書いたとは時代背景から見ても考えにくいのですが、これらの元になったグリモワールは存在するのではないかと見られています。『ユダヤ戦記』の著者である有名なユダヤの歴史家ヨセフスも、ソロモン王によって書かれたグリモワールが存在する可能性を語っています。
■72柱の悪魔
現代の魔術に最も影響を与えた魔術書に数えられる『ソロモン王の小さな鍵(別名:レメゲトン、またはゲーティア)』には、ソロモン王が使役したとされる72柱の悪魔をコントロールする術が書かれています(※発音表記はできるだけ『メギド72』に近づけています)。
この書物の中では、72の悪魔を王、公爵、王子、侯爵、頭領、伯爵、騎士といった階級別に分かれており、中には階級が重複している者もいます。下記に一覧をまとめました。『メギド72』では階級に分けていませんが、覚えておくと、また新たなギャップを味わえるかもしれません。
・王
バアル、パイモン、ベレス、プルソン、アスモダイ、ヴィネ、バラム、ザガン、ベリアル
・公爵
アガレス、ウァレフォル、バルバトス、グイソン、エリゴス、ゼパル、バシン、サロス、アイム、ブネ、ベリス、アスタロス、フォカロル、ヴェパル、ウヴァル、クローセル、アロセス、ムルムル、ヴァプラ、ハウレス、アムドゥスキアス、ダンタリオン
・王子
ウァサゴ、シトリー、イポス、ガープ、ストラス、オロバス、セエレ
・侯爵
サミジーナ、アモン、ナベリウス、ロノウェ、フォルネウス、マルコシアス、フェネクス、サブノック、シャックス、オリアクス、アンドラス、アンドレアルフス、キメジェス、デカラビア
・統領
マルバス、ブエル、ボーティス、マラクス、グラシャラボラス、フォラス、ガープ、マルファス、ハーゲンティ、カミオ、オセー、アミー、ザガン、ヴォラク
・伯爵
ボーティス、マラクス、グラシャラボラス、ロノウェ、フルフル、ハルファス、ラウム、ヴィネ、ビフロン、アンドロマリウス
・騎士
フルカス
参考文献:『聖書(口語訳)』(発行:日本聖書協会)、『魔導書 ソロモン王の鍵』(編著:青狼団、発行:二見書房)、『聖書考古学 - 遺跡が語る史実』(著者:長谷川 修一、発行:中公新書)、『古代のオリエントと地中海世界』(編集:歴史学研究会、発行:岩波書店)、『失楽園(上)』(作:ミルトン、訳:平井正穂、発行:岩波書店)
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