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7月8日、株式会社Tooの主催、オートデスク株式会社の協力によるゲーム制作ワークフローセミナーの第5弾「ELDEN RING」メイキングセミナーがオンライン開催されました。
https://www.too.com/event/2022/eldenring/
本セミナーは「人々がクリエイティブになれる環境をクリエイトする」株式会社Tooが主催しているウェビナーで、ゲーム業界に就職をしたい学⽣やゲーム、アニメ、映像制作に携わる方、CG 制作をはじめてみたい⽅などを対象としています。これまでスクウェア・エニックス社のゲームや『GRAVITY DAZE 2』などのタイトルを題材に、ゲーム制作の裏側について紹介されてきました。
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第5回目となる今回はフロム・ソフトウェアからチーフ3Dグラフィックアーティストの小川啓一郎氏が講師として登壇。今年2月の発売直後から大きなブームを巻き起こした『ELDEN RING』を題材に、そのグラフィックデータ制作への「こだわり」や開発秘話が紹介されました。
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本記事ではオンラインで開催されたセミナーの模様をレポートいたします。
少人数体制で実現した初のオープンフィールドゲーム開発
セミナーの冒頭では全世界1200万本以上出荷の大ヒット作品となった『ELDEN RING』のPVを紹介。壮大な世界観と美麗なグラフィックに注目が集まりますが、本作はフロム・ソフトウェアとしては初のオープンフィールド型ゲームであり、新しい挑戦となった開発体制について話題が及びました。
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フロム・ソフトウェアは東京と福岡にスタジオが存在し、常に複数のプロジェクトが並行して進められています。チームの中にもそれぞれ細分化されたセクションがあり、セクション単位や社内wikiを活用して知識や技術の共有を行うことでスムーズな開発を実現しているとのこと。使用するツールも開発作業全般において多種多様で、それぞれ状況や素材に応じて使い分けがなされています。
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『ELDEN RING』は『DARK SOUL 3』のDLC開発が終了してから5年という長い期間で制作されており、図のようなマイルストーンに沿って開発が進みました。ファーストプレイアブル版ではジャンプアクションや遺灰による霊体召喚などの要素を追加し、データ容量を調整しながら3ヶ月単位の外部レビューでクオリティアップを重ね、データ調整やデバック、ネットワークテスト版を経てマスターアップへと至りました。
少人数での開発を実現するための工夫としては、社内でできることとできないことを精査して協力会社との連携を行ったことや、以前より進めていた「働き方改革」が挙げられました。チェック作業を分担するために今までより多くの専任ディレクターを設けたことでチェック精度も上がって工数の削減に繋がり、コロナ禍の影響によってリモート体制でのミーティングや開発を導入せざるを得なかった状況も、かえって従来よりも効率化が図れた側面があると振り返りました。
こだわりが詰め込まれた「オープンフィールド」と「レガシーダンジョン」
続いて紹介されたのは『ELDEN RING』の大きな魅力である背景やグラフィックについて。
本作のマップは広大なフィールドを自由に移動して未知のダンジョンを発見して踏破する「オープンフィールド」と、作りこまれた立体的なダンジョンである「レガシーダンジョン」に分けられます。強敵との戦闘を後回しにするなどプレイヤーの選択によって自由度の高い設計となっているオープンフィールドに対し、レガシーダンジョンは敵との駆け引きを楽しみ「何度も繰り返すことで逆境を乗り越える」達成感が重視されています。
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背景デザインで注意するポイントについては、ファンタジーで避けられないフィクションに説得力を持たせる「リアリティとフィクションのバランス」や、訪れた場所が怖かったり不気味だったり荘厳だったりと場所によってメリハリを利かせた演出を行う「印象や記憶に残るデザイン」、そして「ゲーム都合にならないデザイン」が挙げられました。
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他にもオープンフィールドモデルの白地図からポリゴンモデルまでの完成過程や、フィールド上の遺跡や何らかの跡地から過去にあった出来事を想像してもらえるような「時代表現」など、ゲーム内のマップにおける様々な創意工夫について、制作背景や意図が語られました。
特にオープンフィールドでは配置されるアセット数の増加が処理負荷となることを懸念し複雑なモデルを遠景では計量モデルに差し替えており、草や小石などの差し込み地形ではテクスチャの調整で流用を分かりづらくするなど、効率的にオープンフィールドのデータを管理しながら世界観を損なわないようにすることにも大いに注意が払われていました。
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『ELDEN RING』マップ完成までには何度もクオリティアップが重ねられており、セミナーではその一例としてマップやフィールドの見た目をディレクターと相談しながら変化を行っていった事例や、3dsMaxを使用してアセットの配置や光源の大きさなどを調整した事例が解説されました。こうして『ELDEN RING』らしさを感じる世界が完成していったのです。
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キャラクターについて
最後のトピックはキャラクターデザインについて。ここではデザインイメージ工程とデータ作成工程のフローについて、発注に至るまでは何度もミーティングを重ねてキャラクターができあがっていく過程を「接ぎ木のゴドリック」を例に解説されました。キャラクターデザインでは「固定観念の排除」や「感情や情緒の入れ込み」に注意して作成されており、武器の見た目も手触りが想像できるようなものになっていると語られました。
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本作のキャラクターはオープンフィールドの特性上メモリを削減して作成されており、小型キャラクターで2万から5万ポリゴン、最大サイズのキャラクターは20万から30万ポリゴンというサイズ感に。
モデル作成においては「作りやすいようにデザインを曲解しないこと」や「コンセプトアートの印象を損ねないようにすること」などにも注意されており、Zbrushで作成されたモデルからShaderで質感を調整していく過程などがツリーガードやドラゴンを例に紹介されました。
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キャラクターについてのこだわりはシェーダーを使用した表現にも詰め込まれており、魔女ラニの霊体表現やルーサットの水晶表現を実際に調整している様子から、プレイヤーキャラクターの髪の毛の異方向性反射など多数の事例が紹介されました。
モーションの多彩さも『ELDEN RING』の大きな特徴。本作のプレイヤーキャラクターは多彩な武器が使用できますが、モーションキャプチャーを活用しつつも、実際の剣術をそのまま使用すると動きが小さくなるため、予兆やため動作、隙などゲーム要件をアレンジし、かっこよく印象に残る動きが作られました。
敵となるキャラクターのモーションも要件を多彩に取り込みつつ、プレイヤーにどのような印象を持たせるかにも注意して作成されています。また、3dsMAXのbipedを使用したモーションRigの作成については体が伸び縮みする「神肌のふたり」というキャラクターを例に、特殊な動きを実現させるまでの過程が細部に至るまで解説されました。
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「ユーザー体験」に重きを置く
本セミナーのまとめとして小川氏は「フロム・ソフトウェアのグラフィッカーはグラフィックデータの作成にかける時間と同じくらい、プレイヤーのゲーム体験に影響する部分の調整に時間を割いていることが見て取れると思います」と話し、スキルとモチベーションがあれば職種の幅を広げて様々な仕事に参加できることも紹介しました。
フロム・ソフトウェアは新規プロジェクトの立ち上げにより大規模なスタッフ募集を行っております。オンラインでの中途採用セミナーも予定しておりますので、詳しくは採用ページをご覧ください。
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最後には質疑応答の時間が設けられ、小川氏がグラフィックや作品作りに関して事前に寄せられた質問に回答。大ヒット作となった『ELDEN RING』の裏側に迫るメイキングセミナーは大盛況のうちに終了となりました。