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「連絡もしないでどこに行っていたの?心配したんだから!」
1988年~89年にファミコン ディスクシステムで発売された『ファミコン探偵倶楽部 消えた後継者』『ファミコン探偵倶楽部Part II うしろに立つ少女』に登場する橘あゆみは、主人公の少年探偵(名前はゲームスタート時にプレイヤーが設定)と共に空木探偵事務所に勤める助手の少女です。
シリーズ1作目『消えた後継者』では記憶を失って途方に暮れていた主人公を発見し、その後の調査を含めてサポートしてくれる姿が描かれ、その前日譚を描く2作目『うしろに立つ少女』では、まだ学生だった彼女と主人公の出会いや、事件への向き合い方を通して絆を深めていく様が描かれています。
本シリーズは2021年にMAGES.の開発によるリメイク版が制作され、スイッチ専用ダウンロードソフトとして配信中です。あゆみのボイスは、『ラブプラス』の姉ヶ崎寧々役でもおなじみの皆口裕子さんが担当しています。
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おそらく、このキャスティングは1997年にスーパーファミコン用周辺機器「サテラビュー」を介してデータ放送された(≒放送時間中のみプレイできた)『BS探偵倶楽部 雪に消えた過去』であゆみを演じたのが皆口さんだったことによるもので、ディープなファンほどニヤリとしたのではないでしょうか。
『消えた後継者』のあゆみは主人公の手が回らない部分の聞き込みや調査を担当し、別行動することが多いですが、一番印象に残るのは主人公が消息を追う女性・綾城ユリの写真を見せたときの反応でしょうか。
あゆみに写真を見せながら「ほんとに綺麗な人だろ…」とデレデレする主人公の手を思いっきりツネるのはファミコン版からあったやり取りですが、スイッチ版ではキャラクターデザインと滑らかなアニメーション、ボイスの破壊力が相まって「もうこの子が任天堂作品最カワヒロインでいいのでは!? ハイ決定!」と天を仰ぎました(異論は認めます)。
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一方『うしろに立つ少女』では、まだ学生ながら主人公も舌を巻く行動力で事件の真相を追い求める姿が描かれました。思いが強すぎて窮地に陥るシーンもありましたが、その原動力は好奇心や野次馬根性ではなく「親友の洋子は、なぜ誰かに命を奪われなければならなかったのか」というやるせなさであったため、一途さや健気さ…言い換えるなら「ヒロイン度」が強く前面に出ていました。
また、『うしろに立つ少女』であれだけの恐怖体験をしておきながら高校卒業後の進路に探偵事務所を選ぶところには、メンタルの強さや、事件を解決に導いた主人公への思いの強さもうかがえます。詳細はここでは触れませんが、ディスクシステム版『うしろに立つ少女』のクライマックスにおけるホラー/サスペンス描写は、当時のゲーム少年たちを恐れおののかせ、いつまでも消えない記憶を脳裏に刻み込むのに十分なものでした。筆者もその1人です。
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ファミコン ディスクシステム『ファミコン探偵倶楽部 消えた後継者』は、2022年4月27日で発売34周年を迎えました。そのリメイク作品となるスイッチ用ダウンロードソフト『ファミコン探偵倶楽部 消えた後継者』『うしろに立つ少女』は、各4378円(税込)で配信中です。
まだ本作に触れたことがない方は、ぜひ「任天堂最カワヒロイン(当社比)」の魅力を味わってほしいと思います。『消えた後継者』は夏に起きた事件を描く作品ですので、もう少し待ってリアルの季節に合わせてプレイするのもオツでいいかもしれませんね。