史上初の「はんなま」ユニットは“原点回帰”へ―統括Pが語る「ナギナミちゃんねる」のこれまで、そしてこれから

「海月ナギ」と「飛鮫ナミ」による“XTuber”(VTuber×リアル)ユニット。その誕生秘話と今後の展望とは?統括プロデューサーであるニギヤカシ型とりとんさんにインタビューを行いました。

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史上初の「はんなま」ユニットは“原点回帰”へ―統括Pが語る「ナギナミちゃんねる」のこれまで、そしてこれから
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バーチャルとリアルがクロスする“XTuber”ユニット。

ふんわりマイペースな性格の「海月ナギ」と、不憫属性な快活少女「飛鮫ナミ」。海が大好きな女の子二人による「ナギナミちゃんねる」は、2019年7月10日にYouTubeにて活動を開始。文頭のような新しい表現をVTuberシーンへ持ち込んだ、別名“はんなま系VTuber”として特異な存在感を示しています。

2021年7月10日に実施された2周年記念配信では、総勢31組のVTuber・インフルエンサーらが祝福。最近では歌ってみた動画の投稿数も増え、9月24日にはBOOGEY VOXXとのコラボによる、フルトラッキング音楽ライブ「凪波DIVEALIVE」を主催するなど、なおも貪欲にアプローチの幅を拡げています。

さて、そんな「ナギナミちゃんねる(以下、ナギナミ)」を語る上で、欠かすことのできない存在がいます。それは運営支援型AI 「Tri-ton」―通称「とりとん」は、手っ取り早く言うとプロジェクトの裏方。やらかし型、編集担当、音楽担当といった複数の人格が、現在に至るまでナギナミを支え続けてきました。本記事では、なかでも“統括Pっぽい何かをしている”というニギヤカシ型とりとんさんにインタビューを敢行。三年目を迎える彼女たちのこれまで、そしてこれからについて語ってもらいました。

――(インタビュー日:7月16日)ナギナミちゃんねる2周年おめでとうございます!まずは、そもそもの本プロジェクトの立ち上がりについて振り返っていただけますか?

ニギヤカシ型とりとん(以下、ニギとり):もともとは2018年に。VTuberシーンへの新規参入が最盛期を迎えていた頃にデビューするはずだったんです。それが色々な事情がありまして……、後発だからこそ構想のひとつにあった「はんなま」で腹を括ろうと、プロジェクトの封を切りました。

当時には既に、VTuber市場でのファン獲得は限られたパイの奪い合い状態でして。YouTuber市場のように、トレンドの企画を他のプレイヤーが模倣するばかりになっていました。そんな状況に対して、もっと幅広い人に親しんでもらえるプロジェクトを目指したいよねと、じゃあ“料理動画”ができるバーチャルキャラクターはどうだろう。芸能人らリアルタレントと違和感なくコラボできる形はなんだろう……という風に方向性を具体化させていきました。

――そこから現在の運営(とりとん)チームになった経緯というのは?

ニギとり:ナギナミの運営サイドにはもう1人、やらかし型とりとんという主体メンバーがいまして、彼とタッグを組むことになった経緯は単純にそれまでの本業関係で共に過ごす時間が長かったからですね。出張や一日がかりの撮影仕事などをご一緒する機会が多くて、地元の友達よりも共に過ごす時間が多くて気心が知れていましたし、プライベートでも共通の趣味が多くて、キャンプや釣りなどにも遊びに行ったりもして……そんな関係性があったから「面白いこと一緒にやろうよ」と一緒にプロジェクトを誕生させましたね。

――そ、そんな理由で……!

ニギとり:もちろん、それだけじゃないですよ(笑)。「はんなま」という構想を実現するには、彼の力が必要不可欠でした。というのも彼はスーパーマンで、動画撮影もできれば、船舶や飛行機の免許まで持っていて、さらに料理ができるスタジオも運営しているなど、コンセプトを実現するうえで本当にベストマッチなパートナーだったんです。

そこから企画を詰めていくなかで、二人の好みが一致したいみぎむる先生に「キャラクターデザイン担当になって!」とはるばる西の方まで口説きに行くなど、企画も普通にやってても面白くないからと最初からぶっ飛んだことばかりチャレンジしていましたね。それこそ“ホラーロケ”とか“くさやチューブ”とか……。でも最初はなかなか、独自性のある動画を出し続けていても気づいてもらえなくて。ちょうど一か月が経った頃に、とある視聴者さんのツイートがバズったんです。そこから知ってくれた方が結構いらっしゃるようですね。

それから“廃墟ロケ”や“くさや実食”といった企画で、「何だこのVTuberは!」といった反応を各所からいただきました。その後に「FAVRIC」へ映像出演させていただくのですが……。

――私がナギナミちゃんねるを知ったのは、その「FAVRIC*」からでした。

*2019年9月29日に幕張メッセにて催されたVTuberによるファッション×音楽×VRイベント。

ニギとり:今も応援してくださっている多くのファンの中でも「FAVRIC」はかなり印象的な出来事だったようです。実はそこで“とある事件”が起きるんですよ……!最後に「Rookie's Runway」という、その年にデビューしたVTuber50組が総出で『Dear』を歌う演目があったのですが、いざライブ演出が始まってもナギナミの二人の姿が見当たらない。ヤラカシ君と一緒に関係者席から2人の姿を探すわけです。でも見つけられず、あれれ?と思っているうちにライブが終わりまして……。

それでTwitterをチェックしてみると「ナギナミいた?」「どこにも見えなかった」といった我々と同じような状況のツイートがたくさんあったんです。イベント運営に確認すると「すみません。ナギナミさんのモデルがステージに出ていなかったようです」と言われて「えぇ!?」と。

――そ、そんな事件があったとは……!

ニギとり:ただ、これがきっかけでこんな現象が起こります。5chのVTuberスレッドなどで、「ナギナミが可哀想だから皆で応援してあげようぜ」と。“不憫系VTuber”といった表現もされまして、一気に4000~5000人くらいの方にチャンネル登録をしていただいたんです。残念だったけど、VTuberファンの温かさをすごく感じましたね。だからこそナギナミを語る上で、あのイベントはどうしても外せないんですよ。

――では、そこからはある程度軌道に乗り始めると?

ニギとり:いえ、やはりいい事ばかりではなくて……。FACRICの流れで一気に音楽活動を強化しようと、準備していた大物ボカロPとの楽曲制作の話が頓挫したりもしました。それからパートナーとして動いてくださっていた会社の方がVTuberにおける“コラボ”の重要性を話されていたのを受け、最初に誰に相談すればいいのか手探りのままに、はんなま系だからリアルな方がいい!ということでお笑い芸人の「クロちゃん」さんとコラボしたら……プチ炎上しちゃいまして。

――あー……。

ニギとり:(笑)。前向きなターニングポイントは「朝ノ姉妹ぷろじぇくと」さんとのコラボですね。2020年3月に初のVTuberコラボとして“石川ロケ”を敢行しました。そこから一気にVTuber業界での横の繋がりができまして、インサイドちゃん姉妹との縁もそこからでしたよね。

――温泉ロケには驚かされました……!「朝ノ姉妹ぷろじぇくと」さんとはリスペクトの関係を築いていますよね。それが非常に印象的で、ゲームのPR施策のご相談をさせていただきました。

ニギとり:実はあの時、僕はラボ入り(手術&入院)のために一時離脱してたんですよ。約4か月間は、運営も企画も他のとりとん達に任せっきりになっていたんですが、離脱前にコラボを打診して入院中に実現した朝ノ姉妹さん、そしてYouTuberの「とっくん」さんとのコラボをきっかけに興味を持ってくださった人も多くて、数値的な伸びはその時期が最も熱かったと思います。その後、ナミちゃんが着ているオリジナルブランド「AIR JAWS」のパーカーを展開して再販の度に即完売を繰り返したり、インサイドちゃんずや朝ノ姉妹さんとのコラボで実現した『ファーミングシミュレーター20』の配信であったりと"企業案件”もいただけるようになって、ようやく軌道に乗ってきたかなという感じがありました。

また、兼ねてから裏でサポートしてくれていた音楽担当の“音りとん(囮とん)”が本格的にジョインして、"FAVRIC事件”で頓挫していた音楽活動に改めて「本気で挑んでいこう!」ってなったんですよね。TAMUさんが主催しているコンピレーションアルバム「VirtuaREAL.02」へ参加したことへの反響もすごく大きくて、あの顔ぶれの中で、ロボ子さんの次に数量限定の色紙付きセットが売り切れたんです。この企画の中でTAMUさんが制作してくださった「クロスエメラルド」はナギナミの代表曲になりました。

――錚々たるメンバーが集まるなか、それはすごいですね!

ニギとり:すごく嬉しかったです。そんな風にナギナミファンのコミュニティと言いましょうか、とにかくナギナ民*に熱く支えられてきたからこそやってこれましたね。VTuber業界でも最強のファンだと思っていて感謝してもしきれません。だからこそ最近はコロナの影響で、そういった方々に喜んでもらえるような「はんなま」コンテンツを出せていないのがもどかしいです。コロナさえなければ、毎年企業として出展していたニコニコ超会議でリアルライブをやったりして、もっとたくさんの方に出会えていたのではと考えてしまいます。強みであるロケや、新たにナギナミを知ってもらえるコラボ企画も思うようにできませんでしたし……。

*「ナギナミちゃんねる」のファンの総称

――コンテンツを作るのに直接会う必要がある「はんなま」だからこその難しさはありますよね。

ニギとり:そうですね。一方でこれは良い話なんですが、2周年生放送の際にご協力いただいた方々の声を聞いていて、「リアル」×「バーチャル」の造語である「はんなま」という言葉がずいぶんスタンダードになったなと感じました。人気VTuberの方にも「はんなま」ってキーワードを認知して使ってもらえてたり、自身のことをはんなま系って名乗ってくれている方もお見掛けしたりして、なんかこう……ナギナミがはんなま系にフルコミットしたことで、VTuber界隈に微力ながらも新しい風を吹き込めたところもあったのかなぁと。もちろん、我々だけの実績ではないですが……。

この市場は今、個が爆発力を持った“ライバー”がメインストリームですよね。それを意識しているうちに、気が付いたら「はんなまだからコラボのお声がけが少ないのではないか?」と「置きに行く」ような企画に寄って行ってしまったなという反省があります。もちろんその甲斐あって、たくさんのVTuberさんとのコラボを実現できたわけなのですが。なので、徐々にナギナミ初期の刺激的な企画に原点回帰して「らしさ」を取り戻してきたいんです。2周年をきっかけに生まれ変わる体制は整ったので、改めて本気を出してやっていきたいと思っています。

そもそも30組以上の方々にコラボを打診した2周年配信も、結構なチャレンジだったんですよね。それを形にできたのは、ナギちゃんとナミちゃんが今までとりとんが主体となっていた領域にまで踏み込んでくれたからなんです。プロジェクトが始まったばかりの頃は、とりとんサイドで全て企画の提案を行っていたんですが。今年の春頃からは企画立案だったりコラボの打診だったり、ナギナミ本人達からもバンバンするみたいな形になってきています。

――確かに『Among Us』だったり『ポケモンユナイト』だったり、他のVTuberと気軽にゲームすることも増えてきましたよね。インサイドでも先日、ナミさんの「原神焼き」動画を記事にさせていただきました。

ニギとり:ちなみにナミちゃんは前から、ああいった動画を出したいと思っていたようです。ナギちゃんも含めて積極的に「こういう打診をいただいたんですけど、是非やりたいです!」みたいな連絡も増えてきて、以前よりも有機的なチームになってきているなと感じています。これはこれでとても良い傾向ですので、ナギちゃんとナミちゃんが個別に主体性をもって活動しつつ、とりとんで独自の世界観のあるオリジナルコンテンツを作っていくというのを強化していきたいですね。

具体的には、「はんなま系」だからこそできる料理ロケ企画という強みは出していきたい。それと「真面目」「前のめり」なナミちゃんは持ち前のチャレンジ精神、「イラスト」が描けるナギちゃんの器用さを上手く活かしつつ、ナギナミらしい企画の“ぶっ飛び具合”も強化していきたいですね。

――ところで、対照的な個性を持つナギナミに見えますが、活動を続ける中で彼女たちがキャラクター的に変わっていったこと、もしくはトリトンさん側で二人へのイメージが変わったことはございますか?

ニギとり:む、難しいですね……。収録外の二人も、ファンの方々が愛してくださっているナギナミそのままなんですよ。だからこそ「とっくん」さんをはじめ、たくさんの方が忙しいなか企画に協力してくれているんだと思いますし、持ち前の性格とかキャラクター性というのが人間もVTuberも大切なんだなと。

ひとつ挙げるのであれば、ナミちゃんは面倒見がよくて気が利くというイメージを持たれていて実際もそうなんですが、実はナギちゃんにも繊細な一面があるんです。生放送や撮影の時に彼女は「意外にも」状況を的確に把握し、適切な行動を取っているんです。いわゆる“裏回し技術”に長けているんですよね。

――ナミさんが表、ナギさんが裏を回すという……。お互いを補完しあう素晴らしいコンビネーションですね。さて今後の展望についてはいかがでしょうか?

ニギとり:やってみてできないことはないと思っているので、例えば「人生つみこ」さんが主催されているような百物語企画のような……ああいった大型企画をナギナミ主体でできないかなと検討しています。そしてやっぱり、本気で音楽活動をやっていくぞ!と毎回ゲストアーティストをお呼び立てして、一緒に楽しんでもらえるようなライブ配信も仕掛けていきたいですね。

それと企画もさることながら、配信ペースもですね。とりとんチームは非専業かつ少数精鋭なので、その時のリソースによって予定通りに動画を公開できない……なんてことが起きていたのですが、配信やスケジュール管理の体制を整えることで「ナギナミの動画を見るならこの日!」とたくさんの方に視聴していただきやすいスタイルを目指していけるようになりつつあります。

――習慣化しやすくなる仕組み作りを、ですね。

ニギとり:その通りです。まぁでも……一番やりたいのは、ナギナミじゃないとできないようなバカバカしい……、まぁロケですよ……!本当にロケがやりたいんですよ!!なので例えば「せんのいのり」さんや「根間うい」さん、「舞鶴よかと」さんといったご当地VTuberとして頑張られている方々と連携した企画にもチャレンジしたいですね。

それと2020年9月には「神田たまごけん 神谷町店」さんのアンバサダー、2020年11月には「日清パワーステーション」の初代MCに就任させていただいたり、VTuberさんに限らずコラボをさせていただく機会も増えていますので、こういったアプローチでも色んな試みができればと。

――ありがとうございます!では最後に、読者へ向けてメッセージをお願いします。

ニギとり:これからナギナミは本気を……!いや、本気を出してなかったわけじゃなかったんですけど(笑)。ナギナミは今まで以上に、昔から応援してくれてる人に喜んでいただきつつ、初めて見る人も楽しんでいただけるような動画を作っていきます。VTuberファンだけでなく、そもそもVTuberを見たことのない人でも楽しめるような「はんなま」ならではの強みを生かして、原点回帰でコンテンツを作ってまいりますので是非応援よろしくお願いします。音楽ライブなども頑張っていくので期待してください!


3年目も大きなチャレンジを続けることを新たにした“XTuber”ユニット。オリジナリティにこだわる「ナギナミちゃんねる」のこれからに期待しましょう。

《矢尾 新之介》

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