驚異のメタリックブルー!『あつまれ どうぶつの森』に登場する「モルフォチョウ」の秘密【平坂寛の『あつ森』博物誌】

『あつまれ どうぶつの森』に登場する生き物を、生物ライターが解説!第38回は「モルフォチョウ」です。

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驚異のメタリックブルー!『あつまれ どうぶつの森』に登場する「モルフォチョウ」の秘密【平坂寛の『あつ森』博物誌】
驚異のメタリックブルー!『あつまれ どうぶつの森』に登場する「モルフォチョウ」の秘密【平坂寛の『あつ森』博物誌】 全 7 枚 拡大写真
※リアルの生物の写真が出てきます。苦手な方はご注意ください!
真冬です!『あつまれ どうぶつの森(※以下、あつ森)』の世界も北半球は一面の雪景色!
景色としてはなかなか綺麗なのですが、虫たちの姿がめっきり減ってしまったのは生物好きとしてはちょっと寂しいところです。

特にヘラクレスオオカブトやニジイロクワガタ、バイオリンムシにコノハムシといった海外の昆虫が見られなくなるのは残念!南米など暖かい地域の虫が多かったので仕方ないのかもしれませんが…。

「世界一美しい」チョウ!


と、思いきや!どう見ても日本離れした「あの虫」がパタパタと飛んでいるじゃありませんか!


青く輝く、南米を代表する蝶!モルフォチョウです。

▲『あつ森』に登場するのはモルフォチョウの中でも特に光沢が強く美しい「レテノールモルフォ」がモデルだと思われます。

モルフォチョウの仲間は南米大陸に30種ほど分布しますが、その多くが青く金属的に輝く大きな翅を持つことが知られています。
アキレスモルフォのように翅の一部のみが青い種もあれば、レテノールモルフォやアドニスモルフォのように全面がギラギラと輝くものもあります。

またオスに比べてメスは地味という種もあることから、この色彩美は求愛の際に役立つのではないか…などという説もありますが、ハッキリした答えは未だ出ていません。


なお、中にはモンシロチョウのように真っ白なシロモルフォやギターの「サンバーストフィニッシュ」のようなグラデーション模様を持つタイヨウモルフォなど青い部分をまったく持たない異端のモルフォもいたりします。

まぁなんにせよ、いずれも優雅で雄大で、極めて美麗であり「空飛ぶ宝石」あるいはミイロタテハなどと並んで「世界でもっとも美しい蝶」とも称えられる一族なのです。

▲なお、青く輝くのは翅の表側だけで、裏側は枯れ葉のように落ち着いた色合い。

また、モルフォは大型の蝶ですが飛翔能力に優れており、森の中を縫うように滑らかに素早く、しかも高く飛び回るため、捕獲するのは容易ではありません。
この美しさゆえ、装飾品に土産物にとその翅にはたしかな需要があるのですが……。

そこで現地の人々は光沢のある青い布や青いアルミ箔シートを振り回すという奇策におよびます。こうすると、なんとモルフォの方からこちらへやってくるのだとか。
どうやら、オスのモルフォがメスを狙うライバルだと勘違いし、追い払うべく挑みかかってくるようです。よく考えられた作戦ですね。

▲体の節、触覚のわずかなふくらみ、そして絶妙な「モルフォブルー」が再現されていて『あつ森』すげぇなぁと思いました。

青いけど、ホントは青くない!?


さて、先ほどから青い青いとモルフォチョウを評しておりますが……。
彼らって実は青くないんです。青く見えてるだけなんです。

なんのこっちゃわからないかもしれませんが、冗談でも幻術の類でもありません。
ゲーム中でフータさんも解説してくれるとおり、特殊な翅の構造によって青色の光を反射することによって「青く見えている」のです。


たとえばシャボン液が透明なのに、シャボン玉が虹色に見えるのも似たような原理によるものです。
こうした「ホントはそうじゃないんだけど、物質の構造のせいでそういうふうに見えちゃう色」のことを「構造色」と言います。

▲カナブンの仲間に見られる金属光沢も構造色の一種らしいですよ。

ちなみに、昆虫にはモルフォチョウに限らずこうした構造色を身に纏ったものたちがたくさんいます。
たとえばカナブンやタマムシの見る角度によってギラギラと色が変わる体色もモルフォチョウと(メカニズムは違いますが)同じ構造色であるそうです。

なお、近年ではモルフォチョウの構造色に着想を得た特殊な顔料も開発されたとか。
おそらくは発見されたその日から今日まで、我々人類の夢とロマンとサイエンスを引っ張って飛ぶモルフォ。彼らはやはり特別な昆虫だと言えるでしょう。

あ、ちなみに『あつ森』ではお店に持ち込むと1匹あたり4,000ベルという高額で買い取ってもらえます。うーん、さすがスペシャルな虫っすね。

『あつ森』博物誌バックナンバー


■著者紹介:平坂寛

Webメディアや書籍、TV等で生き物の魅力を語る生物ライター。生き物を“五感で楽しむ”ことを信条に、国内・国外問わず様々な生物を捕獲・調査している。現在は「公益財団法人 黒潮生物研究所」の客員研究員として深海魚の研究にも取り組んでいる。著書に「食ったらヤバいいきもの(主婦と生活社)」「外来魚のレシピ(地人書館)」など。


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《平坂寛》

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