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1991年に稼働したアーケードゲーム『ストリートファイターII』で初登場を果たした春麗は、対戦格闘ゲーム初のプレイアブル女性キャラです。頭上の二つのシニヨン(いわゆるお団子頭)、チャイナ服をモチーフとした格闘服、イカツいトゲがいくつも付いた腕輪など、そのデザインは今日の『ストリートファイターV』にも受け継がれており、長年にわたってファンに愛され続けています。
初登場の『ストII』から1994年の『スーパーストリートファイターIIX』までは、勝利メッセージが「女だからといって甘く見たわね!残念だけど私は世界一の格闘家なのよ!」、「ふっ すべての男たちは私の前にひざまづくのよ!」など我が強いものが多く、かと思えば勝利ポーズでは満面の笑顔で飛び跳ねながら喜ぶものもあったりと、美少女といえばいいのか女傑とでもいえばいいのか…と、なんとも幅の広いキャラでした。
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格ゲー初心者の心強い味方!
筆者は1992年に発売されたスーパーファミコン(SFC)版で初めて本作に触れましたが、SFC版が発売されると家庭用ゲーム雑誌に攻略記事が掲載されたり攻略本が発売されるようになり、春麗はどこでも「初心者にオススメのキャラ」筆頭でした。
筆者はその教えに従い、最初は春麗から使い始めました。当時はまだ中学に上がったばかりで能動的に女性キャラを使うことに気恥ずかしさもありましたが、このジャンルに早く慣れるためには仕方ありません(言い訳じみた言動)。なお、昔のそんなピュアさはどこへやら、現在は嬉々として女性キャラを使う模様です。
それはさておき、春麗が初心者にオススメされる理由はいくつかあり、その理由には以下のようなものがあったと記憶しています。
移動が早く、対CPUなら試合開始直後などに前進からの投げが決まりやすい
しゃがみ強キックのリーチが長く当てやすい(ガードさせやすい)
必殺技がタメ技とボタン連打技のみなので出しやすい
通常攻撃だけで成立する連続攻撃がある
4つ目に挙げた「連続攻撃(※当時の家庭用ゲーム誌では、コンボという表現がまだありませんでした)」は、ジャンプ強パンチ→立ち中パンチ→しゃがみ中キックでした。リュウやケンでしゃがみ中キックをキャンセルして波動拳を云々…と言われても波動拳そのものがなかなか出せないレベルでしたので、このシンプルさには助けられました。
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読みはチュンリー?しゅんれい?
ゲーム中に「ChunLi」と表記されてはいるものの、SFC版を初めてプレイしてからしばらくの間、筆者は春麗を「しゅんれい」と読んでいました。そのように勘違いしてしまった理由のひとつは「当時の創作には、日本語読みが正式名称である中国人キャラクターもいた」からだと思います。
たとえば、1985年にファミコンで発売された『飛龍の拳』。主人公は中国人の少年・龍飛ですが、その読みは「りゅうひ」でした。また、翌86年には週刊少年ジャンプで車田正美氏による大ヒットマンガ『聖闘士星矢』の連載が始まりますが、ドラゴン紫龍の幼なじみである中国人の少女・春麗の読みがまさに「しゅんれい」でした。
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そして勘違いを決定づけた一番の要因は「ストIIより先に三国志にハマっていた」ことかもしれません。諸葛孔明を「しょかつこうめい」と読むように、『三国志』の英雄たちの名は日本語で発音するのが普通ですよね。
とはいえ、『ストII』よりも早くアニメ化までされた人気マンガ『魁!男塾』の王大人(ワン・ターレン)や、TVアニメ『超時空要塞マクロス』のリン・ミンメイ(漢字表記は「鈴明美」のようです)など、当時すでに名前を中国読みさせる中国人キャラもいましたので、これは筆者の中で『三国志』の影響が大きかった、というだけの話かもしれません。
春麗は今回紹介した初期の姿も含めどのシリーズ作品にも異なる魅力がありますが、筆者は『ストリートファイターIII』シリーズの春麗がお気に入りです。キャストを担当した声優・田中敦子さんの凛々しい声と、映画『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ 天地大乱』でジェット・リー演じる黄飛鴻が劇中で見せた構えをモチーフにしたしゃがみポーズのかっこよさにシビれました。(この映画がモチーフであるという話は、イラストレーターのあきまん氏がTwitterで言及されておられます)
2022年2月21日にはシリーズ最新作『ストリートファイター6』が発表されましたが、次の春麗はどのような魅力を備えてくるのでしょうか。まだ春麗の登場すらアナウンスされていませんので勇み足ではありますが、詳細が分かる日が楽しみです。