「あつまれ どうぶつの森(以下『あつ森』)」では世界各地の様々な魚が登場、島の水辺で釣り上げてコレクションすることができます。
特に淡水域ではネオンテトラやアロワナといった、ビジュアル面に大きな特徴をもつ=グラフィック映えする魚が多くフィーチャーされる傾向にあるようです。
しかし、中には見た目は地味ながら、その特徴的な生態からピックアップされたと思しき魚も。
そう!ドクターフィッシュです!
お魚に疎い方でも、名前くらいは聞いたことがあるかもしれません。
日本のツチフキやカマツカなどにも似た、落ち着いた体色と体型。体長は大きくても10センチ程度です。
よく言えば川魚として均整のとれたビジュアルですが、没個性な印象も受けます。
しかし、彼らのユニークさはその食性にあり!
なんと、古くなった人の皮膚の角質を食べるのです。
ドクターフィッシュは幅広い環境への適応性を備えています。
河川や池沼から温泉にまで生息し、普段は岩に着生した藻類などを吸盤状の口で吸いつくように食べています。他には水生昆虫などの小動物を捕食することもある雑食性です。
しかし、温泉などへ人が手足を浸けると、その角質を積極的に食べるのです。
特に水温の高い温泉では昆虫も藻類も豊かではないため、人の角質は貴重なタンパク源となっているようです。
角質を食べられること自体が天然のピーリングすなわち美容効果や、あるいはマッサージとしての効能を得られるなどとし、医師の魚=ドクターフィッシュという英名で呼ばれるようになったと言われています。
養殖も行われており、今では原産地の温泉地はもとより世界各地の浴場、マッサージ店、水族館などへ導入されています。
なお、角質が好物というモノ好き魚たちですが、日焼け止めなどの薬品が付着した手足を浸けると弱ってしまうこともあるのだとか。
ドクターフィッシュの「施術」を体験する際はよくよく気を付けましょう。
■著者紹介:平坂寛
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Webメディアや書籍、TV等で生き物の魅力を語る生物ライター。生き物を“五感で楽しむ”ことを信条に、国内・国外問わず様々な生物を捕獲・調査している。現在は「公益財団法人 黒潮生物研究所」の客員研究員として深海魚の研究にも取り組んでいる。著書に「食ったらヤバいいきもの(主婦と生活社)」「外来魚のレシピ(地人書館)」など。
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