ゲーム業界人に訊く2022年の振返りと2023年の抱負(前編)【年頭所感】

新年、あけましておめでとうございます!

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ゲーム業界人に訊く2022年の振返りと2023年の抱負(前編)【年頭所感】
ゲーム業界人に訊く2022年の振返りと2023年の抱負(前編)【年頭所感】 全 67 枚 拡大写真

株式会社コナミデジタルエンタテインメント

『桃太郎電鉄 ~昭和 平成 令和も定番!~』シニアプロデューサー
岡村 憲明氏

・2022年に遊んだゲームで最も楽しんだものは?

『ELDEN RING』は皆さん書かれると思うので、『Stray』にします(笑)。

猫が主役のアクションゲームで、「ただ猫のしぐさが可愛い」というのがまずあるのですが、それ以上に、猫をプレイヤーキャラにすると、こういう新鮮なアクションゲームにできるのか、ということに感心した一作でした。「そうそう。猫ってこんなにジャンプするよね」と。人型でここまでジャンプさせると、たとえそれがロボットだったとしてもゲームとしてのリアリティがなくなる。フォトリアルっぽい仕上げをすればするだけ、人型のアクションの限界が見えてくるわけです。それが、猫にすれば、このリアルなルックに対しても、ここまで新鮮に、ちょっと驚くようなジャンプができる。他にも、よくある街の風景にもかかわらず、猫ならでは視点と移動経路が設定された新鮮なレベルデザインなど、いろいろと気づきの多いゲームでした。

・2022年のゲーム業界を、漢字1文字/単語ひとつで表すなら?

『暁闇(ぎょうあん)』。

日の出の前のほの明るいやみのことを表す言葉だそうです。別に「真っ暗闇だ!」とか「斜陽産業だ!」とか感じることはないのですが、そこまで「順風満帆」な印象もない。メタバースにしてもクラウドゲーミングにしてもサブスクにしても色々と革新を匂わせるキーワードはあるものの、現時点ではまだ花開いた印象はないことから、これから先の大いなる希望をこめて、「暁闇」とさせていただきました。

・2023年の抱負をお聞かせください。

今年(2023年)は、『桃鉄 35周年』を迎える重要な年です。昨年(2022年)秋にTGSで発表させていただいた『桃鉄 教育版』も、多くの小中学校で実際に授業に活用いただけそうな予感がしています。

『桃鉄』以外にも、いくつか担当させていただいているシリーズブランドがあるので、一つ一つ丁寧に制作を進めながら、しっかりと昔からファンの皆様に届けていきたいと考えています。

・2023年に注目しているモノやテクノロジー、人

『VR/AR』。今年(2023年)は、PSVR2やMeta Quest 3、出るか出るかと噂されているApple Glassesなど、業界全体で見ると何度目のチャレンジですかね(苦笑)。2023年こそ!真の『VR元年』であってほしい。作りたいゲームはたくさんあって、もう少し我々制作者が楽に手が出せる市場環境になることを本当に心待ちにしています。

人は『古沢良太』さん。今年(2023年)のNHK大河ドラマ『どうする家康』の脚本家さんで、堺雅人さん主演の『リーガルハイ』や、長澤まさみさん主演の『コンフィデンスマンJP』など数々のエンターテイメント性の高い著名なドラマを担当していらっしゃいます。もともとNHK大河ドラマは大好きで、昨年(2022年)の三谷幸喜さん脚本の『鎌倉殿の13人』なんて、リアルタイムの放映とオンデマンド配信で、結局頭から3回繰り返して見たくらい大好きな作品でした。古沢良太さんには、ちまたによく言われる『鎌倉殿ロス』にどれだけ立ち向かっていただけるか、興味津々です。古沢さんなら、大丈夫!

©さくまあきら ©Konami Digital Entertainment
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『SILENT HILL 2』プロデューサー
岡本 基氏

・2022年に遊んだゲームで最も楽しんだものは?

『NEEDY GIRL OVERDOSE』です。ちょっと病んでいる女の子のお世話をしたり、振り回されるのがこんなに楽しいとは……。面倒くさい女の子と付き合う面倒くささを楽しめるのが、プレイヤーが自分から困難や障害に向かっていくビデオゲームならではの魅力なのかもしれません。

・2022年のゲーム業界を、漢字1文字/単語ひとつで表すなら?

シリーズの復活を意味する「復」を挙げます。2022年には『SILENT HILL』シリーズの復活として、ゲームと映画などを含めて5作品を発表させていただきましたが、他社も同様で、フロム・ソフトウェアさんの『アーマード・コア6』が発表されました。長い間ユーザーから期待され続けている作品が発表される動きは、業界としてもまだ続くのではないでしょうか。

・2023年の抱負をお聞かせください。

『SILENT HILL』シリーズを楽しみにしてくださっているファンの皆さんに、新たな続報をお届けできるように、それぞれのタイトルの制作をしっかり進めていきたいと考えています。ポーランド、台湾など、世界各地のチームがそれぞれ全力で開発しているので、お楽しみに。

・2023年に注目しているモノやテクノロジー、人

AIによるコンテンツ生成です。2022年は「Midjourney」「Stable Diffusion」などのAIによる画像生成が一気に話題になりました。その対象もイラストに留まることなく、短いプログラムや、3DCGモデル、ショート動画などへも拡大しつつあります。

こうした動きが少人数の開発チームを後押しする可能性は大きいと思います。数年後にはAIをアシスタントとして使いこなし、自動生成されたコンテンツをディレクションして、より大規模なゲームを作る制作チームが増えているかもしれません。

©Konami Digital Entertainment
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『スーパーボンバーマン R 2』プロデューサー
松尾 達則氏

・2022年に遊んだゲームで最も楽しんだものは?

移動時間中に手軽にできるスマホアプリ全般をよく遊んだと思います。ここ最近はドラクエウォークのような腰を据えてプレイするものや、トゥーンブラストなど、短時間でサクッとプレイできるものまで幅広く遊んでいます。

・2022年のゲーム業界を、漢字1文字/単語ひとつで表すなら?

「活」
ポケモン(アルセウス)から始まりポケモン(SV)で締めるゲーム市場を大きくけん引した”活”躍。
Steam Deck登場による、あらたなポータブル市場の”活”性化。
3年ぶりとなる東京ゲームショウの復”活”。
私事では皆様に新たな『ボンバーマン』を提案する為の”活”動をしっかり行えたと思います。

・2023年の抱負をお聞かせください。

今年は『ボンバーマン』シリーズ40周年というメモリアルイヤーを迎え、これまでとは異なる新たな遊び方に挑戦しています。攻め手と守り手に分かれて戦う新モード「キャッスル」やそのステージをクリエイトする「ステージエディタ」機能。もちろん従来のバトルや、『スーパーボンバーマン R オンライン』で好評だった「バトル64」も搭載しています。これまでのシリーズの集大成といった出来に仕上がっていますので、是非ご期待頂けると幸いです。

・2023年に注目しているモノやテクノロジー、人

PlayStation®5やXbox Series X|Sといった次世代ゲーム機における市場への拡充がどれくらい進むのかを最も注目しています。日本においてはまだなかなか店頭で見ることも少ない状況が続いていますが、そろそろ互換タイトルではなく専用タイトルが増えてくると、ゲームの進化をより強く実感する事が出来るような状況が生まれ、そこからようやく新たなステージが始まるのではないかと感じています。

©Konami Digital Entertainment
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『シャインポスト』プロデューサー
石原 明広氏

・2022年に遊んだゲームで最も楽しんだものは?

『ELDEN RING』ですね。元々オープンワールドが好きなんです。メインストーリーを進めずにも、あちこちフラフラしながら都度目先の目的を自分で見つけ自分のペースで遊べるのが魅力で、オープンワールドタイプのゲームばかりをやっていますが、今までのフロムさんの戦闘やビルドの深みがそのままハイクオリティなオープンワールドとしてきちんと成立していて素晴らしいなと思いました。

街なんて要らないんだという気付きもありましたね(笑)。

中々まとまった自分の時間が取れない中ですので、焦らずちまちまと気長にレベルカンスト迄は遊ばせていただこうと思っています。

・2022年のゲーム業界を、漢字1文字/単語ひとつで表すなら?

「熱」でしょうか。ビッグタイトルもそうですが、インディータイトルなども含め、様々な熱量を感じるタイトルに出会えました。というか、熱がないと気付くことが出来ないなとも思う一年でした。

ゲーム以外にもあらゆるジャンルで、ものすごい量のエンタメが人々の前に転がっている、そしてそれらがどれもこれも美辞麗句を語っていて、かつ品質も高いというとんでもない時代において、皆さんに気づいてもらう為にも、そこにハマってもらう為にも、「熱」が重要だと改めて感じています。

関わる人達の熱を感じるコンテンツしか人に中々届かない。良い品質のものを熱量持って作るという意味だけではなく、届ける手段も含めてあらゆる場所に熱量が必要だなと感じた一年でした。

・2023年の抱負をお聞かせください。

2022年は、長年仕込んできました『シャインポスト』を駱駝さんの小説、スタジオKAIさんのアニメとで展開できた年でした。それも素晴らしい品質で。多くのクリエイターさんに参加していただき、知恵と工夫と根性を注いで様々なものを作り上げていただき、演者さんにも数多くのチャレンジをしていただいて、そういう熱量が品質にしっかり反映されていると思います。

2023年はゲームをお待ちしている方々にも、そしてまだ『シャインポスト』に触れて居ない方にも、ありそうで無かった楽しいアイドル育成体験をお届けできるように只々チーム一同頑張ります!

・2023年に注目しているモノやテクノロジー、人

もう何年もAIには注目しています。AIの技術もさることながら、僕は「使い方」が変わってきたなという部分に興味を持っています。例えば、漫画家の平野耕太さんなどは、ご自身のアシスタントのようにAIを使われていたりして、その取組をSNS上で公開されていますが、非常に理想的なAIとの関わり方だと思いました。AIが人間に置き換わるような論調の話も聞かれますが、僕は、AIが人間の能力を拡張するような、そんな使われ方が一つの理想だと思っています。ゲーム業界は古くからAI(というかアルゴリズムというか)に向き合ってきています。敵と戦う様な場面では、敵キャラクターにある程度の思考を持たせることによって、プレイヤーさんの遊び体験の手助けをAIがしてくれるような使い方なわけです。しかし、これからは逆に制作者側の手助けをAIがしてくれる事もあるのではと思っています。

昨今のAAAタイトルなど、本当に実写と見紛うばかりのクオリティのゲームも登場してきていますが、当然制作費の高騰は業界の大きな課題にもなっています。そんな中で、ゲーム制作に於いても各クリエイターが複数のAIをアシスタント的に使いこなすことで、より高効率にゲーム制作が出来たり、極少人数でゲーム制作のチャレンジができたりと、そんな時代がもう来つつあるなとワクワクしています。

©Konami Digital Entertainment,Straight Edge Inc. ©Konami Digital Entertainment
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シニアプロデューサー (代表作:『遊戯王 マスターデュエル』、『遊戯王 デュエルリンクス』)
片岡 健一氏

・2022年に遊んだゲームで最も楽しんだものは?

『Horizon Forbidden West』(PS5)です。

前作『Horizon Zero Dawn』にハマったこともあり、今作も楽しませてもらいました。

途中、闘技場で夢中になりすぎて本来の目的を忘れてしまい、全然進んでいなかったという状況になっていましたが……(笑)

・2022年のゲーム業界を、漢字1文字/単語ひとつで表すなら?

「凪」です。嵐の前の静けさだったと思っています。

2022年はそれほど大きな変革がありませんでしたが、2023年以降何か大きな嵐(変革)がありそうな気がしており、我々プロデューサーはアンテナの感度を上げていると思います。

・2023年の抱負をお聞かせください。

『遊戯王 マスターデュエル』をリリースするまではとにかく攻めの姿勢で制作・運営を行なってきましたが、リリース後は少し守りに入ってしまったんじゃないかという気がします。

これでは自分らしくないと反省し、2023年は再び攻めの姿勢に切り替えたいと思っています。

そして『遊戯王 マスターデュエル』や『遊戯王 デュエルリンクス』に関しては、まだまだやり残したことがあり、更に新たな要素を追加したいと考えています。

具体的な内容はまだお話しできませんが、さすが「遊戯王」デジタルチームだと思って頂けるような企画を考えています。

・2023年に注目しているモノやテクノロジー、人

自分の子供(中学3年生)です。

まさに今後創りたいと思っているゲームのメインターゲットに近いこともあり、彼の趣味や学校生活・友達との話題に注目しています。

休みの日はよくゲームをしているためリビングを占領されていますが、ボイスチャットを利用して遊んでいるので友達の声まで筒抜けです(笑)。

その会話も私からすれば非常に参考になっており、本人には言えませんが実はこれまでも彼の行動からヒントを得た企画(仕様)もあったりします。

©スタジオ・ダイス/集英社・テレビ東京・KONAMI ©Konami Digital Entertainment
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※文中の誤字を訂正しました。コメントでのご指摘ありがとうございます。

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《高村 響》

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