『聖剣伝説 VISIONS of MANA』に覚えた“違和感”から見えた「異世界ファンタジー」とは─美しい情景にある相違と、そこから生まれる興味【プレイレポ】

『聖剣伝説 VISIONS of MANA』の魅力や本質に向き合い、筆者なりの印象と言葉でまとめてみました。これも視点のひとつだと感じてもらえれば幸いです。

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『聖剣伝説 VISIONS of MANA』に覚えた“違和感”から見えた「異世界ファンタジー」とは─美しい情景にある相違と、そこから生まれる興味【プレイレポ】
『聖剣伝説 VISIONS of MANA』に覚えた“違和感”から見えた「異世界ファンタジー」とは─美しい情景にある相違と、そこから生まれる興味【プレイレポ】 全 18 枚 拡大写真

■この“異世界”は美しく、思わず見とれる……!

『聖剣伝説 VISIONS of MANA』をプレイして特に印象に残った魅力といえば、個人的には「異世界ファンタジー」という点に集約していました。これには2つの理由がありますが、誰もが感じたであろうビジュアル表現がそのひとつです。

『聖剣伝説』は全般的に、温かみのある色味と本作ならではのデザインで、それぞれの世界を雄弁に描いていました。その点は『聖剣伝説 VISIONS of MANA』も同様で、そしてシリーズ中でもかなりパワフルな魅力へと昇華させています。

火や水、風に木と、それぞれの属性に合わせた街並みやフィールドには、現実世界には見られない植物などもふんだんに盛り込み、「現実世界とは全く異なるファンタジー感」を視覚的に分かりやすく描写しています。

本作はオープンワールドではありませんが、広々と動き回れる広域のフィールドも多く、未知の土地をあちこちうろつく楽しさも味わえます。同時に、途方もないような広さではないため、ほどよいサイズ感といえるかもしれません。

ちょっとした高台に登り、そこから見える光景の大半に行けるという実感は、冒険心をかき立ててくれる絶妙なスパイスとなって心に染みます。また、フィールドに高低差があるので、移動にも起伏と緩急を感じられ、個人的には「走ってるだけでもなんだか楽しい」という手ごたえを感じました。

もちろん、ずっと走っているだけではいずれ飽きますが、土地ごとに特色が変わる豊かな背景を眺める楽しさや、宝箱やネームドモンスターの発見といった出会いが適時織り込まれるため、マップを探索し尽くす前に飽きるということはありませんでした。

■本作の“神”が宿る部分は、核か細部か?

世界観の表現自体は、シンプルで分かりやすい傾向でまとまっています。火の地域なら火山があり、年中風が吹く谷、水球が浮かぶ都市など、いずれもストレートな表現です。それが分かりやすいゆえに、逆に奥深さが削がれたように感じる人がいるかもしれません。

しかし『聖剣伝説』シリーズは、他の作品ほど対象年齢を限定しているイメージはなく、幅広いユーザー層に向けているとすれば設定を複雑にするのも考えもの。それよりも、ひとつの異世界をビジュアルでこれだけ豊かに表現している点を、まずは素直に褒めたいばかりです。

もちろん、全てにおいて完璧かと聞かれれば、気になる点もそれなりに存在します。例えばNPCの多くは使い回しなので、土地柄に合っていない格好を見かけることもありました。また、やむを得ない部分ですが、場所によってはフィールドに透明な壁が置かれており、没入感が一瞬切れてしまったことも。

「神は細部に宿る」という言葉に従うならば、「細かい部分にも力を入れるべきだ」と指摘することはできます。そうした点を疎かにし、評価を落としたゲーム作品もあります。しかし、ゲームとしてまず作り込むべきなのは、当然ですが「ゲーム」の部分です。

それはシステム(本作ならばアクションRPGの部分)でもあり、操作性やUIの快適さ、臨場感に繋がる見た目・演出・効果音、場面を盛り上げる音楽など、多岐にわたります。「細部」にこだわる順番は、そうした部分のクオリティを上げた後の話でしょう。

3Dフィールドで葉っぱ1枚までリアルに描いている作品があれば、「細かいところまで力を入れてるんだなぁ……」と感心しますが、葉っぱの美しさを目にするのは、プレイ時間の1%にも満たないはず。通常のカメラ視点で画面全体を見た時、葉っぱもそれなりに綺麗なら、まずはそれで十分でしょう。

NPCの使い回しは、極力抑えた方がいいのは当然です。しかし、もっと大きな要素をおざなりにしてまで取り組む要素でもありません。本作の場合、アクション要素、デザインとビジュアル、音楽にUIと、いずれも十分以上に水準を超えていました。そのため、ゲームの核となる部分に時間を割いた結果、NPCが使い回しになったとしても、妥当な判断だったと筆者は受けとめています。

無論、細部が気になる人はいるでしょうし、その判断も間違いではありません。正しく伝えたいのは、「本作は核となる部分を重視して作られており、本質をないがしろにして細部にこだわるような作品ではなかった」ということです。

開発費や時間、人手といった限りのあるリソースを、『聖剣伝説』らしさに費やして作られた作品。それが、『聖剣伝説 VISIONS of MANA』に対する筆者の印象です。



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《臥待 弦》

楽する為に努力する雑食系ライター 臥待 弦

世間のブームとズレた時間差でファミコンにハマり、主だった家庭用ゲーム機を遊び続けてきたフリーライター。ゲームブックやTRPGなどの沼にもどっぷり浸かった。ゲームのシナリオや漫画原作などの文字書き仕事を経て、今はゲーム記事の執筆に邁進中。「隠れた名作を、隠れていない名作に」が、ゲームライターとしての目標。隙あらば、あまり知られていない作品にスポットを当てたがる。仕事は幅広く募集中。

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