初めに、本記事には『ゼノブレイド3』のエンディングを含むネタバレがあります。あらかじめご了承ください。
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『ゼノブレイド3』のメインストーリーは、メビウスが支配するアイオニオンで、主人公ノア達が世界の秘密を解き明かし、メビウスと戦う物語です。ゲームの仕組みとしては、基本的にはメインストーリーを追っていくことでクリアが可能であり、その他のノーマルクエストやヒーロークエスト、サイドストーリーはプレイヤーが好きな時にこなせばよく、網羅しなくても問題はありません。ですから人によっては、メインストーリー以外はあまりやりこまなかったという人もいるかもしれません。
しかし、本作で語られる物語には2つの軸があります。一つは前述した通り世界の秘密、そしてメビウスとの闘争が語られるメインストーリー。そしてもう1つは、アイオニオンに住む人々の物語。主にはメビウスから解放された人々のその後、つまりやってもやらなくても良いメインストーリー以外のクエストです。
今回お話したいのは、主にメインストーリー以外のクエストについてです。やらなくてもクリアできるものではありますが、実はやったかやらないかで物語の持つ意味や深さが大きく変わっていきます。
■火時計から解放されるということは、自分で生きるということ
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一般にRPGにおけるやってもやらなくてもいいサブクエストは、あまり力の入っていない水増し的なものも多くあります。しかし『ゼノブレイド3』のヒーロークエストやノーマルクエスト、サイドストーリーのほとんどは単なる水増しクエストではなく、それぞれの小さな出来事も大きな意味を持っています。
それは前述したとおり、メビウスから解放された人たちのその後です。戦わなければ生きていけなかったコロニーの人々は、ノア達が火時計を破壊することでその呪縛から解放されます。しかし一方でそれは、メビウスの庇護が無くなるということも意味します。
自分達の力で生きなくてはいけませんし、生きる目的も自分で選択する必要があります。そこには、選択と自立の物語があります。ゼットはノアに言いました。「何故 流れに身を委ねぬ」と。解放された人々の物語は、まさに流れに逆らい、自ら歩む姿を描いているのです。
■イモは未来の希望そのものである
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無数にあるクエストですが、その中でもゼオンのヒーロークエスト「変われる理由」は、とても象徴的かもしれません。このクエストは、メビウスから解放されたはいいものの、同時にキャッスルからの補給を失ってしまったコロニー9が生きていくためにどうやって食料を確保するか、というクエストです。畑を作ることでこの問題を解決しようとしていたコロニー9ですが、今まで戦うこと、殺すことしかしてきませんでしたから、作物をうまく育てることができません。なんなら、畑という得体のしれない仕組み自体に懐疑的な人もいます。
そこでノア達は農作に成功しているコロニータウに助言を求めることを提案します。コロニータウといえば戦いを避け、自給自足をしていたコロニーです。しかし、コロニー9はケヴェス、コロニータウはアグヌスに属するコロニー。火時計から解放されたと言っても、ついこの間まで殺しあっていた敵軍を信用できない人もいます。それは当然のことです。尊敬する先輩も、慕ってくれた後輩も、仲の良かった友達も、戦いの中でアグヌスに殺された、そんな悲しい出来事が日常だったのです。しかし、それでも変わらなければいけません。
戦わなければ生きていけなかった、生きるために殺していたそれまでの日々を捨て、武器の代わりに敵の手を取り、殺す代わりに育てること選択をします。試行錯誤を繰り返し、コロニータウから教わって育てた「もちもちイモ」を収穫することに成功しました。自分たちで初めて育てたイモは本当に美味しく、久しぶりにお腹いっぱいになります。
■自ら選び変わることの価値
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このクエストは別のクエストへとつながっていて、コロニー9はもちもちイモの育て方をまた別のコロニーに教えることになります。彼らが育てたイモは単なる食糧ではなく、未来への希望そのものです。そしてイモは他のコロニーへと広がっていき、そこでもまた希望となるのです。
アイオニオンに生きる人たちの選択は様々であり、レウニスの開発をする者、世界を旅する者、戦いを選択し続ける者もいます。しかし大事なことは、ノアがゼットに言っていた通り自分たちで選ぶことなのです。膨大にあるノーマルクエストやヒーロークエストは、コロニーや、あるいはシティーに生きる人々の多様な選択と生き様を描いています。自分たちの意思で、自分たちの力で生きるその第一歩を、その選択の尊さを……。
■あまりに悲しいエンディング
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筆者は本作を約110時間プレイし、ほとんどのクエストをこなしてからクリアしました。そうやって辿りついたエンディングは、あまりに悲しいものでした。エンディングでは、2つの融合した世界を元に戻すために、ノア達は離れ離れになってしまいます。筆者個人の感想ではありますが、これ自体は悲しいとは思いませんでした。なぜなら彼らは自分で選んでいるからです。自らメビウスと戦い、勝ち取り、選んだ結果だからです。ノアとミオは必ず会いに行くと約束しました。彼らなら、必ず約束を果たしてくれるでしょう。そう信じて終わることができます。
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しかし、アイオニオンに生きる他の人たちはどうでしょうか。殺戮兵器として扱われていた過去を越えて人間らしい生活を取り戻そうとしているナギリ達コロニーゼロは、戦いが終わったらゆっくり話をしたいと言ってモニカに告白したシティーのジャンセンは、コロニー9で育てたもちもちイモの意味は……。エンディングは、主人公たちの別れを主として描いていましたが、アイオニオンに住む人たちの新たなる一歩が消えてしまう、あまりに悲しい決断も意味していました。そしてそれは、ノア達とは違い、必ずしもひとりひとりが選んだ結果かといえば、難しいでしょう。
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実際ノアは「進みたい者、留まりたい者―― この世界には いろんな人の想いがあった 俺達にそれを選ぶ権利なんてあるのかな――」と迷っていました。
『ゼノブレイド3』の物語は、メビウスから解放されることで、それぞれが自分の歩みを選択しましたが、皮肉にもメビウスを打倒して世界をあるべき姿に戻すことで、そのすべてがリセットされてしまう終わりを迎えました。しかし、アイオニオンのコロニーに生きる人は、この止まった世界の中でその命が10年しかありません。やはり世界はあるべき姿に戻すしかないのでしょう。
この結末を観た筆者は、これ以上なく悲劇的で、残酷な物語に思えましたが、だからこそアイオニオンに住む人々の生きた姿が心に残りました。そして彼らの歩みは、すべて完全に失われたのではなく、新しい世界へと続いていくと信じたいと思います。
本作はメインストーリーだけでなく、ヒーロークエスト、ノーマルクエスト、サイドストーリーも非常に面白く、そしてやればやるほど物語の深みは増してくるように思います。メインストーリーばかりやってクリアしてしまったという人は、ぜひ他のクエストもプレイしてみてください。
そして、追加コンテンツ第4段で登場する予定の「全く新しいオリジナルストーリー」にも期待したいと思います。ノアやミオ、そしてアイオニオンに生きた人たちのその後が、垣間見れることもあるかもしれませんね。