『薔薇と椿』は“おビンタ”だけのゲームじゃない! 華族と庶民の戦いを描く「昼ドラ」感がたまらない─さあ始めよう、おビンタの嵐

“おビンタ”が注目されがちな『薔薇と椿』ですが、その物語も実に魅力的。ビンタの影に隠された素晴らしゐ世界も、ぜひご覧ください。

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『薔薇と椿』は“おビンタ”だけのゲームじゃない! 華族と庶民の戦いを描く「昼ドラ」感がたまらない─さあ始めよう、おビンタの嵐
『薔薇と椿』は“おビンタ”だけのゲームじゃない! 華族と庶民の戦いを描く「昼ドラ」感がたまらない─さあ始めよう、おビンタの嵐 全 22 枚 拡大写真

華族は“おビンタ”で戦う──何を言っているのか一瞬理解できず、しかしこれ以上の説明はいらないほどパワフルなアクションゲーム『薔薇と椿 ~お豪華絢爛版~』(以下、薔薇と椿)がニンテンドースイッチ向けに発売され、一部ユーザーの間で熱のこもった盛り上がりを見せました。

実際に遊んだ一般ユーザーの評判はもちろんのこと、VTuberによるゲーム実況もたびたび行われ、“おビンタ”で繰り広げるバトルの模様がSNS界隈に大きく広がります。

非常に力強く、そしてセンシティブな“おビンタ”による対決。問答無用のやりとりに多くのゲームファンが注目しましたが、特に話題になりやすいのは、一見しただけでも分かる“おビンタ”の要素。確かにそれも大きな特徴ですが、しかし“おビンタ”だけが本作の魅力ではありません。

もうひとつ注目して欲しいのは、高貴な家柄である華族「椿小路家」を舞台とした、誇りと下剋上がぶつかり合う人間ドラマ──そう、「昼ドラ」を彷彿とさせるような女同士の戦いと、その顛末です。一周回って突き抜けている世界観の完成度、そして徹底具合が素晴らしく、見逃すには実に惜しいポイントです。

そこで今回は、本作を一通りクリアした筆者が、『薔薇と椿』で待つ魅惑的な物語を紹介します。“おビンタ”だけで終わらない本作の魅力に触れ、ぜひ本作のプレイをご検討ください。

なお、取り扱う内容の関係上、物語面についてのネタバレを含みます。あらかじめご了承ください。

■『薔薇と椿』プレイの前にまず見たい、世界観を雄弁に描くOP映像

早速、その物語の魅力について迫ります……と言いたいところですが、まずは世界観をこれでもかと表現したオープニングから紹介します。

『薔薇と椿』は、椿小路家の子息・俊介と結ばれ、華族に名を連ねた女性「玲子」の反攻をきっかけに、物語が動き始めます。俊介の死を境に“下民の女”と蔑まれた不当な扱いに立ち上がり、華族と庶民の誇りをかけた“おビンタ”バトルが始まるのです。

なぜ“おビンタ”で決着をつけるのかは、「華族なので」という一言に尽きます。作中の説明によれば、「おビンタは華族の女性がお相手を許せない時にだけ許される、由緒正しき競技」とのこと。それ以上の詮索は、華族らしからぬ振る舞いに違いありません。

このように強烈な世界観を持つ『薔薇と椿』ですが、椿小路家との確執・おビンタによる決着・女たちのプライドといった重要なポイントを、わずか1分強のオープニング映像と主題歌だけで雄弁に語ってくれます。

まず映像の冒頭でいきなり、「つぼみにくるまれたままの やわらかな おさつい」と、なかなかのフレーズが放たれます。「やわらかな おさつい」、いつか使ってみたいと思わせる言い回しです。

ばらのそので きずついても ひけない きせつがある」は、まさに今の玲子そのもの。“おビンタ”で(かなり物理的に)傷つく目に遭うとしても、一人の人間としての誇りのため、そして俊介と過ごした居場所を守るため、立ち上がる。本作の展開を的確に示している一文です。

そんな玲子の振る舞いを、椿小路家の女傑たちが素直に受け入れるはずもありません。ぶつかり合うしかないこの状況を、「ことばじゃ もうおさまらない はじめましょ おビンタのあらし」と表現。「おビンタのあらし」で厳しい戦いを予感させる一方で、お互いに譲らぬ意気込みがこもった「はじめましょ」という言葉が、非常に力強さを感じさせます。

そして飛び出す「てのひらのシビレは たけきおんなのあかし」。筆者もそれなりの年月を生きてきましたが、ビンタによる攻撃をこれほど気高く綴った表現を見たのは、生まれて初めてかもしれません。

主題歌の一部だけを見ても、優れた言葉のチョイスとテキストセンスの良さが光ります。本編の物語も、いい意味で始終この調子なので、注目して欲しいと願う気持ちもお分かりいただけることでしょう。

ちなみにオープニング映像は、本作を開発した「NIGORO」の公式YouTubeチャンネルで公開中なので、興味が沸いた方は一度ご覧になってください。



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《臥待 弦》

楽する為に努力する雑食系ライター 臥待 弦

世間のブームとズレた時間差でファミコンにハマり、主だった家庭用ゲーム機を遊び続けてきたフリーライター。ゲームブックやTRPGなどの沼にもどっぷり浸かった。ゲームのシナリオや漫画原作などの文字書き仕事を経て、今はゲーム記事の執筆に邁進中。「隠れた名作を、隠れていない名作に」が、ゲームライターとしての目標。隙あらば、あまり知られていない作品にスポットを当てたがる。仕事は幅広く募集中。

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