『薔薇と椿』は“おビンタ”だけのゲームじゃない! 華族と庶民の戦いを描く「昼ドラ」感がたまらない─さあ始めよう、おビンタの嵐

“おビンタ”が注目されがちな『薔薇と椿』ですが、その物語も実に魅力的。ビンタの影に隠された素晴らしゐ世界も、ぜひご覧ください。

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『薔薇と椿』は“おビンタ”だけのゲームじゃない! 華族と庶民の戦いを描く「昼ドラ」感がたまらない─さあ始めよう、おビンタの嵐
『薔薇と椿』は“おビンタ”だけのゲームじゃない! 華族と庶民の戦いを描く「昼ドラ」感がたまらない─さあ始めよう、おビンタの嵐 全 22 枚 拡大写真

■庶民の下剋上だけでは終わらない! 華族による華麗な復讐も、また蜜の味

これで、『薔薇と椿』の物語は完結……と思うのは早計です。玲子は本作における中心人物ですが、常に主人公の座にいるわけではありません。彼女の下剋上は、あくまで最初のシナリオ「伝説の薔薇の嫁」に限った話。このシナリオをクリアすると、沙織を主役に据えた「復讐の白き椿」が開放されます。

玲子に負けてはや1年。屈辱にまみれた沙織は、未だに玲子を「下民の女」呼ばわりし、椿小路家の全てを奪い返す新たな“おビンタ”バトルに挑む姿が、「復讐の白き椿」で描かれます。

立場が逆転し、敗北にまみれた華族が「下民の女」に立ち向かう。それは「シーズン2」とも言うべき展開で、これもまた実に昼ドラ的です。しかも、椿小路家の女たちはいずれも、新たな奥様となった玲子にかしずいており、かつての味方が敵となって立ちはだかります。こうした展開にシビれる方も多いことでしょう。

姉の静香に始まり、家政婦の三田、三田の娘である双子・右子と左子、従姉妹の春日向日葵、そして最終決戦の玲子と、沙織による下剋上も至難の道を極めます。

ちなみに右子と左子は同時に戦うので、絵面的には2対1。どちらが“おビンタ”を繰り出すか分からず、ちょっとズルい印象も受けます。ですが、こちらの“おビンタ”1発でふたりとも痛がるので、やはり“おビンタ”は至極公平。立場も人数も全て平等にする、素晴らしい決闘方法です。

また従姉妹の春日向日葵は、表現にやや悩みますが、あけすけに言えば……『ストリートファイター』シリーズに登場する「ブランカ」にも通じるような見た目。人間の枠から外れかけているようにも見えますが、“おビンタ”は人種の差も問いません。“おビンタ”は全てを解決します。

玲子との対決についても伏せておきますが、庶民の女による反攻を描いた後に、華族による復讐を綴るなど、見る者の目を離させない構成も心憎い『薔薇と椿』。キレの良い台詞の応酬で紡がれる華族の戦いは、どこまでも昼ドラ的な刺激に満ちていました。

──と、ここで終れたらまとまりも良かったのですが、『薔薇と椿』はそんなこじんまりとした作品ではありません。「伝説の薔薇の嫁」が終わると、いきなり「ワールドユース編」が始まります。

華族とまったく結びつかない“ワールドユース”という言葉に、大変驚かれたことと思います。ご安心ください。本作を遊んだほとんどの方も、同じように感じたことでしょう。もちろん筆者も同様です。

突然、世界を相手に“おビンタ”バトルを繰り広げる「ワールドユース編」。さらに、椿小路家の長女・静香が主役を務める「静かなる椿の日常」と、『薔薇と椿』で紡がれる物語は進むごとに奥深さを増していきます。

“おビンタ”というセンセーショナルな手段に目を奪われがちですが、そうした対決を軸に描く数々の物語も、『薔薇と椿』の魅力そのもの。譲れぬ女たちの戦いの模様は、直接体験する価値アリです。

てのひらのシビレは たけきおんなのあかし」。その証を求め、おJoy-Conを振るう日々に、その身を投じてみてはいかがでしょうか。椿小路家はいつでも、あなたの下剋上をお待ちしてゐます。



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《臥待 弦》

楽する為に努力する雑食系ライター 臥待 弦

世間のブームとズレた時間差でファミコンにハマり、主だった家庭用ゲーム機を遊び続けてきたフリーライター。ゲームブックやTRPGなどの沼にもどっぷり浸かった。ゲームのシナリオや漫画原作などの文字書き仕事を経て、今はゲーム記事の執筆に邁進中。「隠れた名作を、隠れていない名作に」が、ゲームライターとしての目標。隙あらば、あまり知られていない作品にスポットを当てたがる。仕事は幅広く募集中。

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