
VTuberの周年記念や生誕祭といえば、3Dで歌って踊るライブステージ配信が定番です。しかも各個人で毎回趣向を凝らすため、これまで個性あふれる3Dライブが数多く実施されてきました。
ホロライブ5期生「雪花ラミィ」さんの今年の生誕祭のテーマは「3Dヒーローショー」。特撮ヒーローのヒーローショーをイメージしたステージを設置し、ラミィさんが執筆した脚本のもと、ホロライブの先輩や後輩とともに「理想のヒーロー像を探す」という内容で劇と歌を披露しました。
ヒーローになりたいと思ったラミィさんが、「仮面ライダー(1971年)」「キン肉マン(1983年)」といった過去の名作ヒーローソングを通じてどのようなヒーロー像に辿り着いたのか?
そこで本稿ではラミィさんの3Dヒーローショーを振り返りつつ、楽曲カバーしたヒーロー作品の良さ、そしてこの機会に振り返りたい数々のヒーロー作品や、埋もれがちな女性ヒーロー作品について触れたいと思います。
◆昭和な映像が光っていた「仮面ライダー」

メディアミックス企画「魔法少女ホロウィッチ!」に新加入するなど、2025年も多方面で活躍した雪花ラミィさん。生誕祭に合わせて用意した新オリジナル曲「無限☆本気だサバイバー!」では念願のフルアニメーションMVを制作し、「生誕3DLIVE『ホロレンジャー』」(以下、3Dヒーローショー)内で公開しファンを歓喜させました。
「魔法少女ホロウィッチ!」や新オリジナル曲がヒーローをイメージしたものだったせいか、2025年11月15日(土)に実施された生誕ライブはヒーローショーをイメージした構成に。脚本もラミィさん自身が手がけ、なりたいと思ったヒーローの「理想のヒーロー像」を探すために過去の名曲ヒーローソングを年代順に追っていく内容になっていました。

<雪花ラミィ生誕3DLIVE「ホロレンジャー」概要>
【出演】※敬称略
戌神ころね、ラプラス・ダークネス、博衣こより、風真いろは、大空スバル、白銀ノエル、白上フブキ、さくらみこ、宝鐘マリン、天音かなた、姫森ルーナ、桃鈴ねね、獅白ぼたん、尾丸ポルカ
【セットリスト】
・レッツゴー!! ライダーキック(「仮面ライダー」より/1971年)※オープニングアクト
・ガッチャマンの歌(「科学忍者隊ガッチャマン」より/1972年)
・キン肉マンGo Fight!(「キン肉マン」より/1983年)
・微かな夕陽(「魔法少女ホロウィッチ!」より/2025年)
・魔法戦隊マジレンジャー(「魔法戦隊マジレンジャー」より/2005年)
・DANZEN! ふたりはプリキュア(「ふたりはプリキュア」より/2004年)
・正解はいらない(「戦隊大失格」より/2024年)
・キズナ(ハート)スペシャリティ(「デリシャスパーティ(ハート)プリキュア」より/2022年)
・無限☆本気だサバイバー!(雪花ラミィ新オリジナル曲)
3Dヒーローショーで先陣を切ったのはラミィさんによる「レッツゴー!! ライダーキック」。1971年に放送された「仮面ライダー」の主題歌で、4:3の画面比や劣化したアナログ映像を再現し、まさに「仮面ライダー」のオープニングを見ているかのような雰囲気です。


このあたりの再現度やオリジナル映像へのリスペクトはまさにホロライブの3Dライブの真骨頂。過去にも宝鐘マリンさんの企画である昭和歌謡祭でレトロな画面作りにチャレンジしていましたが、遊び心もそれを表現する技術力も高く、オープニングから楽しさ全開です。
さてセットリスト1曲目と2曲目は、1972年放送の「科学忍者隊ガッチャマン」と、1983年放送の「キン肉マン」の主題歌です。
「科学忍者隊ガッチャマン」を担当したゲストは、戌神ころねさん、ラプラス・ダークネスさん、博衣こよりさん、風真いろはさんの4名。バックスクリーンには飛翔するガッチャマンを想起させるシルエット、振り付けはガッチャマンのモチーフである鳥をイメージしたものを取り入れ、ラミィさんを含む計5名のフォーメーションで魅せます。
一方、「キン肉マン」を担当した大空スバルさんと白銀ノエルさんは、どちらも体力自慢かつノエルさんはキン肉マンと同じ牛丼好きということで相応しいキャスティングに。牛丼が踊るバックスクリーンを背に、リングを模したステージでパワフルに歌って踊りました。


ガッチャマンが放送された70年代といえば、ベビーブームで子供たちが大勢いた頃。アニメでは「タツノコヒーロー」と呼ばれる、アニメスタジオ「タツノコプロ」原作の「科学忍者隊ガッチャマン」「新造人間キャシャーン」「タイムボカンシリーズ」などが人気を集め、特撮では60年代からブームをけん引する「ウルトラマンシリーズ」などが男児の憧れの的でした。
中でも特撮はヒーローの激戦区。「ウルトラマン」の円谷プロ、「仮面ライダー」「宇宙刑事ギャバン」「秘密戦隊ゴレンジャー」などの東映だけでなく、「スペクトルマン」「電人ザボーガー」などのピー・プロダクション、「シルバー仮面」「スーパーロボット レッドバロン」の宣弘社といった、各社がしのぎを削る特撮戦国時代とも言うべき状態で、数多くのスーパーヒーロー作品を世に送り出していました。
一方、ジャンプマンガの黄金期にブームになった「キン肉マン」はアニメ放送前から「キンケシ」が人気に。当初は怪獣を倒す巨大ヒーローギャグマンガとして描かれていましたが、読者の反応が良かった「超人オリンピック編」をきっかけに超人プロレスマンガに少しずつ移行。弱くて情けないキン肉マンが根性で窮地を脱し、かつて戦ったライバルたちと絆を結ぶ熱い展開が男児のハートを掴みました。
ラミィさんの「理想のヒーロー探し」はまさにそれらスーパーヒーロー黄金期とも言うべき70年代と80年代からスタートしたわけです。しかし当時は単純明快な勧善懲悪路線が王道パターンであるせいか、どうやらラミィさんが目指すヒーロー像とは若干のズレがあるようす。それは「魔法少女ホロウィッチ!」を経て披露された「魔法戦隊マジレンジャー」も同様でした。
「魔法少女ホロウィッチ!」と「魔法戦隊マジレンジャー」を担当するのは、ラミィさんと同じく「魔法少女ホロウィッチ!」の仲間である白上フブキさん、さくらみこさん、宝鐘マリンさん、天音かなたさん、姫森ルーナさん。どちらも多人数フォーメーション、曲調も「力強さ」から「アップテンポ」になったせいか、ダンスもフォーメーションも華やかさが増します。


ラミィさんが目指すヒーロー像に近づいたのは、天音かなたさんと歌ったセットリスト5曲目の「DANZEN! ふたりはプリキュア」から。「プリキュアシリーズ」といえば2004年から20年以上続く長寿シリーズで、もはや日本における女性ヒーローのスタンダードです。
ラミィさんが「なりたいヒーロー」として着地したのもシリーズのひとつ、2022年の第19作目「デリシャスパーティ(ハート)プリキュア」ですから、よほど大きな存在だったのでしょう。
仲の良い天音かなたさんとのコンビネーションも気合いが入っており、ラミィさん執筆の脚本もこのあたりからドライブがかかり始めていました。

(次は「ラミィさんの“子供時代のヒーロー作品”とは?」)

