■『レイジングループ』1,986円(税込):1月16日23時59分まで
仲間の中に、嘘をつく敵がいる──この過酷な状況を切り縫えるには、仲間同士の信頼が欠かせず、しかし仲間なのか潜んだ敵なのか疑うこともまた必須。信頼と疑惑、そして裏切りが交錯する「人狼ゲーム」は、コンピューターゲーム業界にも大きな影響を与え、その魅力を取り込んだ数多くの作品が登場しました。
この『レイジングループ』も、人狼ゲームをモチーフに選んだ作品のひとつ。過疎化が進む閉鎖的な村を人狼ゲームの舞台とし、奇妙な因習や民族伝承を交えた不気味な世界観を構築。そこに、個性豊かなキャラクター陣が綴る先が読めない展開を加え、没入感満点のADVへと仕上げています。
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ジャンルの関係から、その魅力をネタバレなしで紹介するのは難しいのですが、物語の力強さについては太鼓判を押せます。ストーリーは、面白さ以前に好みに合う・合わないがあるので、(あらゆるゲームに通じる話ですが)万人が楽しめるとは言えないものの、多くのユーザーを引き込む力があるのもまた事実。
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その面白さを直接証明するものではありませんが、『レイジングループ』は2015年にスマホ向けとしてリリースされたのが最初の一歩。その後、2017年1月にPS Vita版が登場し、PS4版、スイッチ版、PC版を数ヶ月ごとに展開しました。こうした広がりを持てたのは、ユーザーが下した評価の高さも無関係ではないでしょう。
また、個人的な話で恐縮ですが、プレイに没頭して朝を迎えてしまったこともしばしば。ストーリーが次々と展開するため目が離せないというのもありますが、何よりも物語に没頭してしまい、時間の感覚すら失っていたというのが正直な感想です。
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そしてもうひとつ特筆したいのが、主人公・房石陽明の言動。もちろん作品によりますが、ADVゲームでは時折「なぜ、そこを見落とす?」「今の明らかにおかしいだろ」と、主人公の思考や行動に物足りなさを感じる場合があります。ですが陽明は、状況をロジカルに捉え、常に思考を十全に働かせます。
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陽明の振る舞いや発言が状況を動かすことも多く、彼の行動がどんな結果に結びつくのか、先が気になることも立たあります。そのようなスペックの持ち主なので、主人公の判断や決断にイライラすることなないのも嬉しい点のひとつまた、主人公にありがちな“単なる善人”ではないのも、ポイント高めです。
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強いて注意点を上げるとすれば、人狼を突き止める要素はゲーム性に含まれておらず、物語が進むと必然的に判明します。この点を“ゲームとして”楽しみたい方は、他の作品を選んだ方がいいかもしれません。とはいえ、本作が魅力的なのは間違いないので、悩む場合はまず体験版を遊んでみてはいかがでしょうか。