カプコンは2026年2月に『バイオハザード レクイエム』を発売予定です。本作は現在のラクーンシティを舞台に、シリーズの人気キャラクター「レオン・S・ケネディ」と新主人公のFBI分析官「グレース」の2人を操作するサバイバルホラーです。
今回、メディア向け試遊会に合わせて実施された合同インタビューにて、『バイオハザード レクイエム』 ディレクターの中西晃史氏にお話を伺いました。「緊張と弛緩のリズム」をキーワードに、本作ならではの恐怖体験と爽快感の両立について語っていただいたインタビューの内容をお届けします。

■ 初代『バイオ』への原点回帰を目指した、開発6年の軌跡
――本作の開発はいつ頃スタートしたのでしょうか。また、開発に至った経緯も教えてください。
中西氏:開発自体はもう6年ぐらい前にスタートしています。ただ、今の形になったのは3年ぐらい前ですね。最初は違う形で模索をしていました。 開発に至った経緯としては、『バイオハザード7 レジデント イービル』(以下、『7』)と『バイオハザード ヴィレッジ』(以下、『ヴィレッジ』)を作ってきて、ストーリー的にもイーサンの話は一旦完結しています。
『7』と『ヴィレッジ』はおかげさまで評価いただいているんですけども、それまでやってきた『1』から『6』までの流れとは若干外れたところを描いてきたな、というのはあるんです。「じゃあ、そろそろ戻そうかな」というところからスタートしています。
――本作の舞台についてお聞かせください。『1』は閉鎖的な洋館、『ヴィレッジ』は村で広がりがありましたが、今回はどのような構成になっているのでしょうか。
中西氏:PVでお見せしているラクーンシティの場面があったと思いますが、『レクイエム』は現在のラクーンシティを描くと言っている通り、ゲームを進めていくと舞台が変わります。
大体のバイオハザードシリーズは、ゲームの進行でロケーションが何箇所か変わっていきますよね。『バイオ4』だったら村があって、城があって、島がある。『バイオ5』にも街があって、また船があるみたいな。今回もゲームの進行でロケーションが変わっていくことになります。
付け加えると、グレースのパートは『1』や『2』のような閉鎖空間を一生懸命生き残るゲームなんですけど、レオンの方は『4』ベースなので、比較的広いところも出てきます。
――シリーズ未経験者にとって、本作の魅力はどこにあるでしょうか。
中西氏:僕らとしては、『バイオハザード』というか、ホラーゲーム自体が誤解されているところがあると思うんですよ。ずっと逃げ続けるゲームだと思われている節があるのですが、『バイオハザード』はホラーゲームでありつつ、怖い対象のクリーチャーを最終的に物理で破壊するゲームなんです。
むしろ、その破壊するところに気持ちよさ、カタルシス、達成感を得られるっていうのがバイオハザードの魅力で。そこを高めるために最初いじめるんですよね。いじめて溜めて、ヘイト向けて、そして倒させる。 普通に敵をバンバン倒していくゲームでは得られない「敵を倒す気持ちよさ」が得られるのが、ホラーとしての『バイオハザード』なんです。
『バイオハザード』は「緊張と弛緩のリズム」が基本だと思っています。今回、試遊していただいたグレースのパートは、緊張の比率がより高めのシーンですね。弾はないし、カバンは小さいし、すぐ死んでしまうという、非常に焦ったと思うんですよ。
あれは本当に溜めてるターンです。 逆に、レオンのパートはグレースで苦しめられた敵を倒していくという、発散できるような構成になっています。2人のキャラクターを入れることによって、普段よりも極端にメリハリをつけられましたね。
――インフレしやすいゲームバランスの問題も解決できると。
中西氏:そうなんです。物理で敵を倒すために武器を与えなきゃいけない。ゲームを進めていくと戦闘手段が手に入っていくんですけど、そうするとゲームって当たり前にインフレしちゃうんですよね。敵に対して「こいつに勝てないかも」って思わせるのが難しくなっていく。 そこは今回、レオンとグレースを使うことで解決しています。
レオンで暴れても、グレースはさして強くなっているわけじゃない。なので、グレースパートに行った時には、「レオンだったら勝てたけど大丈夫かな」って気持ちになってプレイできる。これが『レクイエム』の特徴になってますね。

■ 「サウナ理論」で脳を揺さぶるホラー体験と、視点切り替えの意図
――ホラーの度合いについてお聞かせください。『7』は恐怖に振り切った内容で、『ヴィレッジ』で調整されたと伺っていますが。
中西氏:おっしゃる通りで、『7』では「怖すぎてできない」という人がいたのは事実なんですよね。『ヴィレッジ』ではもうちょっとそこを薄めようとしました。 今回はグレースとレオンがいるので、グレースはもう徹底して怖くしようと。その代わり、レオンの方は行き詰まる怖さじゃなくて、スリル、ハラハラドキドキさせる……発散できるような激しい緊張感のあるホラーにしています。
トータルで見ると、レオンで発散させてあげられるから、逆にグレースは遠慮せずに怖くできる。そういうメリハリの効いた作り方をしています。 以前どこかで「サウナ」に例えさせてもらったのですが、めちゃめちゃ熱くした上でキンキンの水に入る。その温度差で脳を振り回すっていう、そういうやり方を目指してますね。
――『ヴィレッジ』より怖い内容になっているということでしょうか。
中西氏:ずっと怖い状態が続くというわけでなく、ピーク値という形になりますが怖いシーンは出てきます。海外の女性ライターさんが怖くて進められなかったっていう……メディアプレビューにあるまじき状況になってたんですよ(笑)。
一般のユーザーさんでもそういう人は出るのかなと。 でも、もうちょっと頑張ればレオンが来てくれるんで、っていうモチベーションでプレイしてもらえればいいかなと思ってますね。
――確かに『7』はずっと怖くて救いがなかったですからね。
中西氏:そうなんです。『7』は誰も助けてくれる人がいない。今回はレオンが待っているという構成が作れたなっていうところがレクイエムの特徴ですね。 これまた意地悪なんですけど、「もうちょい行ったらレオン来るかな」と思っても、意外とグレースのパート長いんですよ。「まだ続くの?」みたいな。ホラーってちょっと意地悪しないといけないところがあるんで、あえてやったりしています(笑)。
――シリーズで初めて視点の切り替えを採用した理由を教えてください。
中西氏:『バイオ4』『5』『6』を三人称視点(TPS)で作ってきて、『7』で一人称視点(FPS)にしました。やっぱり一人称視点が苦手とか、酔ってしまうって方がいらっしゃるんですよね。 そこから、『ヴィレッジ』のDLCでTPSモード対応したところ、「これでやっとできる」というお客さんが結構いらっしゃった。なら、もう最初から選べるようにしようよと。これが採用した理由です。
――苦労した点や発見はありましたか。
中西氏:『ヴィレッジ』でやっていたので、両対応のノウハウやシステムの準備はあり、そこまで苦労せずに組み込めました。 ただ、実は予想外の発見がありました。東京ゲームショウやgamescomに出していた、でかい敵に追いかけられるシーン……あれを三人称視点にした時に、グレースがパニックになって逃げ惑う演技が見えるんです。
僕たちは、三人称視点にすることで怖さは薄れると思ってたんです。なので怖さの緩和にもなるかなと。でも、三人称にしてグレースがパニックになっているのを見ると、むしろそれを見てこっちも怖くなるっていう。結局怖くなっちゃいました(笑)。
この一人称・三人称の見え方の違いって今まであんまり見たことないので、細かいところまでチームのみんながこだわって作ってくれています。
――主観視点でもグレースとレオンで違いがあるのでしょうか。
中西氏:はい。銃の見えてる範囲も違うんですよ。グレースの方は、持ってる手がちょっと揺れてるんです。緊張を感じていて、ちょっと強張って構えて、場合によってはちょっと震えてたり。画面の情報からプレイヤーもついつい緊張しちゃうような、そういう作りにしています。
2周目をプレイする方は、1周目と違う視点で切り替えてやると、また新鮮な気持ちでプレイできると思います。開発チームでも、どっちの視点が好きか意見が分かれてますからね。


■ 2人の主人公と、進化した「ザッピング要素」
――本作の導入部分はシリーズ未プレイの方でもわかりやすい内容になっているのでしょうか。
中西氏:はい、何も知らない人でも理解できるように作っています。 レオンは当然ずっと関わってきたキャラクターだから色々な歴史があるんですけど、グレースは今回初めてのキャラクターで、彼女自体もゾンビを見るのが初めてなんですよね。ラクーン事件のことも、お母さんは絡んでいたけど全然知らない。 でもお母さんが殺されて、ラクーン事件を追っかけていった。そこから彼女自身も「知らなきゃ」と思うわけです。
なので、全く知らないプレイヤーは、グレースと一緒に初めてのバイオハザード体験や、ラクーン事件というものを知っていくという内容になっています。むしろ入門にぴったりですね。シリーズのベテラン勢はレオンとシンクロして、新規の方はグレースとシンクロするという狙いがあります。
――本作で新しく試したアプローチはありますか?
中西氏:プレイしていただいた範囲でいくと、まずレオンの方は、割といかつい斧を持っていて、戦闘が終わったら辺りが血の海になっていたと思います。 レオンって長くシリーズに登場しているキャラなんですが、ゲームで描かれるのは十数年ぶりなんですよね。みんなが知っているのは、まだ若かりし頃の30手前ぐらいのレオンなんですよ。
なので、彼をちゃんと深掘りして描こうというのが一つのテーマになっています。彼の熟練の技術、凄み、背負ってきたものの重さ、「もしかしてこの人めっちゃ怒ってるの?」とか、「世の中嫌いになってるの?」とか……そういう表現のために、血まみれになるというのを作っています。そこを軸にゲーム体験を作っているところはありますね。
――ラクーンシティはレオンにとって特別な場所ですよね。
中西氏:実は、いいおっさんになったレオンが今回訪れるラクーンシティは、まさにバイオハザードと戦う人になったルーツの場所なんです。 若かりしレオンがいろいろ思い悩んで、悲しみを経験した場所に、30年後に戻る。当時のことを思い出して、どう感じ、何を言うのか、どう行動するのか……そういうところは、ファン目線での注目ポイントになっています。
――レオンとグレースで同じ場所を探索する場面もあると思いますが、『バイオ2』の表裏のようなザッピング要素はあるのでしょうか。
中西氏:はい、あります。自分のプレイで進めていって、レオンのところまで行くと、自分のプレイで倒したゾンビは当然死んでいるし、倒していないのは残っている。アイテムも全部そうなっています。 おそらく初見で、弾がない状況でゾンビを全滅させるのってすごく難しいと思うんですよ。
苦労して、「いつもおるあいつ、邪魔やな」ってやつらが残っている。それをレオンで来て、ドカンと倒せるところが、このシーンでの面白さです。グレースで苦労した敵をレオンで倒せる、というのが基本ですね。
――2周目の効率プレイという楽しみ方もできそうですね。
中西氏:バイオハザードには周回の遊びを今回も用意しています。2周目、3周目に入ってくると、次に何が来るかわかるじゃないですか。「あ、じゃあこれはレオンに任せよう」みたいなプレイができるようになります。 高難易度だと、その辺を考えないとかなりやりくりが難しくなったりするので、いつもよりさらにやりごたえのある内容にできているかなと思います。

■ キャラクター別のゲームデザインと、こだわりのシチュエーション
――グレースパートとレオンパートで、ゲームデザイン面での違いはありますか?
中西氏:体験してもらいたい内容の違いに紐付いて、要素も変えています。 レオンの場合は探索要素はそんなにないんですよ。どちらかというと、現れてくる敵をどう倒していくかに集中できるように、敵の武器を使うとか、そういった要素に絞っていますね。
一方グレースの方は、敵を全滅させていくわけじゃないので、どういった手段で生き残るかという部分で、探索で見つかるアイテムや、アイテムボックス、謎解きパズルなど、「館を攻略していく」という発想で要素を用意しています。
――となると、グレース編ではボス戦のような強敵と戦うシーンは少なく、そちらはレオンに任せている形でしょうか。
中西氏:序盤に関してはそうですね。ボス戦ばかりではないです。 ただ、『バイオハザード』の特徴として、カプコンは繰り返し同じことをやるのを嫌うじゃないですか。手を変え品を変えやっていくので。ホラーゲームはプレイヤーにあまり読まれてはいけない、期待を裏切らなきゃいけない、想像をいい意味で超える……こういうところに気を使っているので、色々と想像以上の展開も起きると思います。
――グレース編で出現する敵についてはいかがでしょうか?
中西氏:ゲームデザインとしてはオールドスタイルのバイオハザードで作っています。乏しい物資、脅威となる敵、どうやって生き残るかというゲームなんですけど、敵の方にちょっと変化をつけるというチャレンジをしています。
一般的にゾンビって、ゲームしてる人だったら年間に5,000体ぐらいは倒してると思うんですよ(笑)。「ゾンビは頭を撃つんだよね」とか、動きも何をしてくるかも知られちゃってる。ホラーゲームって、敵のことを舐められたらダメなんですよ。「こいつは油断ならない、何してくるかわからない」という緊張感を維持させる必要があって。
「『バイオ』のゾンビなんだけど、ひと味付けよう」というのが今回のテーマです。人間だった頃の残滓が残っているというネタで、ゾンビではなかなかやらないことをやらせています。例えば「え、ちょっと待って、お前チェーンソー拾うんかい」とか。
――確かに、あれは驚きました。プレイヤーを裏切って油断させない作りですね。本作で最もこだわったシーンやシチュエーションを教えてください。
中西氏:ゲームの中では本当にてんこ盛りあるんですけど、今回お見せした範囲でいうと、やっぱりレオンの最初のチェーンソーのところは、僕をはじめ開発チームがかなりこだわっていますね。
『バイオハザード』におけるチェーンソーって、「ガンダム」シリーズでいうガンダムみたいなものなんですよ。だから、「今回のチェーンソーはどういうものにする」というのは毎回めちゃめちゃ悩むんです。 今回たどり着いたのが「みんなでチェーンソー」ですね。ソーシャルな時代だからこそ、敵もみんな使うし、プレイヤーも使う。こういう方向性でやっています。 このコンセプトが決まったので、どの敵が持つかで、何をしてくるか若干違っているんですよ。
最初は医者が持ってくるんですが、スタンダードなチェーンソーの動きをしています。一方、女性の看護師は非力なので、チェーンソーを振り回すとすっぽ抜けて飛んできたりする。言ってみると飛び道具を使ってくるキャラになっていますね。そういうところもこだわっているので、あのシーンは力が入っています。
――グレースの方ではいかがでしょうか。
中西氏:グレースの方では、ゾンビたちといかに絡んで、サバイバルしていくかという部分に、かなり時間をかけて作っています。 バイオハザードシリーズは、各シチュエーションの特色をなるべく尖らせて、常にユーザーを飽きさせず、色々なことをさせようという作りにしていますね。

■ 成長要素と、進化したアクション
――グレース編で見かけたアンティークコインを使った強化は、グレース限定のものでしょうか。レオンだと拾えませんでした。
中西氏:はい。あの療養所のコインで開けるところで取れるものは、グレースしか使えないものなので、レオンでは拾えないようにしています。 レオンの方は、プレイしていただいた範囲ではほとんど成長要素がなくて、武器のカスタムができたくらいだと思います。
先ほど、レオンは爽快感のあるパートなので敵に対して強めに立ち回れるとお伝えしましたが、ずっとそうはいかないんですよ。あんなに強いレオンでも厳しい状況が生まれてきます。 その辺で、レオンの方もおなじみの武器を強化・改造していく、買い物するという要素が出てきます。
アタッシュケースもいっぱいになってくるので、整理したり拡張したり……レオンのゲームがどんどん広がっていくフェーズが後半に出てきます。逆に言うと、レオンの方も、武器を鍛えていかないと立ち行かなくなっていきますね。
――レオン自身の肉体的な強化要素はありますか?
中西氏:細かいところはまだ言えませんが、レオンの方はおなじみのアーマーとかを着られます。防御力を上げたり、主に武器やミリタリーなど武装を強化することで能力を上げていく形ですね。
――レオンパートにしゃがみ動作がありましたが、『バイオハザード RE:4』のようにしゃがみで攻撃を回避できるのでしょうか。
中西氏:はい。敵のわかりやすい横振りを見たら、「もしかしてしゃがめるかな?」と思っていただければ(笑)。チェーンソーの横振りも一応しゃがみで避けられますが、チェーンソーはパリィした方が安全です。
――グレースでもしゃがみ回避はできますか?
中西氏:同じ動きだったら同じ当たり判定なのでできるんですけど、グレースはそもそも、しゃがみ回避が必要なアクションシーンがあまりないと思います。 グレースはそういう回避行動をさせるようにはしていなくて、むしろそういう状況に備えてナイフを持っておいて、捕まった時に使って脱出させるという方向性ですね。グレースはそういったアイテムを使って生き残るという設計になっています。
■ 表現規制とファンへのメッセージ
――今回メディアがプレイしたのは国内版(CERO Z)とのことですが、表現についてお聞かせください。
中西氏:はい、今回皆さんに遊んでいただいているのはCERO Z版です。グローバル版と差がないわけではありませんが、体験できる内容に関しては、大きく遜色ないようになっているかなと思います。 先週公開した「バイオハザードショーケース」の日本向け映像も、実は国内のCERO Z版を使用しています。「あれ海外版じゃないか」とおっしゃっているユーザーさんもいらっしゃるんですが、あれも国内のCERO Z版です。
――発売まであと約1ヶ月となりました。ファンに向けて熱いメッセージをお願いします。
中西氏:本作に関して、ファンの皆さんにものすごい盛り上がっていただいているなっていうのは、すごく温度感を感じていて、逆に熱くさせられてますね。 その期待には応えられる内容になっているので、発売を楽しみにお待ちいただければと思います。僕も、みんなに遊んでもらうのをすごく楽しみにしています。
――ありがとうございました!
『バイオハザード レクイエム』は、PC(Steam/Epic Gamesストア)/ニンテンドースイッチ2/PS5/Xbox Series X|S向けに2026年2月27日発売予定です。




