『ロックマン ゼロ&ゼクス ダブルヒーローコレクション』「Zチェイサー」で戦うゴーストの中身は“生の人間”!─新要素や意気込みに迫るインタビュー【TGS2019】

『ロックマン ゼロ&ゼクス ダブルヒーローコレクション』の開発秘話から込められた想いまで、幅広く迫ったインタビューをお届け!

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『ロックマン ゼロ&ゼクス ダブルヒーローコレクション』「Zチェイサー」で戦うゴーストの中身は“生の人間”!─新要素や意気込みに迫るインタビュー【TGS2019】
『ロックマン ゼロ&ゼクス ダブルヒーローコレクション』「Zチェイサー」で戦うゴーストの中身は“生の人間”!─新要素や意気込みに迫るインタビュー【TGS2019】 全 13 枚 拡大写真

カプコンを代表する人気シリーズのひとつ『ロックマン』。ファミコン時代に登場した本シリーズは、歯応えのある難易度や巧みなステージ構成など、アクションゲームの魅力を凝縮したそのゲーム性が支持され、長年愛され続けてきました。

『ロックマン』シリーズのナンバリングだけでも11作品がリリースされているほか、『ロックマンX』、『ロックマンDASH』、『ロックマンエグゼ』など、数多くの派生シリーズを展開。もちろん派生シリーズも、それぞれが多くのユーザーから愛され、『ロックマン』という大きなコンテンツを様々な角度から支えてきました。

その展開の中には、伝説のレプリロイド「ゼロ」が蘇り、新たな活躍を見せた『ロックマン ゼロ』シリーズと、そこから数百年後を描いた『ロックマン ゼクス』シリーズの名前もあります。『ゼロ』シリーズはゲームボーイアドバンス向けに、そして『ゼクス』シリーズはニンテンドーDS向けにリリースされ、いずれも一時代を駆け抜けた人気シリーズです。


そして、この2つの名シリーズをセットにし、新たな要素を加えて登場する『ロックマン ゼロ&ゼクス ダブルヒーローコレクション』の発売が、今年8月に明らかとなりました。懐かしの名作が、ニンテンドースイッチやPS4、Xbox OneにSteamと、多彩なプラットフォームで楽しめるようになります。

『ゼロ』4作品と『ゼクス』2作品、計6作品を一気に遊べる『ロックマン ゼロ&ゼクス ダブルヒーローコレクション』。今回は、本作が持つ魅力に迫るべく、『ロックマン』シリーズ総合プロデューサーの土屋和弘氏と、本作のプロデューサーを務める竹中司氏へのインタビューを実施しました。気になる新要素や開発の裏話など、いずれもお見逃しなく。

◆『ゼロ』と『ゼクス』をセットにした理由、見逃せないギャラリーモード、「Zチェイサー」で戦うゴーストの秘密・・・開発の裏話をたっぷりお届け!



──まずは、『ロックマン ゼロ&ゼクス ダブルヒーローコレクション』の開発が立ち上がった経緯、もしくはきっかけなどをお聞かせください。

土屋和弘氏(以下、土屋氏):『ロックマン』は各シリーズ名作揃いなので、現行ハードに過去の『ロックマン』作品を出来る限り復活させ、ファンの方々に体感してもらえる環境を用意することで、『ロックマン』シリーズ全体が持っている広がりや各シリーズの復権などを目指しています。

同じ『ロックマン』シリーズでも、作品ごとに要求されるテクニックが違っていたり、ストーリー性が異なっていたりと、多種多様な楽しみがあると思っています。なので、こういった体験ができる場を豊富に用意したいとの考えがあります。そして、『ロックマン クラシックス コレクション』や『ロックマンX アニバーサリー コレクション』を開発していた頃から、順番的に『ゼロ』『ゼクス』をお届けしたいなという構想はありました。

──『ゼロ』と『ゼクス』のコレクションを個別にリリースすることも可能だと思うのですが、今回なぜ6作品をセットにしたのでしょうか?

土屋氏:コンソールで育ってきた『ロックマン』ファンや『X』ファンの方々に、『ゼロ』と『ゼクス』を一気に好きになってもらいたいという狙いというか思いがありまして。『ゼロ』と『ゼクス』は世界観が繋がっており、密接な関係にありますので、この2シリーズの流れをまとめて追ってほしくて、敢えて分割しない形にしました。

──よりパワフルなタイトルにしたかったと。


土屋氏:そうですね。ボリュームもすごくありますし、ストーリー性も高いと思います。僕達としては一気に遊んでいただいて、『ゼロ』と『ゼクス』の世界を知ってもらい、そこから見えてくる関連性から、『ロックマン』シリーズ全体の繋がりなどに想いを馳せてもらえたら嬉しいですね。

(この2シリーズは)『ロックマン』シリーズの中でも、アクション面でより深みに挑戦しているゲームだと思っていまして。そのため難しいのは確かなんですが、慣れてくると手に吸い付くようなクイックなレスポンスで楽しめるんです。これは、当時開発したオリジナル版のスタッフがこだわりぬいた結果なんですが、このアクションゲームとしての質の良さは、現代でも通用するレベルだと確信を持っています。

5~6年ほど前から、非常に上質な2Dアクションゲームを手頃な価格で入手できる環境が、徐々に出来上がってきているんですよね。そのおかげ、2Dだから、3Dだからではなく「面白いからやっている」というユーザーが増えてきました。

猫も杓子も3Dじゃないとダメ、みたいな風潮が一時期あったので、むしろ今の若いゲーマーの方が、2Dも3Dも深く楽しんでくれているなとも感じています。その意味では、『ゼロ』『ゼクス』の突き詰められた2Dアクションを極めてやろう、という気概のある方が多いのかなと予想しています。

──現代でも通用する『ゼロ』『ゼクス』と、選択肢が増えて遊びやすくなった2Dアクションに慣れ親しんだ今のユーザーが、『ダブルヒーローコレクション』で出会う・・・実に贅沢で、羨ましくもある展開ですね

土屋氏:そうですね。かなり贅沢なセットになっているんじゃないかなと。


竹中司氏(以下、竹中氏):贅沢というお話で言うと、『ゼロ』シリーズと『ゼクス』シリーズって、ゲーム性が少し違うんです。『ゼロ』シリーズは、正統な2D『ロックマン』の流れを汲んでいる横スクロールACTなのですが、『ゼクス』シリーズは横スクロールACTながらも、「こちらで手に入れたアイテムをあっちで使うと進めるよ」といった感じで、ジャンルで言うとメトロヴァニア的なゲーム構成になっているんです。

この『ダブルヒーローコレクション』で6本ものゲームが遊べますし、その6本のゲーム性も全て同じではなく、『ゼロ』『ゼクス』という2つのゲーム性が楽しめる点も、お得で贅沢な魅力かなと思っています。

──これだけボリュームもあり、また幅広いゲーム性が楽しめる1本を作り上げるには、開発もかなり大変だと思います。その開発の中で、最も苦労した部分はどこでしょうか。

土屋氏:(本作に収録されている)ギャラリーの充実具合などは、特に苦労が多かった点ですね。

竹中氏:これは、カプコンの恥をさらすことになるかもしれないんですが(笑)、ギャラリーの絵や当時のパーツといったものが色んなところに散財していたり、アーカイブスに残っている以外のものも結構存在していたんです。

そのため、僕自身が開発ルームの地下に行き、ダンボールを全部開けたりとかしました(笑)。特に『ゼクス』シリーズはアートブックなども出ていないので、これだけのアートが揃ったものって今までなかったんです。

あと、『ゼロ』や『ゼクス』シリーズと言えば、中山徹さんが描く絵のイメージが強いと思いますが、他のアーティストの方が描いた「ロックマン ゼロ」などもギャラリーに収録されています。このような見どころも盛り込んでいますし、非常に資料性が高いので、ぜひギャラリーも楽しんでいただければ。

──ギャラリーを覗いたら、意外な驚きと出会えるかもしれないんですね。


竹中氏:ファンの人でも「こんな絵あったの?」と驚くようなものも収録されていますし、ファンだからこそ「そういえば、こんな所にもゼロが出てたよね」と改めて実感されることも多いと思います。

土屋氏:『ゼクス』シリーズの、2画面の自由なレイアウトもかなり凝ってるよね。

竹中氏:あ、そうですね。今のユーザーさんは、レイアウトを自分好みにやりたいかなと思いまして、レイアウトを自由にできるように改良・工夫しました。特に『ゼクス』シリーズは、(オリジナル版がDSなので)2画面構成になっているんです。その2画面目の位置を「どこに置くのか」について、かなりの種類を用意させていただきました。

例えば、大きな画面の中にワイプのように2画面目を入れたり、ワイプだと邪魔なので消したりも出来たりとか。このような形で、画面レイアウトも充実させています。2020年に出すゲームですから、今のユーザーが快適に遊べるように心を砕いた部分です。

──様々な想いと苦労が詰まった『ダブルヒーローコレクション』なのですね。では、そんな本作の新要素について窺います。まずは、「カジュアルシナリオモード」について教えてください。


竹中氏:ゲーム内の難易度選択に「イージー」や「ノーマル」などもありますが、「カジュアルシナリオモード」を一言でいえば、全体的に難易度を落とすモードとなります。

『ゼロ』の1作目が発売されてから、現時点で17年以上が経っており、色々な意味で衰えが出てくるところもあるのかなと(笑)。その一方で、当時の懐かしさを味わいたい方も多いと思うので、カジュアルな楽しみ方もできるように「カジュアルシナリオモード」を用意しました。

あと・・・他の『ロックマン』シリーズと違い、『ゼロ』や『ゼクス』はゲームの途中にイベントがあるなどシナリオも重要な部分なので、そういった部分を手軽に楽しんでもらうため、といった狙いもありますね。

──では次に、クリアタイムを競う新要素「Zチェイサー」についてお聞かせください。こちらはまったく新しい遊びの要素だと感じましたが、どのような経緯で「Zチェイサー」の導入に至ったのでしょうか?


竹中氏:かつての作品をファンの方々に改めてお届けするのも大事ですが、「やっぱり何か新しいものも欲しいよね」という意見もあり、新モードを追加しようという話が持ち上がりました。

そこで色々なアイディアを模索したのですが、そんな折りに海外で行われていたリアルタイムアタックのトーナメントを見たんです。みんながとても盛り上がっているのを見た時、「この盛り上がりを再現したいよね」との想いが大きくなり、その結果「Zチェイサー」へと辿り着きました。

土屋氏:こういったデュエルプレイのようなものは、『ロックマン11』発売後にeスポーツ的な大会でやらせてもらったことがあるんです。2人の選手が同じステージを同時にスタートして、どちらが先にクリアできるか、みたいな。

その大会にはランキングのトップレベルの選手などが参加してくれたのですが、彼らに窺ったところ、難所を越えるにはいくつかのパターンがあるそうなんです。例えば、「一番速いけど、失敗するリスクがある」「安全だけどちょっと遅い」など、いくつもの選択肢が。

その大会はデュエル形式なので、相手プレイヤーの進捗を見ながら「自分が遅れていたらリスクを承知で最速を目指す、勝っていたらリスクを減らして確実な方法で行く」などの判断をしながらプレイしていた──といった話を聞き、これはなかなか凄いなと。

eスポーツは今、対戦プレイやマルチプレイで盛り上がっていますが、ひとりプレイのゲームでもこういう楽しみがあるんだなと実感しました。で、まさにその魅力を形にしたような企画が上がってきたので、それは面白そうだなと。ただ、ゲームが2つ同時に動く形になるので、処理が間に合うのかなとも思いましたが(笑)。

竹中氏:そうですね、まずはそこの検証からスタートしました(笑)。

土屋氏:ゲームを2つまるごと動かしているので、実は見た目以上に大変な作りになっているんです。


──「Zチェイサー」をしっかり動作させるのは、大変なんですね。

竹中氏:正直に言って、大変でしたね。今でも大変です(笑)。単純に、処理が2倍かかりますからね。昔のゲームとはいえ、それを動かしているのは今のシステムなので。

──苦労した「Zチェイサー」が動いているのを初めて見た時、感慨深いものがありましたか?

竹中氏:感慨深いというよりも、「ああ、新しいな」と思いました。『ロックマン』で2画面、という絵面が新しかったですね。これはすごく紙面映えするな、と。

──さきほど、「Zチェイサー」のシングルチェイサー(対人ではなく、ゴーストと戦うモード)を体験させていただき、あっさり負けてしまいましたが(笑)、コンピュータの動きを見て攻略を学ぶ、といった遊び方もできそうですね。


竹中氏:もう一度遊ばれる機会があったら、難易度を最大の「ZZ」にして、プレイせずにゴーストの動きだけを見てみてください。それを見ると「こんな動き方が出来るんだ!」と驚かれると思います。

ちなみにゴーストの動きは、コンピュータに計算させて自動で動いているわけではなく、実際にプレイした記録を反映しているものでして。「ZZ」のゴーストは、2ヶ月以上練習した成果の動きなんです。

土屋氏:スタッフの中でも、特に上手な子のリプレイデータと対戦する形になってます。

──では、あのゴーストの動きの先には、生身の人間がいるんですね!


竹中氏:その通りです。

土屋氏:おそらく発売されて24時間後くらいには、それを上回る人が出てくるのかなと思いますが(笑)。

竹中氏:そこも、『ロックマン』ファンの熱いところですよね。

──対人のダブルチェイサーについて、もう少し詳しくお聞きしてよろしいでしょうか?

竹中氏:こちらは、コントローラを2つ用意し、ローカル対戦で2人のプレイヤーが争う遊びとなります。これこそ、先ほどお話ししたリアルタイムアタック大会の盛り上がりを、TV画面の前で友達と一緒に味わってもられれば・・・と思って入れたモードですね。

ひとつだけ注意点があり、Joy-Conのおすそわけプレイだと使用するボタンの数が足りないので、スイッチ版で楽しむ場合は、Joy-Conとは別にプロコンなどを用意する必要があります。

──PS4版などの場合も、標準的な本体の中にはコントローラがひとつしかないので、もうひとつ必要となりそうですね。

竹中氏:そういった意味では、ちょっとだけハードルが高いかもしれませんが、みんなが集まった時のパーティゲーム的に遊んでもらえるんじゃないかなと思っています。

──参加する2人だけでなく見ている側も楽しめますし、YouTuber同士が対戦する動画なども盛り上がりそうですね。それでは最後に、本作を待ち望んでいる方々に向けてメッセージをお願いします。


土屋氏:当時、『ゼロ』『ゼクス』シリーズは携帯機にしかリリースされていなかったので、「知ってるけど体験できていない」といったユーザーもいると思います。そういった方々にとって、本作は本当にチャンスだと思いますので、ぜひ遊んでみてください。

今回、高解像度に描き直すという選択もあったのかなと思いますが、各作品をよくよく見てみると、描き直すことでむしろ絵が安っぽくなると判断しました。個人的に「職人芸」という言葉はあまり使いたくないんですが──みんな命を張って作っており、全てが職人芸ですから──今回扱っている『ゼロ』『ゼクス』については、まさに「職人芸」と言わざるを得ない極地です。

その魅力は、今見てもまったく古ぼけていませんし、時代を感じさせない作り込みの極みなので、ファンの方はもちろんのこと、アクションゲームは好きだけど『ロックマン』シリーズはあまり知らないという人にとっても入りやすい作品なので、臆せずに飛び込んできていただければ幸いです。

竹中氏:オリジナル版は、小中学生がメインのターゲットだったと思いますが、『ゼロ』から『ゼクス』はいずれも2000年代にリリースされたタイトルなんです。なので、当時小中学生だった方々に、ぜひ遊んでいただきたいと思っています。

『ダブルヒーローコレクション』に収録されている6作品の中に、思い出の1本が絶対に入っていますから、本作を通じて当時の思い出を振り返ってもらえたら嬉しいですね。

──今遊んでも刺激的な名作を、斬新な新要素と共に広く提供する『ロックマン ゼロ&ゼクス ダブルヒーローコレクション』。2020年1月23日の発売を楽しみにしておきます。本日はありがとうございました!



《臥待 弦》

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