『パンドラの塔 君のもとへ帰るまで』本日5月26日で10周年─“探索欲”と“ヒロインの獣化”のジレンマが絶妙! 磨き抜かれた3D探索ACTを「名作」と断言するに迷いなし

『パンドラの塔 君のもとへ帰るまで』が、このたび10周年を迎えました。設定とゲーム性の絶妙なマッチング、探索意欲とヒロインのサポートで揺れ動くプレイ体験など、その魅力に迫ります。

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『パンドラの塔 君のもとへ帰るまで』本日5月26日で10周年─“探索欲”と“ヒロインの獣化”のジレンマが絶妙! 磨き抜かれた3D探索ACTを「名作」と断言するに迷いなし
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Wii Uで発売されたタイトルが、ニンテンドースイッチ向けとして装いも新たにリリースされる。その結果、多くのユーザーを取り込み、成功を収めたタイトルがいくつもあります。

任天堂のタイトルだけでも『マリオカート8』や『ピクミン3』、『ドンキーコング トロピカルフリーズ』など複数ありますし、他社でも『ゼルダ無双』や『BAYONETTA 2』などのスイッチ版が登場し、喜んだ方は少なくないはず。


前世代に登場した名作ソフトが再び注目されるのは、決して悪い話ではありません。Wii U本体の販売台数は1,356万台だったため、ソフトが再登場して改めて評価されるのは喜ばしいところ。名作は、隠れることなく知られて欲しいものです。

だからこそ、今この時に声を大にしたい主張があります。それは、「Wiiソフトも、スイッチ版を出して欲しい」という願いです。


Wii本体は1億台を超える販売実績を持ち、Wii Uの状況とは大きくかけ離れています。ですが、その分ユーザーの注目が広く分散してしまい、ひとつひとつのタイトルがあまり目立たないという一面がありました。そのため、Wiiにも“隠れた名作”が多数存在しているのです。

ちょうど10年前に発売されたWiiソフト『パンドラの塔 君のもとへ帰るまで』(以下、パンドラの塔)も、筆者個人の感覚ですが、埋もれてしまった名作のひとつだと受け止めています。


設定とゲーム性がしっかりと結びつき、探索の誘惑と撤退の見極めに心揺さぶられる感覚。ヒロインとの深い関わりと、その運命を左右できる手応え。探索に奥深さと楽しさを加えた鎖アクションなど、魅力的なポイントを上げればキリがないほどです。

そんな『パンドラの塔』の10周年を記念し、その特徴をギュッと絞ってお届けします。当時遊んだユーザーは、懐かしさと共に本作を振り返ってみてください。そして未プレイの方は、今からでも決して遅くありません。興味が湧きましたら、『パンドラの塔』のプレイをご一考ください!

『パンドラの塔 君のもとへ帰るまで』の魅力を、4つのポイントに絞って紹介!



『パンドラの塔』は、3D探索型のアクションRPGです。プレイヤーの分身となる主人公・エンデは、ヒロイン・セレスを救うために、打ち棄てられ13の塔──「十三訃塔」に挑みます。

この説明だけだと、よくあるゲームだと思われるかもしれません。ですが、要素のひとつひとつに見所があるので、特に印象深いポイントに絞り、それぞれを掘り下げてみたいと思います。

■Wiiソフト屈指のダークファンタジー
Wiiはカジュアル層にも広がったため、普段ゲームを遊ばない方や子供たちに向けた、ポップな雰囲気を持つタイトルが多くありました。その印象が色濃かったためか、ハードな設定を描くタイトルが比較的注目されにくく、『パンドラの塔』もその波に呑まれてしまったように思います。

セレスを救うのが本作の目的ですが、彼女は攫われたわけではなく、エンデと共に「十三訃塔」に訪れます。エンデが塔に挑むのは、セレスの身を蝕む「獣の呪い」に対向するため。セレスは、その身が“おぞましい獣”へと変貌してしまう呪いにかかっているのです。

呪いを解くには、塔にいる主(あるじ)の肉を食らわねばなりません。化け物の肉を食らう……それはうら若き乙女にとって、耐えがたい嫌悪感が伴う行為です。ですが、食らわねば自分が化け物に成り果てるだけ。化け物を食らうか、化け物になるか。残酷な二択です。

これがプレイヤーキャラクターの運命ならば、比較的受け入れやすかったかもしれません。ですが、セレスの過酷な運命に対してプレイヤーが出来ることは、肉を運ぶことだけ。食らうという最後の一歩は、見届けるしかない──だからこそ、セレスとエンデ(=プレイヤー)は互いを思いやる気持ちが自然と芽生え、その関係性から塔の攻略にも自然と力が入ります。このプレイ意欲のかき立て方に、筆者はまんまとヤラれました。


■「獣の呪い」は設定だけにあらず! 緊張感と揺れる心を盛り込んだゲーム性が素晴らしい
ゲームにおける主人公の目的というのは、実際のゲームプレイに影響しない場合もあります。例えば、ダンジョンに囚われた姫を助けるのにどれだけ時間がかかっても、姫は変わらずに待ち続けることがほとんど。そこにツッコむのはむしろ野暮な話で、ゲームと設定は「それはそれ」で通していい面があります。

しかし、本作の目的──セレスの元へ「肉」を運ぶのは、ゲーム性にかなり密着した行為です。「獣の呪い」を解くには「主の肉」が必要ですが、この呪いは(探索中は)常に進行しています。主を倒すまでの道程は長いので、「外僕の肉」をセレスに与え、一時的に呪いを押し返すのも重要なポイントなのです。

一時しのぎであれば、塔にいる特定の敵から入手できる「外僕の肉」で事足ります。しかし、一度探索を始めたら「もうちょっと奥まで……」と続けたくなるのがプレイヤーの心理。また、ようやくギミックが解けた時、そこで引き返す気持ちにはなかなかなれません。

ですが時間が経ちすぎると、「獣の呪い」は容赦なく進行し、セレスを蝕みます。変貌していく姿は段階があるものの、深度が増すほどおぞましい姿となり、人によっては目を背けてしまうほど。本作のCEROが「C」なのは、この呪いが原因だと筆者は睨んでいます。

また、呪いが進みすぎると容赦なくゲームオーバーになるので、セレスの容姿を全く気にしないという剛の者でも、「獣の呪い」の放置は悪手。精神的なプレッシャーだけでなく、「探索の時間制限」という役割も担っているのです。

「酷い姿にさせない!」という使命感か、ゲームオーバーを回避するための対応としてか、理由はいずれにせよ、呪いの進行に対処しなければいけません。一方で、「折角ここまで来たのに……」という探索欲も自然と湧くので、そのせめぎ合いがなんとも悩ましい!

肉を持ち帰る回数に制限はないので、こまめに戻るのが一番安全な道。しかし、「ぎりぎりまで粘って帰る方がお得」「あっちとそっちに寄ってから帰ると、次が楽かも」と、ゲーマーはつい効率的なプレイを目指しがち。その結果、小さな目的を達成して帰ったら、セレスの呪いが進行していた……という、ジェットコースター並みの高低差を叩きつけられるのも、本作ならではの醍醐味でした。

効率を目指すゲーマー心と、静かに忍び寄る呪いの圧力。そのせめぎ合いがプレイに緊張感を与え、塔の探索にほどよい刺激を与えてくれました。仕事に励みつつ奥さんのことを考える旦那さんって、こういう感じなのだろうか……!(男女逆もまたしかり)

■ギミック満載の塔を、鎖アクションで攻略! ショートカットでやる気倍増、しかし時に後悔も……?
冒険の舞台となる「十三訃塔」は、敵だけでなく、様々なギミックも待ち構えています。主が待ち構えている部屋も鎖で封じられているので、ギミックの攻略もプレイする上で欠かせない要素のひとつです。

ギミック攻略の鍵になるのが、エンデが持つ「オレイカルコスの鎖」。この鎖を使って移動したり、絡め取って物を動かしたりと、多彩な用途でエンデの探索を助けてくれます。ポインターで指定した先に鎖を打ち出せるので、怪しい場所があったら撃ってみる、というのも手。鎖をどう活用するか、その試行錯誤もほどよい手応えがあり、探索にメリハリを与えてくれます。

また鎖は、ギミックへの対応だけでなく、敵への有力な攻撃手段です。鎖による射撃はもちろんのこと、敵を捉えて引きちぎったり投げたりと、多彩な攻撃アクションが可能。

鎖以外にも、バランスがとれた「大剣」、連続攻撃でダメージを与える「双小剣」、高い攻撃力と広い範囲を両立する「大鎌」などの武器もありますが、この3種類の武器は“第2武器”という位置づけ。鎖がメインウェポンというゲームは、この手の3Dアクションゲームでは割と珍しく、それだけに新鮮です。

ギミック攻略にバトルと活躍どころが多い鎖は、その用途に応える多彩さと、使いこなした時の爽快感を合わせ持つ、頼もしくも楽しい主武器。特に、主と戦う上で重要な存在になるので、鎖を使い慣れてくると『パンドラの塔』の楽しさが一段階上がると言っても過言ではありません。

そして、ギミックを攻略して先に進むと、ショートカットが開通することも。探索に挑むほど奥まで進めるようになりますが、ショートカットがあれば道中を一部省略できるので、探索効率は飛躍的に上がります。

呪いによる時間制限があるゲームだけに、ショートカットが開通した時の喜びはひとしお。その勢いのまま、探索を続行し……気がつくと、帰ろうと思っていた時間が大幅に過ぎていることもしばしば。「どうか呪いが進行していませんように」と願いながら、急いでショートカットにGO。調子に乗った後の、期待と不安が入り交じる帰路も、忘れられないひとときです。


■プレイヤーの態度が、エンディングに直結!? エンディングまで油断できない『パンドラの塔』
これも一般的なゲームと比べると珍しい点ですが、セレスとエンデの関係はゲーム開始時点でかなり良好です。そのためコミュニケーションも濃密なものが多く、イベントの発生も拠点に戻った時の楽しみと言えるほど。

そして、呪いの進行による変貌は、穏やかな雰囲気を一変させるほどのインパクトに満ちています。「下僕の肉」が間に合って元の姿に戻れたとしても、一度見た姿が忘れられず、なんとなくセレスと距離を取ってしまう……そんなプレイヤーがいてもおかしくありません。

決して呪いを進行させないよう、万全の体勢で挑むか。探索を重視しつつ、呪いの進行にも気を使うバランス型でいくか。最低限のフォローだけして、あまり気遣わずに進めるか。どのようなプレイスタイルを選ぶかは自由ですし、いずれの選択も受け止める懐の広さを『パンドラの塔』は持ち合わせています。

と同時に、プレイスタイルは本作の展開に大きな影響を及ぼします。呪いの影響やセレスとのコミュニケーションが、本作のエンディングを大きく左右。親身になり、呪いを極力押さえ込めば、よりよい結末に近づくのです。

そして、逆もまた真なり。セレスを冷遇するプレイをすれば、その流れに相応しい結末を迎える形に。ハッピーとバッドの2種類……という裏表ではなく、なんと5種類ものエンディングが用意されています。

意識して親密になれば悲惨な結末は回避できますが、「獣の呪い」という業を背負った彼女に対して打算や計算抜きで自然に接した時、どんな関係に辿り着くのか……そんなスタイルでプレイしてみるのも一興かもしれません。


もし『パンドラの塔』に惹かれた方がいれば、パッケージで発売されたWii版か、ダウンロードで購入できるWii U版、お好きな方を選んでプレイしてみてください。Wiiは本体が中古で安く出回っているので、費用面ではこちらあお勧め。ただし、パッケージ版『パンドラの塔』を見つける必要があります。

Wii U本体の中古価格は、Wiiほど下がってはいません。ですが、HDMIでTVやモニタと接続できるので利便性が高く、『パンドラの塔』はダウンロード版を購入できるので入手も確実。どちらも長所があるので、好みでお選びください。

……ですが本音を言うならば、冒頭での話に戻りますが、スイッチ向けの『パンドラの塔』を出して欲しい。そして、出来るだけ多くの人に遊んで欲しいのです!

『ゼノブレイド』(『Xenoblade Definitive Edition』としてリマスター化)や、『スーパーマリオギャラクシー』(『スーパーマリオ 3Dコレクション』に収録)のように、Wiiソフトがスイッチ向けに再登場した例もあります。10周年を迎えたこのタイミングで、嬉しい報告が届くことを切に願うばかりです。




《臥待 弦》

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