
マレは5月22日~24日にかけて、京都市勧業館みやこめっせで開催されたイベント「BitSummit PUNCH」にて「電ファミニコゲーマー」ブースを出展しました。
そう、マレといえば弊誌と同じゲームメディアである「電ファミニコゲーマー」(以下、電ファミ)を運営する、いわば競合媒体。また『人の財布』といった人気ARGをリリースする「第四境界」も運営しています。

「BitSummit PUNCH」出展に際し同誌では、事前に公募した5タイトルを特別推薦枠として展示すると告知。1月の募集開始から想定以上の応募があったそうで、ブースでは推薦された『UGOMEKU NOTE』『Under A Groove』『コロコロフレンズ』『Re:Connect』『クトゥルフ神話カードゲームADV Erase-missing link-』が展示されていました。
ゲームメディアがゲームイベントに出展することは、東京ゲームショウに毎年ブースを出している「4Gamer.net」など例はあれど、決して当たり前のことではないはず。
今回編集部では、なぜ「電ファミ」がBitSummit PUNCHに出展することになったのか、また特別推薦枠として公募を行った理由や今後のパブリッシング事業について、ブース担当者である嘉山優氏にお話を伺いました。
◆なぜ「電ファミ」が出展側に? きっかけはゴールドスポンサーの“Steam枠”
「電ファミニコゲーマー」ブースでは、前述の特別推薦枠5タイトルに加えて、『Pain Pain Go Away!』『ヴェリタステイルズ:暗黒城の魔女』『多砲塔神教』『勇者パーティはぜんめつしました。』『Saga & Seeker』『事故物件だよ!うらみちゃん』の6タイトルが出展。さらに、同社が展開するARGクリエイター集団「第四境界」の新作『人のゲームカセット』も展示されており、合計で12タイトルが並びます。

各タイトルでは試遊台が用意され、一般日にはどのタイトルも試遊で埋まっている状態に。また、ARG『人のゲームカセット』については一般販売されないゲーム機が展示されており、多くの人が詰めかけていました。

ーー本日はお時間いただきありがとうございます。まず、BitSummitでゲームメディアがこれほど大きく出展しているのは、かなり珍しいのではないかと思いました。今回、なぜ「電ファミニコゲーマー」として出展をすることになったのでしょうか?
嘉山優氏(以下、嘉山):そうですね。メディアの立場としても、恐らく今までなかったかと思います。
直接のきっかけでお話すると、現在、電ファミでパブリッシングやプロモーションに協力しているタイトルが数本ほどありまして、そちらの露出等のためというのが、一番大きな目的になります。
その中で、BitSummitはスポンサーになると、Steamの特設ページでの露出がスポンサーの特典としてあります。それが今回のゴールドスポンサーだと10枠くらい頂いています。
最初はより小さいブロンズやシルバーでも考えたのですが、シルバーが5枠、ゴールドが10枠というところで、価格差も200万円くらいだったので、せっかくなら大きく出してしまおうという話になりゴールドスポンサー枠で出すこととなりました。
――もともと協力していたタイトルがあり、そこに追加でということだったのですね。
嘉山:インディーゲームの応援は普段から媒体として行っていて僕もすごく好きなのですが、あまり還元できていないという問題意識がありました。
それで、余った枠が5枠あるので「公募して枠を使ってしまえばいいのではないか」という話になりました。うちの記事にも出したのですが、特別推薦枠として電ファミでブースに代理出展するので、費用等は一切頂かない。そして電ファミで記事にするという取り組みをやってみたという次第です。
ーーということは、今回出展では10タイトルほどが出ているということですか?
嘉山:最終的に多分12タイトルくらいが出ていて、そのうち5枠を特別推薦枠として出しています。残りは自社のタイトルや協力しているタイトルの出展枠として出展してみたという次第です。
ーー納得がいきました。元々パブリッシングのお手伝いをしているというところが最初のきっかけだったのですね。
嘉山:そうですね。これも実は隠しているわけではないのですが、今パブリッシング的なことを始めていて、担当しているタイトルがいくつかあるんです。
それが今回展示した『勇者パーティはぜんめつしました。』や『多砲塔神教』といったタイトルです。これがもともと取り組みとしてあって、プロモーションやファン向けの施策、体験版などを出す機会として、リアルイベントを一通りやってみようと進めていました。
ーーこのパブリッシング事業自体は公にされているのでしょうか?
嘉山:Steamページにも名前は出ていますし、公にはなっています。ただ、まだ自分たちとしても手探りの状態ですし、大々的にブランディングしていこうというよりも、まずはゲームがファーストでやっていこうという取り組みですね。だから表向きには特に「電ファミが~」とは言っていません。
基本的には担当したタイトルの記事を、電ファミというメディアで記事化したり、広告を出したりすることを通して、少なくとも日本国内にはある程度露出ができるのではないかという取り組みになっています。
ーーこのパブリッシング事業はどういった経緯で始まったのですか?
嘉山:一番は、メディアだけだとやりきれないことが多いということです。例えばあるタイトルがあったとして、宣伝でインタビューやレビューを書きますとか、予算があればある程度いろいろなことはできるのですが、それ以上のこととなると結構難しい部分があります。
記事として出すにはリリースや体験版など、ある程度出せるタイミングが限られていいます。かつ、すごく良いタイトルでもお話をいただくタイミングが厳しくて、できることがかなり限られてしまうということもよくありました。
ーーそれは僕たちも近いことを感じます。
嘉山:ですよね。例えば発売1週間前にお話が来て、なんとかバズらせてほしいと言われても、1週間だと厳しいということはかなりあります。そうなった時に、メディアはそれ以上のことはできないんですよ。
1週間前に話が来て、1週間で頑張って書きます。でもそれ以上のことはできない。だからメディアで協力できるのって「点」なんですよね。それをもっと前から、ある程度ゲームの形ができて「さあ宣伝どうしよう」となったタイミングで相談があれば、先手を打って協力できることがいくつかあるなと思っていて。
ーー継続的に発売までサポートするということですね。
嘉山:そうです。そういうことがあり、メディア的だけではない協力の仕方ができないかなと思って、色々やり始めたのがパブリッシング事業の最初のきっかけです。
ーー今回出展したというところも、メディア事業だけではないというところが大きいのでしょうか。
嘉山:いえ、今回電ファミとして出したのは、パブリッシャーがメインというわけでもありません。むしろメディアとして、面白いタイトルをちゃんとフックアップするような取り組みができないかなという感じです。
うちが一般的なパブリッシャーさんと違うのは、メディアを運営しつつ、パブリッシングもやるという点だと思います。タイトルをたくさん契約して順々に出していくようなことは出来なくて、メディアを運営しつつ、二足のわらじで丁寧にやりたいという気持ちです。
宣伝もやるし、言ってしまえば批評もやる。ゲームを買う時って、開発中の段階からストアページやメディアの記事を見るじゃないですか。そういったユーザーが触れるところからプロモーションを設計する、アドバイスするようなことが出来ると思っています。
ーー確かに、公式とも違うしユーザーとも違う、ちょうど中間の立ち位置にあるのがメディアですね。
嘉山:例えば電ファミは第三者として記事を書けるので、公式では言いづらいことも書けます。
公式だと自画自賛するような言い方をすると寒いし、ユーザーには「自分で言うな」というふうに見られてしまいます。
それを逆にメディアという第三者の位置から見るとそういう書き方もできますし、そっちの方がユーザーに伝わりやすいというところもあります。
ーー間に入る立ち位置がちょうどいいというか、ユーザーにアピールするには良い立ち位置と。
嘉山:そうですね。立ち位置という意味では、「どうやってこのゲームを届けるか」という宣伝や届け方の部分に特化したパブリッシャーになるのかなと思います。
逆に、どこまで行ってもメディアの人間なので、開発とかは全然できません。例えばSteamのゲームをニンテンドースイッチに移植したいとなった時に、開発が強いパブリッシャーさんなら内部にプログラマーさんや技術者の方がいて、そこからリソースを借りることもあると思うのですが、うちはそれが全くできません。
ゲームがある程度できてから、どうやって売るか、どうやって届けるか、どうやって宣伝するかの部分がメインになるかと思います。
◆応募は100件以上! 推薦タイトルはどれも「個性が強い」
ーー今回出展するにあたって、特別推薦枠として公募を用意したということでした。1月くらいに告知されて、どれくらいの応募があったのでしょうか?
嘉山:応募は100件以上来ていました。なので、僕らとしても「こんなに?」という嬉しさ半分、「これは大変なことになったぞ」半分という感じで、ちょっと驚きがありました。
ーー100件以上の中で5枠を決めるとなると……。
嘉山:嬉しいのですが、物理的に100件は大変という……(笑)。編集部のメンバーで全て目を通して、ビルドも送ってもらったものは遊んでみるような形で、選考をしました。その中で、最終的に5枠に絞って出展させて頂いたという形になります。
ーー推薦するタイトルが決まった中で、開発者の方とはどのようなやり取りをされたのでしょうか?
嘉山:特別推薦枠として選考したタイトルの作者さんには、それぞれご連絡して打ち合わせを行いました。そこで、例えばその時点でストアページを出されていない方もいらっしゃったので、「先に出しておいた方がいいですよ」とか、「絶対に初報でプレスリリースを打った方がいいですよ」といった話をしました。
ーーメディアとしてのサポートやアドバイス的なことをされたのですね。
嘉山:そうですね。プレスリリースを書いたことがないという方もいらっしゃったので、うちでパブリッシング時に使っているリリースの雛形をお渡しして、「まずこうやって書いたら、メディアの人間が拾いやすいような書き方になりますよ」といったところで、ささやかにサポートしたりしました。
ーー今回、推薦枠としてピックアップしたタイトルがいくつか5枠ありますが、どのようなタイトルが揃っているのでしょうか?
嘉山:今回推薦枠として選考させていただいたのは、『UGOMEKU NOTE』『コロコロフレンズ』と『Under A Groove』、『Re:Connect』『クトゥルフ神話カードゲームADV Erase-missing link-』の5点になります。全部面白いのですが、やはりみんな個性が強いと感じます。
公募した際に「ユニークなゲームであること」という条件を掲げたのですが、やはりユニークなゲームって面白いなと思っています。その基準は間違ってはおらず、選考する時にもこの基準で良かったなとは思いました。

ーーやはりゲーマーとして気になるのは、今後もっとパブリッシング事業、今回出展したタイトルの宣伝などをやっていくのかなというところです。そういった予定はあったりしますか?
嘉山:それもタイトルによるというか、マッチング次第みたいなところがあります。どちらかというと推薦枠は、インディーゲーム開発者さんへの恩返しというか、応援みたいな意味合いが結構強くて。
うちがパブリッシングしているからといって見返りを期待したいわけでもないですが、もしそういうサポートが欲しいということであれば、全然お話しできるという感じです。
ただ特にそういった話が明確にあるわけではありません。iGiさんや集英社ゲームズさんみたいなインキュベーションという体制ではないのですが、僕らのできる、手の届く範囲では協力できるかなという感じですね。
ーー国内だとAUTOMATONがPLAYISMと同系列にあるのはよく知られていますが、それとはちょっと違うのでしょうか。
嘉山:PLAYISMさんくらいまでやるには、たぶん会社の規模がいまの3倍くらいにならないと難しいですね。アクティブゲーミングメディアさんは、PLAYISMさんとしてパブリッシャーをやっていて、そこでメディアが必要だとなってAUTOMATONさんが入ったかと思います。僕らは多分逆で、メディアをやっていてメディアじゃできないことがあるなとなってパブリッシングをやり始めたという感じです。
ーー先程あったように、宣伝の部分、ユーザーさんの目に触れる部分でサポートをしていくということですね。
嘉山:役割としては需要があるかなと思っていて。開発者さんでも、開発はすごく得意だけど、宣伝のことはさっぱり……みたいな人はそこそこいるんじゃないかと思います。
個人とか小さいチームこそ、宣伝が一番コストをかけられないというか、いざやってみたらめちゃくちゃやることが多いんですよね。日本で出すなら当然日本語でプレスリリースを書きますが、Steamで売るとなると、まず英語と中国語対応は必須レベルになります。
それを当事者になっていざやってみると「これ3か国分やるの? PVも3か国分やるの? たった3か国語対応でこんなにつらいの?」みたいな感じになって(笑)。
そういったパブリッシングや宣伝の部分で必要な作業を開発者さんが一人でやるのは、かなり無理があるなというのは本当に感じています。ゲームを作るだけでも大変なのに、ここから宣伝を並行してやらないといけないというのはすごく負荷が高いなと思います。
ーーそれでは、今後もインディーゲームのイベントに電ファミとして出展する予定もあるのでしょうか?
嘉山:今回大きなブースで出してみて、色々発見や至らない点もありました。今後も多分やっていくとは思うのですが、どう出すかというのは未定です。
僕らの「マレ」という会社のブランディングも一応ありますが、出展はやはりタイトルのためではあるので僕らだけで出してもしょうがないですし、ゲームがないとお客さんは遊びに来てくれないので、気になるゲームを目当てに来てもらうというのが一番大事です。
ーー良いタイトルがあって、タイミングが合えば今後も予定はあるかもしれないということですね。その際はまた特別推薦も実施されるのでしょうか?
嘉山:それもタイミングが良ければやるかと思います。ただ先程もお話したように、事業としてパブリッシング一本でやったり、たくさんタイトルを集めてということは物理的にできないので、しばらくは繋がりのある方のゲームを担当することが多いのかなと思います。
◆「ゲームがファースト」で、あくまでも「紹介する人」
ーー先程ブースも拝見したのですが、今回かなり多くの人が並んでいましたね。
嘉山:出展に際して完全に人出が読めなかったんで、「並んだらどうする?」みたいな話にもなりました。チェーンポールが1つくらいあればいいのではないかと、そのレベルの手探り感で。ちなみに、チェーンポールは本当にあってよかったです。角に設置すれば人が並んでくれるようになるので、これで大丈夫だと。
「第四境界」の新作も出展しており、やはり新作お披露目は強いんだなと思いました。初めて出展しているというところもありますし、プレミア感はかなりあったんじゃないかなと思います。


ーー会社としての出展もしっかりされているのですね。
嘉山:「マレ」という会社自体はやはり編集者の会社なので、自己プロデュースというかセルフプロデュースに対する関心が薄いところがありました。
パブリッシングにしても推薦枠にしても、やはりゲームがファーストなので、僕らはあくまで紹介する人というか、僕らの名前をめちゃくちゃ売りたいというわけではないんですよね。
マレは「第四境界」の運営もしているのですが、別に隠しているわけじゃないにしても、結びついている人がいるわけではなくて、別物として認識している人の方が多いかなと思います。
ーーそうかもしれないですね。「電ファミ」があったり「第四境界」があったり。
嘉山:はい。なので、マレという会社をすごい押し出したいというところまでではないのですが、どちらかというと業界の人には知ってほしいかもしれないなというのはあります。
未だに「第四境界」の方で話があったりすると、「え、マレさんなんですか」「これマレさんやってたんですか」というのは結構まだよく聞くので。それが良いのか悪いのかはわからないですが……。
結局のところ、最終的にユーザーさんへどう面白く届けるか、どうやって良く届けるか、いうのがいちばん大きいです。そこもゲームファースト、プロダクトファーストみたいな感じなのかなと思います。
ーーありがとうございました!



