『薔薇と椿』は“おビンタ”だけのゲームじゃない! 華族と庶民の戦いを描く「昼ドラ」感がたまらない─さあ始めよう、おビンタの嵐

“おビンタ”が注目されがちな『薔薇と椿』ですが、その物語も実に魅力的。ビンタの影に隠された素晴らしゐ世界も、ぜひご覧ください。

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『薔薇と椿』は“おビンタ”だけのゲームじゃない! 華族と庶民の戦いを描く「昼ドラ」感がたまらない─さあ始めよう、おビンタの嵐
『薔薇と椿』は“おビンタ”だけのゲームじゃない! 華族と庶民の戦いを描く「昼ドラ」感がたまらない─さあ始めよう、おビンタの嵐 全 22 枚 拡大写真

■華族を相手に“おビンタ”で成り上がる! 昼ドラ的展開と玲子の台詞が冴えわたる

“おビンタ”による玲子の下剋上。それは、ただ暴力で相手を従えているように見えるかもしれませんが、実のところ“おビンタ”でダメージを与えるのは、肉体よりもその精神。相手の誇りや意志、品格といった「心」を折る行為なのだと思われます。(顔が変形するほど肉体面もダメージを受けていますが!)

そんな「女たちの戦い」は、椿小路家の次女・沙織との対決から始まります。彼女は登場早々、玲子の目つきを揶揄し、「何よその目は?」「所詮は下民の女ね!」と、分かりやすいほどの罵詈雑言。それに対する玲子は、堂々と「私は椿小路家長男の妻」「この家は私が継ぐのです」と宣言し、「庶民の女は打たれ強くてよ!」と小気味よく言い放ちます。

初戦から濃密なやりとりですが、その勢いは先に進むほど濃密さを増していきます。2人目の対戦相手である長女・静香は、「あはれと思ふからこそ椿小路家に置いてあげてゐる恩をお忘れかしら?」(原文ママ)と、絵に描いたような上から目線。どストライクで直球ストレートな、昼ドラ台詞です。

もちろん、そんな圧力に屈する玲子ではありません。長男の妻である自分に相続権があると主張するものの、静香も「この家を継ぐのは長女の私」と対抗し、「下品な女は出て行きなさい!」と言い放ちます。次女発言の「下民」をさらに下回る「下品な女」へと繋げた、見事な昼ドラワードコンボです。

こうして、椿小路家の娘たちを“おビンタ”で下していく玲子ですが、椿小路家の一族だけが敵ではありません。長年仕えてきた、家政婦の三田も訳あって立ちはだかります。

ちなみに三田は、女性ながら体格に恵まれており、繰り出す“おビンタ”はむしろ掌底の如く。この辺りから、バトルは徐々にビンタの枠を超え始めていきます……が、いずれもあくまで“おビンタ”の範囲。華族の戦いに、許容はあってもルール違反はありません。

また“おビンタ”バトルは、決して荒々しいだけにあらず。沙織と静香の母親である華江とのバトルでは、こちらの“おビンタ”がヒットすると、目を★にして衝撃を受ける華江の姿が見られます。華族らしく、歴史を感じさせる愛らしい表現(具体的には昭和の漫画テイスト)は、品の高さの表れでしょうか。

ちなみに華江は敗北描写も美しく、少女漫画的なビジュアルで散っていきます。また敗北直後の台詞も「これがあなたの痛みなのですね」と、玲子が受けた仕打ちと“おビンタ”を重ね合わせた見事な言い回し。さすが椿小路家の奥様です。

ですが、華江を倒しても玲子の戦いは終わらず、“おビンタ”による下剋上は最終局面へと突入します。ネタバレ含む記事とはいえ、物語の終盤を語るのはプレイする楽しみを奪う行為。玲子が迎える最大の難関とその結末は、ぜひプレイしてお確かめください。



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《臥待 弦》

楽する為に努力する雑食系ライター 臥待 弦

世間のブームとズレた時間差でファミコンにハマり、主だった家庭用ゲーム機を遊び続けてきたフリーライター。ゲームブックやTRPGなどの沼にもどっぷり浸かった。ゲームのシナリオや漫画原作などの文字書き仕事を経て、今はゲーム記事の執筆に邁進中。「隠れた名作を、隠れていない名作に」が、ゲームライターとしての目標。隙あらば、あまり知られていない作品にスポットを当てたがる。仕事は幅広く募集中。

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