全身センサーだらけ!『あつまれ どうぶつの森』で釣れる「ナマズ」ってこんな魚【平坂寛の『あつ森』博物誌】

『あつまれ どうぶつの森』に登場する生き物を、生物ライターが解説!第52回は「ナマズ」です。

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全身センサーだらけ!『あつまれ どうぶつの森』で釣れる「ナマズ」ってこんな魚【平坂寛の『あつ森』博物誌】
全身センサーだらけ!『あつまれ どうぶつの森』で釣れる「ナマズ」ってこんな魚【平坂寛の『あつ森』博物誌】 全 10 枚 拡大写真
※リアルの生物の写真が出てきます。苦手な方はご注意ください!
5月!みなさんゴールデンウイークはいかがお過ごしでしたか?
休みボケだの五月病だのネガティブなワードも飛び交いがちな季節ですが、野山は初夏!生命が活力に満ちる時期ですよ。
地方によってはそろそろ田んぼに水が張られる頃でもありますが、そのタイミングで元気ハツラツになる魚がいます。


「ナマズ」です!
ナマズは5~6月になると水張りや梅雨によって増水した水田や用水路へ大挙して侵入し、産卵を行います。

▲リアルのナマズ。ウロコはもたず、全身がヌルヌルの粘液に覆われる。

『あつまれ どうぶつの森(以下、あつ森)』でも、北半球でもちょうど5月から姿を見せはじめてくれました。
こうしたリアルとゲームでの季節感をリンクさせる設定は『あつ森』開発陣のニクいところでもあります。

とぼけた顔は肉食魚の証!


ナマズは夜行性の肉食魚で、沖縄県や一部の離島を除く全国各地に広く分布しています。
昔話などにもさまざまな形で登場する、日本の里山を代表する淡水魚といえるでしょう。


ナマズは全身に鱗をもたず、特に頭部がなめらかであることから「滑(なめ)頭(ず)」が転じてナマズと呼ばれるようになった……という説もあります。
たしかに大きく丸い頭は触れるとツルツルのヌルヌルで、素手でつかむのがたいへんなほどです。

▲ナマズの頭部。なんとも特徴的な顔つきをしています。

頭といえば、ナマズをよく見るとずいぶん愛嬌のある顔をしています。
上向きについた小さな眼と、ちょっと受け口気味の大きな口。なんともかわいく、とぼけた顔立ちです。しかし、これは彼らこそが田んぼや用水路における生態系の頂点に君臨する肉食魚であることの証なのです。
ナマズは水底に陣取り、頭上を通る魚や水面を流れてくるカエルや昆虫を貪欲に捕食します。あのとぼけ顔は「頭上の獲物は絶対逃がさないぜ!」という捕食者としての姿勢があらわれたものだといえます。


また、4本のヒゲ(幼魚の頃は6本)もナマズの特徴ですね。
ナマズ類が英語でキャットフィッシュと呼ばれるのも、これをネコのヒゲに見立てたことが由来です。
このヒゲは暗闇で周囲の様子をうかがい知るセンサーとして機能するといわれています。視覚に頼りきれない、夜行性の魚ならではの特徴です。


さらに、振動を感知する器官ももつ上に嗅覚にもすぐれ、しまいには微弱な電気を感じとることさえできるというから驚きです。
あのぬぼーっとした印象の見た目に似合わず、超めざとくてセンシティブな魚というわけですね。

食べてもおいしい!


また、実は食べてもおいしい魚で、清浄な水で蓄養(泥抜き)したものを蒲焼きなどにしてやるとたいへん良い味になります。

▲ナマズの蒲焼き

…そういえば、近畿大学が「ウナギ味の養殖ナマズを開発する」なんて研究に取り組んでいますね。なかなか可能性に満ちた魚なのです。

ナマズファミリーは大所帯!


あ、そうそう。
『あつ森』に登場するナマズは一種だけですが、現実世界にはなんと3000種に迫る種数の「ナマズファミリー」が分布しています。

日本のナマズはツルツルボディーに立派なヒゲが特徴ですが、海外には鎧のようなウロコを身にまとったナマズやほとんどヒゲが目立たないナマズもいるのです。

▲全身がウロコでガッチガチのナマズ。南米産。

中には全長2メートルを優に超える巨大ナマズや、川や沼ではなく海に暮らす海産ナマズまで……。

▲大きなものは全長2メートルを超えるヨーロッパオオナマズ。世界最大級の淡水魚。

▲海に棲むハマギギというナマズ。ナマズはビジュアルも生き方もバリエーション豊富!

と、こんな具合にナマズというのは、魚類全体を見渡してみてもとりわけ奥の深い魚なのです。

いつか世界中のナマズをすべて見てみたいものですが、『あつ森』に登場する魚のコンプリート(※80種)で四苦八苦しているようでは2000種オーバーの世界なんて遠いまた夢ですね……。気が遠くなりそうです。
『あつ森』博物誌バックナンバー


■著者紹介:平坂寛

Webメディアや書籍、TV等で生き物の魅力を語る生物ライター。生き物を“五感で楽しむ”ことを信条に、国内・国外問わず様々な生物を捕獲・調査している。現在は「公益財団法人 黒潮生物研究所」の客員研究員として深海魚の研究にも取り組んでいる。著書に「食ったらヤバいいきもの(主婦と生活社)」「外来魚のレシピ(地人書館)」など。


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《平坂寛》

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