全国各地に店舗を構え、カルチャーを牽引する商業施設・PARCO。その運営会社であるパルコが、「PARCO GAMES」としてゲーム事業にも進出しました。
ブランドのキャッチコピーは、「パルコは、ゲームのために、 何ができるか。」――ではずばり、何ができるのか? そして、現在発表している『南極計画』『Constance』『The Berlin Apartment』をパブリッシングする理由について、ゲーム事業開発部 部長の西澤優一氏に訊きました。
※PARCO GAMESはフロンティアワークスとの共同開発アナログゲーム『悪意に染まったプレゼント』も販売しています。

PARCO GAMESはゲームになにをもたらすか?
――改めて、パルコがゲームパブリッシング事業に進出する理由を訊かせてください。
西澤:パルコは商業施設を運営する会社ですが、歴史的に演劇や音楽などいろいろなエンタメ系の事業もあわせて行ってきたという側面があります。そして昨今、ゲームというカルチャーは、日本でも世界でも非常に魅力があって、勢いがある立派なものになってきています。
そういった中、クリエイターさんたちと面白いものを出してきた我々としては、これまでの経験やノウハウ、向き合い方を応用してゲームの分野にも活かせるのではないかと。クリエイターさんと一緒にひとつの作品を創り上げて魅力を広げたり、世界中に届けたりといったお力になれるのではないかというところが出発点となっています。
――『南極計画』『Constance』『The Berlin Apartment』の3タイトルは、どのような理由で選定したのでしょうか。
西澤:我々が扱うタイトルについては「どこが魅力なのか」をメンバーの間でもよく議論しています。そのなかで一番大事にしているのは“物語性”ですね。ここで言う物語性は、ゲームそのもののストーリーや雰囲気はもちろん、クリエイターがなぜその作品を作ろうとしたのか、どんな背景や経験から着想を得ているのか、といった部分まで含んでいます。

そうした“物語”に共感できるかどうか――そこをクリエイターと我々の間でしっかり目線を合わせられることが重要だと思っていて。そういう基準を大切にして選んだ結果、今回はこの3タイトルを「素晴らしい作品」として紹介させていただいています。
――では国を問わず、“物語性”を重視していくと。
西澤:それだけではなく他にもいくつかチェックポイントがあります。そのひとつは、我々自身が実際にデモプレイをして「動く状態」で作品を触るということです。そこで感じた良さや魅力を共有するのはもちろん、一方で「ここをアップデートすればさらに魅力が増すかもしれない」というフィードバックもお伝えするようにしています。
これはある意味で開発支援にもつながる部分で、作品の品質や完成度を高めていくうえで欠かせないディスカッションだと思っています。そうしたやり取りを通じて、クリエイターと我々の間で「一緒に作品をもっと良くしていこう」という気持ちのリンクが生まれる。そこもすごく大事な要素だと考えていますね。
――開発者の方々とはどのようにつながるのでしょうか。
西澤:例えば、『南極計画』のRexLaboさんは我々が魅力を感じてアプローチさせていただきました。ちょうどパブリッシャーを探されていたので、パブリッシング事業立ち上げを検討していた我々とタイミングが合致して、今後の展望を含めて良いお話ができました。
『Constance』『The Berlin Apartment』のBlue Backpackさんは、東京ゲームショウ2024が出会いの場でした。ブースにお邪魔したうちの担当が素晴らしいと惚れ込んだんです。ちょうどアジア圏でのパブリッシャーを探している時期だったので、我々が担当させていただくことになりました。

――パブリッシャーとしての目標はありますか。PARCO GAMESだからこそできることは何だと考えますか。
西澤:現時点で明確な数値目標を掲げているわけではありません。今回こうして3タイトルを発表し、年内ローンチを目指していますが、実際にリリースしてみて初めて見えてくるものもあると思います。そのうえで改めて具体的な指標が出てくるかもしれません。
今の段階で我々が大事にしているのは、タイトルそれぞれの魅力をどう広げていけるか、そしてゲームが持つ価値をどう高めていけるかという部分です。たとえば「こういうアウトプットの形もあるんだ」と感じてもらえるような取り組みを複線的に展開していきます。
PARCO GAMESならではというと、具体的には、ポップアップや展覧会といったイベント領域です。パブリッシングやマーケティングに加えて、オフラインイベントやグッズのマーチャンダイズといった要素も提供し、ユーザーにアピールする機会を継続的に作っていける仕組みを目指しています。
これまでもゲーム以外のカルチャーと接点を持つような取り組みをしてきていて、そのノウハウは我々の中に蓄積されています。ですので、そこを活かしてゲームタイトルの展開をさらに広げていけるのではないかと考えています。
また、グッズのマーチャンダイズについても、こちらから「こういう商品が良いのでは」という提案から実際の製作まで一貫して取り組んでいます。我々から新しい提案メニューをお出しすることもできますし、逆にクリエイターやパートナーの方々からの「こうしたい」という要望に対して一緒に議論しながら、新たな形を見つけていくことも可能です。
そうした部分を今後さらに強みとして打ち出していければ、他社さんとの差別化にもつながると考えています。新しく興味を持ってくれる方を増やし、この3タイトルの面白さを世界中の幅広いプレイヤーに届けるということを今の目標として強く意識しています。
――では、PARCOに行ったらこの3タイトルのグッズが販売されていたりイベントが開かれていたりする……なんてこともありえるわけですね。
西澤:はい。服を買いに来たお客さんがついでにお昼ご飯も食べて、たまたまPARCO GAMESのコーナーを見かけて立ち寄る……というこれまでにない接点もできると思うので、これはひとつの武器になると思います。
――今後の展望を教えて下さい。4本目、5本目……と計画している最中でしょうか。
西澤:はい。今回の3タイトルはあくまで第1弾であり、今後につながるラインナップも視野に入れています。
そのために、これからも多くのクリエイターの方々と直接お会いして対話を重ね、目指すビジョンや大切にしている感覚が本当に重なるのかを丁寧に確かめていきたいですね。そうした“目線合わせ”ができた出会いを、次のタイトルへと結びつけていくつもりです。新しい作品との出会いにはとてもワクワクしていますし、こちらからの積極的なアプローチも続けていきます。

――最後に、インディーゲームファンに向けてメッセージをお願いします。
西澤:PARCO GAMESで扱うタイトルはそれぞれジャンルや世界観が異なりますが、不思議と共通して流れている思いがあると感じています。僕たちとしては、それをぜひ見つけてもらえると嬉しいですし、こちらもそれが伝わるようなアウトプットを積極的にしていきたいと思っています。
その根幹にあるのが、レーベルのコンセプトでもある「パルコは、ゲームのために、何ができるか」という言葉です。このメッセージには、ゲームとの接点を広げ、魅力を拡張し、より多くの人に届けたい、ゲームをより良くしていきたいという思いを込めています。そうした雰囲気をPARCO GAMES全体としても醸成していき、将来的にはレーベルの特色としてはっきりと示せる存在になりたいと考えています。
――ありがとうございました。