ドット絵と3Dを組み合わせ、温かみのあるグラフィックを鮮やかな演出で描いた「HD-2D」が印象的だった『オクトパストラベラー』シリーズは、多くのゲームファンから注目を集め、全世界累計出荷本数500万本を突破するなど、名実ともに人気RPGとしての地位を築き上げました。
その勢いは留まるところを知らず、最新作となるニンテンドースイッチ2/ニンテンドースイッチ/PS5/PS4/Xbox Series X|S/Steam/Windowsソフト『オクトパストラベラー0』(以下、オクトラ0)が2025年12月4日に発売されます。(Steam版は翌12月5日2時より配信開始)
スイッチ向けに始まり、作品を重ねるごとに対象プラットフォームも広がったシリーズの最新作は、果たしてどのような刺激と魅力に満ちているのか。その特徴にいち早く触れたプレイレポートをお届けします。なお、今回はニンテンドースイッチ2版のプレイとなります。
■『大陸の覇者』と近くて遠い『オクトラ0』

HD-2Dを含め、『オクトパストラベラー』シリーズには共通する特徴がいくつもあり、本作『オクトラ0』にも様々な要素が受け継がれています。
最も大きな関連性があるのは、iOS/Android向けに展開している『オクトパストラベラー 大陸の覇者』(以下、大陸の覇者)です。『オクトラ0』は『大陸の覇者』を下地としており、運営型だった『大陸の覇者』を再構成して生み出された買い切り型の作品とも言えます。
しかし『大陸の覇者』の経験者であっても、『オクトラ0』には未知の刺激や遊びが詰まっており、単なる焼き直しや移植に留まるような作品ではありませんでした。
■キャラメイクの導入が、プレイヤーの没入感を促す

『オクトラ0』の独自要素のひとつが、キャラクターメイキングです。本シリーズの多くは、複数の主人公が旅の仲間となり、共に助け合いながらそれぞれの物語を追いかけました。
『オクトラ0』にも、それぞれの目的を持ち、その旅の同行者として加わる仲間は何人もいます。しかし『オクトラ0』では、プレイヤーである「あなた」が作り上げる分身こそが、本作における“たったひとりの主人公”なのです。
ゲーム開始直後に始まるキャラクターメイキングでは、体格に髪型、仕草に声といった外面的なものから、「幼い頃に教わった技」「好きな料理」「持ち物」まで、選べる項目はかなりあります。

しかも、選べる持ち物の中には「幼なじみが作ってくれたおそろいの紐飾り」「子供の頃に拾った鍵」「神秘的な子猫からもらった……ような、おぼろげな記憶がある手紙の断片」といった、想像力をかき立ててくれるものも並んでおり、元来の意味における「ロールプレイング」を楽しめる要素が盛り込まれているのも嬉しい点です。
選べる持ち物は、フレーバーではなく実際に役立つものばかりなので、使い勝手の意味でも選択に悩んでしまうものばかり。見た目から持ち物まで「これにしようかな」「あっちも捨てがたいな」と取捨選択を繰り返すことになり、その過程によって生まれたキャラに自然と愛着が湧く作りになっています。

また最序盤を過ぎると、「剣士」「商人」「盗賊」「狩人」「神官」など8種類のジョブからひとつを選んで就くことができます。主人公のジョブは成長に合わせて変更可能ですし、足りないジョブがあっても仲間がカバーしてくれるので、好みに合わせてもよし、編成に合わせて変更するもよしです。
■未来に進む「復興」の物語

取捨選択に悩みながら生み出されたプレイヤーの分身は、とある村で自警団の見習いとして育ちました。細かく語るとネタバレになるため詳細は伏せておきますが、この故郷の町は、とある一件を経て壊滅状態へと陥ってしまいます。
しかし、荒れ果てた故郷をそのままにはしておけません。幼なじみである大工の「スティア」とともに、この町の復興に励んでいきます。その復興を描く物語と、家などを建て直す「タウンビルド」は、従来のシリーズにはなかった要素のひとつです。

本作におけるクラフト要素の「タウンビルド」は、前述の通り復興という一面を備えています。プレイヤーもこの街の壊滅を目の当たりにしているため、再建したいという気持ちが自然と湧き上がってきます。
また、復興を進めて移住者が増えれば、定期的にアイテムやお金がもらえたり、戦闘に有利な効果が得られる料理の食材などを獲得できたりします。ゲームを進める上でも有利になるため、早めの着手がお薦めです。

システム自体は、クラフト系ゲームの経験がなくてもすんなり遊べるほど分かりやすく、複雑さは感じません。建てられる戸数や種類は進行に応じて増えていくため、スタートの段階ではいたってシンプル。設置の種類や範囲は復興シナリオの進行に応じて徐々に増えていくため、理解しやすい構造になっています。
本格的なクラフトゲームと比較すると奥深さの点では譲りますが、間口の広さや理解のしやすさに長じており、メインのゲーム性となるRPGに沿うサブ的な要素として十分な役割を果たしているように感じます。
また、移住者を配置して得られるメリットも侮れず、ゲーム進行に合わせて攻略面でも有利に働きます。総じて本作の「タウンビルド」は、理解しやすく費やす労力は少なめ、そして得られる効果は十分と言えるシステムです。

ちなみに、シリーズ全般において「タウンビルド」のような要素はありませんが、『大陸の覇者』に限るなら「名もなき町」がかなり近く、移住者を募ったりアイテムが手に入ったりと、共通する部分も多くあります。
「名もなき町」と比べると「タウンビルド」の方が管理・運用面で分かりやすい印象だったのと、復興に合わせて紐づく物語が進んでいく点が明確に異なります。

