eスポーツ界のウィンブルドンへ—「eスポーツワールドカップ 2026」仏で開幕…タイトル選定の裏側とビジョンをキーマンが語る

EWCのゲーム選定は「既存エコシステム」「視聴者数」「開発元の協力」が基準。eスポーツのウィンブルドンを掲げ、業界全体の発展と、日本の競技シーンを世界へ繋ぐ展望をキーマンに訊きます。

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eスポーツ界のウィンブルドンへ—「eスポーツワールドカップ 2026」仏で開幕…タイトル選定の裏側とビジョンをキーマンが語る
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世界最大規模のeスポーツの祭典「Esports World Cup 2026(EWC)」がフランス・パリにて開幕を迎えました。本大会は、100を超える国々から集結した2,000人以上のトッププレイヤーたちが、7月6日から約7週間にわたって全25タイトルの競技で世界一の座を争うメガイベントです。

果たして、これほどまでに多岐にわたるゲームタイトルは、どのような基準で選出されているのか。そして『Apex Legends』や格闘ゲームをはじめ、独自の熱狂を生み出し続ける日本のeスポーツシーンをどう評価するのか。

EWCのタイトル選定における「3つの基準」から、『フォートナイト』が“復活”を遂げた裏話、そして「日本のプレイヤーの素晴らしさを世界に示したい」と語る同氏の真意まで、EWCを主催するEsports World Cup FoundationのChief Games Officer、Fabian Scheuermann氏に話を伺いました。

◆EWC採用のうえで重視する3つのポイント

——EWCのタイトル選定において、最も重要な基準は何ですか。また、タイトルを継続するか、外すかはどのように評価していますか。

Fabian Scheuermann:我々の指針の一つは、最高のゲーム、最高の選手、そして人生を変えるような機会を一つに集めることです。

タイトルを評価する際には、主に三つの点を見ています。

一つ目は、既存のエコシステムです。そのゲームにすでに強い競技エコシステムが存在しているかを見ます。『Apex Legends』を例にすると、年間を通じて複数の大型大会が行われています。札幌(※)も非常に盛り上がっていました。我々の理想は、選手たちが年間を通じて競技に取り組める環境があり、EWCがその中の頂点の一つになれることなんです。

(『Apex Legends』の年間王者を決める「ALGS Championship」は、2025年の「ALGS Year4 Championship」から3年連続で日本の北海道・札幌での開催が決定されている)

二つ目は、パフォーマンスやKPIです。視聴者数や、そのタイトルがグローバルな注目を集められるかを見ています。EWCはグローバルなイベントなので、ラテンアメリカ、スペイン語圏、ブラジル、日本など、個々のコミュニティも重視しています。すべての国、すべてのファンが歓迎されていると感じられるタイトルを選びたいと考えています。そのため、格闘ゲーム、『Apex Legends』、『VALORANT』など、世界中のファンが親しみを持てるタイトルを揃えています。

三つ目は、パブリッシャーからのサポートです。私たちはパブリッシャーと非常に密接に連携しています。単にイベントを開催するだけでなく、ゲームそのものに深く組み込まれることを目指しています。eスポーツファンだけでなく、より広いゲームファンにもEWCを見てもらい、関わってもらいたいと考えています。

そのために、パブリッシャーはゲーム内スキンやゲームモード、連携施策、SNSでの発信などを通じてサポートしてくれています。

こうしたパートナーシップは過去数年で進化してきました。現在の多くのパートナーシップには非常に満足しています。これら三つが主な評価基準であり、その下にさらに多くの細かな評価項目があります。

——『フォートナイト(Fortnite)』の復活や『トラックマニア(Trackmania)』の追加といった判断には、どのような要素が影響しましたか。

Fabian Scheuermann:『トラックマニア』は面白い例です。EWCをパリで開催することを決めたのは、わずか8週間前でした。フランスでは『トラックマニア』のコミュニティが非常に大きいため、とても自然な選択だったんです。

前述の通り、評価基準の一つに“パブリッシャーとの協力”があります。『レインボーシックス シージ』を通じたユービーアイソフトとの協力関係はとても素晴らしいものです。また、ジャンルの多様性も重視しており、優れたレーシングゲームを入れたいと考えていました。

さらに、『トラックマニア』のゲーム内にEWC専用のトラックを作ったり、トロフィーを実装したりと、期待を超えるサポートを提供してくれました。多くの意味で『トラックマニア』の追加は非常に論理的な判断でした。

一方の『フォートナイト』では、初年度にEpic Gamesと共に特別なモードに取り組みましたが、期待通りには機能せず、コミュニティの反応も十分ではありませんでした。そのため、一度立ち止まり、改めて考えました。既存のモードを活用しながら、異なる体験を作りたいと考え、今回は「リロード」という特別なモードで復活します。50人のプレイヤー、一つのマップ、そして非常に難易度の高いメタが特徴です。

重要なのは、Epic Gamesがこのモードを中心に、年間を通じたエコシステムとサーキットを構築していることです。方向性を詰めるまでには少し時間がかかりましたが、最終的に共にこの道を進むことを決めました。Epic Gamesが『フォートナイト』をEWCで復活させてくれたことを、とても嬉しく思っています。

◆中国や日本には“興味深いタイトルがある”

——今後EWCに採用する可能性のある新興ゲームジャンルや競技トレンドについて、現在どのように考えていますか。

Fabian Scheuermann:現時点で「このゲームは絶対にEWCに入れるべきなのに、入れられていない」と感じる特定のタイトルがあるわけではありません。むしろ逆です。

「eスポーツワールドカップ」というレガシーを築いていく中で、多くのパブリッシャーが我々と共に参加したいと考えるようになっています。ただし、現在の25タイトルを超えて急速に拡大しようとは考えていません。

最終的には選手のためになることをしたいからです。選手たちが自分の競技環境に安心感を持ち、居場所があると感じられることが重要です。単に小規模なゲームを追加することが、必ずしもコミュニティ全体のためになるとは限りません。

また、クラブ(チーム)は各タイトルごとにロスターを作り、選手を採用する必要があります。そのため現時点では、単純に一つのゲームを追加し、一つを外すという判断は非常に難しいです。

とはいえ、私たちは常に評価を続けています。特に中国市場や日本市場を見ると、非常に速いスピードで伸びている興味深いタイトルがあります。具体名は挙げませんが、そうしたタイトルについては積極的に議論しています。

ただし、新しいタイトルを加えるのであれば、それはきちんと機能する必要があります。そして長期的に機能する必要があります。毎年タイトルを入れ替えるようなことはしたくありません。選手にも、クラブにも安定性が必要です。私たち自身も安定性を重視しています。すべては長期的な視点に基づいています。

——各タイトルのルールや大会形式はどのように決められているのでしょうか。また、競技性の公平性とエンターテインメント性のバランスはどのように取っていますか。

Fabian Scheuermann:25のトーナメントのうち16タイトルは私たちが「co-hosted(共催)」と呼んでいる形式です。パブリッシャーの公式大会サーキットの一部として、EWCが公式な大会の一つになるという意味です。EWCがそれぞれのパブリッシャーのエコシステムに深く組み込まれた公式大会になっているのです。

そのため、基本的には各パブリッシャーのエコシステムにおけるルールセットに従います。一方で、Club Championship(※)は個別のゲームの上に重なる別のレイヤーとして存在しているため、場合によっては特別なルールを検討する必要もあります。

※Club Championship…各タイトルの順位に応じてクラブ(チーム)にポイントが与えられ、その総合獲得順位で世界一のクラブを決定するというEWC独自のシステム。

これらは、各パブリッシャーと細かく複雑な議論を重ねながら進めています。私たちの目標とパブリッシャー側の目標の両方が満たされるようにするためです。時間はかかりますが、今年で3回目の開催となるため、こうした議論は以前よりもずっとスムーズで早く進むようになっています。

——異なるエコシステムを持つ複数のパブリッシャーと連携する上で、最大の課題は何ですか。また、彼らを巻き込む上で最も効果的だったアプローチは何ですか。

Fabian Scheuermann:まず、我々はeスポーツにおいて、ウィンブルドンのような主要スポーツイベントに匹敵する、世界的なトップスポーツへ引き上げることを、最終的なビジョンにすえています。

それを達成するためには、すべての関係者を一つにまとめる必要があります。一つひとつの個別の利益だけを見ていては、エコシステム全体を大きく成長させることはできません。

最大の課題は、全員を同じテーブルにつかせ、小さな個別の成功が必ずしも大きな全体像に貢献するとは限らないことを理解してもらうことです。

パブリッシャー、選手、チームに我々の目標を理解してもらうには、それぞれが自分たちの利益だけでなく、より大きなビジョンを共有する必要があります。

もちろん、パブリッシャー同士は時には競合関係にあります。同じMOBAジャンルの中にも複数のタイトルがあり、それぞれが市場シェアを獲得しようと競っています。

しかし、私たちの関心はそこにはありません。私たちが目指しているのは、すべてのゲーム、すべてのeスポーツが共に成長することです。

——日本には、格闘ゲームをはじめ、『Apex Legends』や『VALORANT』などに強いeスポーツコミュニティがあります。EWCの視点から、日本市場、そのコミュニティ、そして日本発のタイトルの可能性をどのように評価していますか。

Fabian Scheuermann:私は長い間、日本と関わってきましたが、日本は非常に興味深い市場です。『Apex Legends』や格闘ゲームのタイトルを見ると、日本は世界でもトップレベルの選手を輩出しています。一方で、日本市場は今も非常に独自性の強い市場でもあります。

他の市場では、世界王者になることを目指して競う傾向があります。一方で日本には、まず日本国内で一番になることを強く目指す文化があります。そこが非常に面白い点です。

我々の目標は、日本のeスポーツ選手や日本のファンを、EWCが目指しているものにもっと近づけることです。

そのため、日本のファンにとって親しみのあるタイトルでありながら、同時に国際的にも通用するタイトルを選んでいます。JRPGをはじめ、日本国内では非常に強いタイトルが数多くありますが、それらが必ずしも同じ形でグローバルにつながるわけではありません。だからこそ、日本市場で受け入れられ、なおかつ日本を世界とつなげられるタイトルのバランスを見つける必要がありました。今後、日本市場がこのグローバルコミュニティに対してさらに開かれ、より深くつながっていくことを期待しています。

最終的には、日本を世界に届け、日本の選手たちの素晴らしさを世界に示したいと考えています。


「EWCをウィンブルドンのような主要イベントにし、eスポーツを世界的なトップスポーツへ引き上げること」この最終的なビジョンを鑑みると、DJ Snakeをはじめとした豪華アーティストが出演するオープニングセレモニーや、世界中のパブリッシャーをひとつの大会に収めることの意図が見えるでしょう。

既に特定のeスポーツコミュニティでは大きなイベントとして認知されているEWCが、今後どのようにウィンブルドンのような一般大衆にも認知されるような展開を迎えるのか、この野望とも思えるビジョンが形になっていく途中を、目撃しているのかもしれません。


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《Okano》

「最高の妥協点で会おう」 Okano

東京在住ゲームメディアライター。プレイレポート・レビュー・コラム・イベント取材・インタビューなどを中心に、コンソールゲーム・PCゲーム・eスポーツについて書きます。好きなモノは『MGS2』と『BF3』と「Official髭男dism」。嫌いなものは湿気とマッチングアプリ。

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