日本が世界に誇る美魚!『あつまれ どうぶつの森』で釣れる「タナゴ」ってどんな魚?【平坂寛の『あつ森』博物誌】

『あつまれ どうぶつの森』に登場する生き物を、生物ライターが解説!第46回は「タナゴ」です。

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日本が世界に誇る美魚!『あつまれ どうぶつの森』で釣れる「タナゴ」ってどんな魚?【平坂寛の『あつ森』博物誌】
日本が世界に誇る美魚!『あつまれ どうぶつの森』で釣れる「タナゴ」ってどんな魚?【平坂寛の『あつ森』博物誌】 全 15 枚 拡大写真
※リアルの生物の写真が出てきます。苦手な方はご注意ください!
夏秋がすぎ、『あつまれどうぶつの森(以下、あつ森)』では北半球設定のプレイヤーはクマノミやグッピーなど、色とりどりの熱帯魚たちに会えない日々が続いております。

しかし冬になってからというもの、川で釣りをすると高確率でとある鮮やかな小魚をゲットできるようになりました。


そう。タナゴです。
タナゴ類はコイ目コイ科タナゴ亜科に属す魚類で、一見すると熱帯魚のようにきらびやかで美しい姿をしています。しかし実際は東アジアに生息する温帯性の淡水魚で、日本にはなんと18種が分布する大所帯なのです。

さらに言うと、派手な色彩はいわゆる「婚姻色」というもので、これを纏うのは春ー夏季に訪れる繁殖期中の雄だけです。雌や繁殖期外の雄はプレーンな銀色の魚体をしています。

『あつ森』に登場するのは「バラタナゴ」!


ではその数ある「タナゴ」のうち、『あつ森』に登場するのはどのタナゴなのでしょうか?


『あつ森』のタナゴには
・高さのある菱形の魚体
・背側が青、腹側としりびれと尾びれのつけ根が赤く染まる婚姻色
などの特徴が見られます。

これらの特徴に該当するタナゴは、日本に分布する種だと「バラタナゴ」が挙げられます。

▲ニッポンバラタナゴ。※もともと日本に分布しているバラタナゴ。

▲タイリクバラタナゴ。※中国や台湾、朝鮮半島原産のバラタナゴ。

なお、ややこしい話になりますが、バラタナゴには二つの亜種が存在します。
日本在来の「ニッポンバラタナゴ」と中国や朝鮮半島など大陸原産の「タイリクバラタナゴ」です。

両者はそっくりな見た目をしていますが、遺伝子レベルでいえばたしかに別物。決して混ざり合ってはならないものなのですが、観賞用に日本国内へ安価で大量に持ち込まれたタイリクバラタナゴが野生化し、ニッポンバラタナゴと交雑するなどして問題になっています。
バラタナゴたちが誇る、その美しさゆえに起きた悲劇と言えるでしょう。

いろんなタナゴたちがいます!



ところで、作中でフータさんも解説していましたとおりタナゴは釣りのターゲットとしても古くから有名です。
こんな小さな魚を釣って何が楽しいのか……。と思ってしまうところですが、むしろその「いかに小さな魚を釣るか」というテクニカルな要素が人気を集めているのだとか。
また、種数が多い上、地方によって釣れるタナゴの種類が違ってくるのでコレクション性(?)が高く、一種でも多くのタナゴを釣るために日本各地へ「タナゴ行脚」に出かける釣り人もいます。

かくいう僕の友人にも「タナゴ行脚」を敢行している酔狂がいます。
今回は彼から各地で釣り集めてきたというタナゴの写真を借りてきました。せっかくなので『あつ森』に登場しないタナゴたちの姿も見てみましょう。

▲タナゴ。マタナゴとも。関東以北の太平洋側に分布。

上の写真は「タナゴ」という標準和名をもつタナゴ。まさにタナゴ・オブ・タナゴともいうべきタナゴです。
「あつ森で『タナゴ』が釣れるよ」とはじめて聞いたときはこの「タナゴ」のことだと思っていたのですが……。違いましたね。
こちらのタナゴはずいぶんと細身だし、婚姻色が出た雄はしりびれが白く、背びれが黒く染まるのです。

▲コイン(銭)のように小さなゼニタナゴ。

ほかにもゼニタナゴ、ヤリタナゴ、イチモンジタナゴにカネヒラ、イタセンパラとさまざまなタナゴたちが日本に分布しています。
いずれもバラタナゴに負けずたいへん美しく、日本が世界に誇れる美魚と言っていいでしょう。

▲イチモンジタナゴ。琵琶湖水系などに分布。

▲シロヒレタビラ。その名の通り繁殖期の雄はしりびれと腹びれが白くなる。

▲アカヒレタビラ。こちらはしりびれが赤くなります。

▲カネヒラ。大きなものだと全長15cmにもなる日本最大のタナゴ。

▲シックな色合いが魅力のアブラボテ。一見すると地味ですが、実物には他のタナゴにはない美しさがあります。

また、彼らに共通の特徴的な生態として二枚貝への産卵が挙げられます。
タナゴ類は長い産卵管をもっており、それをイシガイやマツカサガイといった二枚貝へ差し込みんでその体内に卵を産みつけます。

卵は硬い貝殻に守られ、より安全確実に孵化するという寸法です。
いやー、すごい進化ですよね。

▲ちなみにこちらは台湾に分布するタナゴ、Tanakia himantegus。海外のタナゴまで釣りに行くとは……釣り人恐るべしですね。

釣り針も極小!!


というわけでタナゴという魚の紹介をしてきましたが、ある疑問を抱いた方もいらっしゃるはず。
「タナゴ釣りって言ったって、こんな小さな魚どうやってって釣るの?」

はい。普通に竿と釣り針で釣ります。
いずれも小さな口をもつ小さな魚を釣るだけあって非常に繊細な道具で、まさに職人技と言うべきものです。


竿にいたっては1本あたり数十万円という漆塗りの高級品も珍しくありません。フータさんの語るとおり古くから「金持ちの道楽」的な一面も持ち合わせています(※現代には安価なものもあります)。

しかし、なにより特筆すべきは針でしょう。コインサイズの小魚のおちょぼ口が吸い込めるサイズの軽く小さな釣り針!


見てくださいこの小ささ!
こんな針を江戸の昔から、釣りという道楽のために製造していたのですから、日本人の職人魂というのは見上げたものです。

ちなみに、そんな小さな魚を釣ってどうするの?というところですが、どうやら基本的にはその美しさを愛でたら逃がしてやるもののようです。
昔は盆に並べて仲間内で数を競うという野蛮な扱いもあったようですが、近年は写真を撮ったらできるだけダメージを与えず逃すというスタイルが主流なようです。

なお、甘露煮などにして食べられないこともありませんが、藻類を食べているためか内臓の苦味を感じます。この苦味から「ニガブナ」と呼ぶ地域もあるんだとか。
これは好き嫌いが分かれそうですね……。

なお北半球設定の場合、『あつ森』でタナゴが釣れるのは3月いっぱいまで!
まだ図鑑に登録していない人は急いで釣りましょう~。

『あつ森』博物誌バックナンバー


■著者紹介:平坂寛

Webメディアや書籍、TV等で生き物の魅力を語る生物ライター。生き物を“五感で楽しむ”ことを信条に、国内・国外問わず様々な生物を捕獲・調査している。現在は「公益財団法人 黒潮生物研究所」の客員研究員として深海魚の研究にも取り組んでいる。著書に「食ったらヤバいいきもの(主婦と生活社)」「外来魚のレシピ(地人書館)」など。


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《平坂寛》

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