『ToHeart』の“青春”は、いつも驚きと共に─恋愛ゲーム史の転換期となり、令和にも新たな衝撃をもたらした名作ADVの歩みとは

プレイヤーたちの青春の追体験を味わわせてくれた『ToHeart』は、常に想像を超える展開を続け、驚きをもたらしました。

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『ToHeart』の“青春”は、いつも驚きと共に─恋愛ゲーム史の転換期となり、令和にも新たな衝撃をもたらした名作ADVの歩みとは
『ToHeart』の“青春”は、いつも驚きと共に─恋愛ゲーム史の転換期となり、令和にも新たな衝撃をもたらした名作ADVの歩みとは 全 8 枚 拡大写真

■新生『ToHeart』はまさかの3D化! なのに価格面でも驚きが

PS版の発売に合わせて第1期アニメや、完全オリジナルの物語を描いた第2期アニメ、続編となる『ToHeart2』(ただし登場キャラは一新)のリリースなど、『ToHeart』から始まった展開はめまぐるしく続きます。

こうした発展も十分驚くに値するものばかりですが、やはりPC版『To Heart』がもたらした衝撃や、PS版『ToHeart』の開発姿勢は、頭一つ抜けた驚きがありました。

ビジュアルノベルシリーズの路線を大きく変えて予想を裏切り、しかし王道の恋愛ADVとして期待を裏切らない完成度でプレイヤーを驚かせたPC版『To Heart』。その成功が礎のひとつとなって恋愛ゲームが再び活性化し、新たな作品が生まれる道を示しました。

そしてPS版『ToHeart』では、移植の枠に収まらないほどのシナリオ改修を行い、“もうひとつの『ToHeart』”と称しても遜色ないほどの物語を作り出し、ここでもプレイヤーたちの度肝を抜きます。

こうして2度にわたってプレイヤーを驚かせた『ToHeart』は、しかし令和7年に3度目の衝撃を与えます。それこそが、先日発売された新生『ToHeart』です。

PC版の発売から数え、実に28年もの時を経て再登場した──ことは確かに偉業ながら、近年は昭和・平成初期の作品が現行機向けにリリースされることも多く、嬉しいのは、間違いないものの、これだけで驚愕と呼ぶかはどうかは意見が分かれるところでしょう。

しかし、新生『ToHeart』がもたらした驚きは、ビジュアルの変化にこそありました。PC版、PS版ともに2Dで描かれていた世界が、新生『ToHeart』では3Dモデルに一新。あかりや芹香先輩、マルチたちが、滑らかな動きとそれに伴い表情の変化で、その想いや感情を雄弁に表現しているのです。

この見た目の変化に驚く人もいれば、前の方が良かったと感じる人もいることでしょう。ビジュアルの好みは千差万別なので一概には言えませんが、令和7年に登場する恋愛ADVとして、ひとつの選択肢として十分あり得るのも確か。また、『ToHeart』未経験の若年層を取り込む上でも、有効な変化と考えることもできます。

『ToHeart』はかつて、PS版でシナリオが大きく改修されました。そして新生『ToHeart』では、3Dモデルの採用でビジュアルを一新。いつの時代も、“単なる移植”で終わらせない前のめりな姿勢は、平成時代も今も変わっていません。その開発姿勢こそが、最も驚くべき点とも言えそうです。

また、3Dモデルを採用し、見た目が大きく変わった新生『ToHeart』の価格は、ダウンロード版が3,080円(税込)、スイッチ向けのパッケージ版でも4,378円(税込)と、かなり抑えめです。

ただの移植なら分かりますが、3Dモデル化に加え、当時のボイスに加えて新キャストによる新録も収録。こうした新要素が盛り込まれているのに、ダウンロード版なら3,000円ちょっとで済んでしまうのも心底驚かされます。


作品が動くたび、驚きが伴った『ToHeart』。それは、今回リリースされた新生『ToHeart』も例外ではなく、しかも驚かされたのは見た目や価格だけではありませんでした。

新生『ToHeart』では、親友の「佐藤雅史」や、マルチの姉妹機にあたる「HMX-13“セリオ”」のストーリーが楽しめるDLCも登場。これまでの『ToHeart』にはなかった新たな物語が訪れ、発売後もプレイヤーを驚かせました。

状況に応じて変化する『ToHeart』に驚かされながらも、変わらない前のめりな姿勢に信頼を寄せ続ける。作品とプレイヤーの関係が、30年もの月日を経てもなお健在であることが、最も驚くべきことなのかもしれません。


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《臥待 弦》

楽する為に努力する雑食系ライター 臥待 弦

世間のブームとズレた時間差でファミコンにハマり、主だった家庭用ゲーム機を遊び続けてきたフリーライター。ゲームブックやTRPGなどの沼にもどっぷり浸かった。ゲームのシナリオや漫画原作などの文字書き仕事を経て、今はゲーム記事の執筆に邁進中。「隠れた名作を、隠れていない名作に」が、ゲームライターとしての目標。隙あらば、あまり知られていない作品にスポットを当てたがる。仕事は幅広く募集中。

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