ゲーム実況の視聴者連携とは?「見るだけ」の視聴者を"お客様"に変える技術【CEDEC2026】

視聴者が配信に介入する新たなゲームデザインと収益モデルを解説、複数プラットフォーム対応と非対称設計が今後の鍵

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ゲーム実況の視聴者連携とは?「見るだけ」の視聴者を"お客様"に変える技術【CEDEC2026】 全 27 枚 拡大写真

2026年7月22日から24日にかけて、パシフィコ横浜 ノースにてゲーム技術者やコンピュータエンターテインメントのエンジニアらを対象とした、国内最大級のカンファレンス「CEDEC 2026」が開催されました。

12会場に分かれて数多くの講演者がさまざまな講演を行う中、22日に株式会社ヘッドハイ代表取締役の一條貴彰氏がレギュラーセッション「ゲーム実況視聴者にインタラクティブな体験を提供する:「マルチ”動画配信”プラットフォーム対応」の展望』」を実施しました。

世界的にインディゲームが広まり、支持を集めるなかで、動画配信プラットフォームとの連携を取り入れているゲームが多数販売されています。その中でいくつかの事例をあげ、配信者と視聴者の相互インタラクションを高めるためにどういったゲームデザインを採っているのか、どういったゲーム販売の戦略を敷いているのか、そして市場がどのように変化していくのか、詳しく解説しました。

一條氏は、ゲーム配信プラットフォームと連携したゲームをあげるまえに、「視聴者とはだれのことか」「マルチ動画配信プラットフォーム対応」「ゲームのライブ配信がなぜ面白いのか」という原点から話題をスタートさせました。

ここで話される「視聴者」は、主に生放送・リアルタイムストリーム・ライブ配信の視聴者を対象として扱い、「視聴者連携機能」とは、ゲームの生配信を見ている視聴者がインタラクティブに参加できる仕組みのことを指しています。

「マルチ動画配信プラットフォーム対応」とは、複数の動画配信プラットフォームが配信者と視聴者の連携を提案しており、それがマルチに展開していくことを指しています。

一條氏は、「ゲームのライブ配信の面白さ」について、コメントなどを通じて配信者と同じタイミングで盛り上がり、その場に居合わせている感覚を得られるというプレミアム感にあると説明し、これが大きなコンテンツ力になっていると分析しました。

それだけではなく、プレイスキル/知識/リアクションといった「配信者本人の面白さ」にあると指摘し、視聴者は配信者がどのように考え、ゲームをプレイし、失敗/成功するのかを楽しんでおり、ゲーム実況は人間的魅力によってコンテンツ化され、成立していると分析しました。

ゲーム実況をマーケティングとして取り入れることも多くあり、ゲームへの認知度が上がることはもちろんある一方、視聴者が実際にゲーム購入・インストールするに至るのは少数ではないでしょうか。ゲーム実況を見ている層はそもそも、ゲームをプレイする時間がなかったり、「私はゲームをプレイする生活を送っていない」という自認を持っている方もいらっしゃるなかで、そこでゲームを紹介しても必ずしも売上に直結するわけではなく、マーケティングに活用するには限界があると指摘しました。

この問題を解決するキーとして、視聴者側がもっている「認知の欲求」だと一條氏は示しました。ゲーム実況の視聴者は、配信者に認識されたい、関わりたい、という欲求を強く持っており、ゲーム開発側としても新たな価値を提供できる余地があるといいます。

ゲーム実況を見ている視聴者を何らかの形で(インタラクティブ)ゲームへ参加させることで、配信内でコンテンツ体験をしてもらい、ゲーム開発会社への支払いを生み出す、そういったモデル構築ができるのではないでしょうか。その中で、動画配信プラットフォームが提案している視聴者連携機能は、ゲーム実況という場を収益化する新しい仕組みだと捉えられると述べました。

ここまでズバッと指摘し終えると、実例をあげていきました。

YouTubeやTwitchなどの動画配信サービスにあるコメント欄を使い、コメントに特定の言葉が書かれると、それをゲームプログラム側がフックし、ゲームへと反映するというものが最初期にあったとし、その実例として2014年に公開された「Twitch Plays Pokemon」を挙げました。

歴史的にも10年以上前に公開された古い事例であり、非公式MODとして出てきたもので、さまざまなコメントが飛び交ったことでゲームがまったく進行しなくなったため、途中でユーザーが投票モードに切りかえることができるようになったといいます。

こういった形でゲームコンテンツのインタラクティビティが注目される一方、PlayStation 4向けにコーエーテクモゲームスはかなり先行して視聴者連携機能を取り入れており、『無双OROCHI2 Ultimate』と『戦国無双4』をニコニコ動画やTwitchなどで配信している際に、PS4版ではシェア機能を使ったソーシャルフィードバック機能を搭載し、コメントに応じてさまざまなアクションをさせることができました。

さまざまな事例がこの10年近くでうまれるなか、ゲーム開発者/VTuberの荒国陣さんが個人制作したTPS『Streamer VS Zombie』では、YouTubeでゲームを配信すると、コメントが流れてきた時にコメントに合わせてゾンビが出現したり、視聴者数に合わせたバランス調整を搭載したりしているという事例を示しました。

また昨今注目をあつめている『Roblox』にあるホラーワールド「DOORS」では、2024年のアップデート以降、TwitchおよびYouTubeにおいて配信を見ている視聴者がこのゲームの中に直接関与できる仕組みが提供されたとしています。視聴者がチャットに数字を入力すると、ゲーム内でさまざまな選択やイベントを発生させることができます。

ですがこういったコメントを使った視聴者参加は、コメント機能本来の使い方をしていないため、動画プラットフォーム側がルールを変えてしまう可能性があります。そこで登場したのが、動画サイト上で視聴者が操作するUIを直接描画しようというシステムです。

Twitchが公式提供している拡張機能フレームワーク「Twitch Extensions」は、動画の上でHTML、CSS、JavaScriptを動かせ、オーバーレイUIを描画する仕組みとなっています。

またTwitchの有料通貨である「Twitch Bits」と連携しており、視聴者が特定のアクションを起こす際に課金される仕組みになっており、Extensionsを開発した方への分配も行われるうえに、すでにTwitchにいる数百万人のユーザーと決済インフラをそのまま利用できるのが大きな利点になります。

具体的な事例として、『Borderlands 3』と『Baldur's Gate 3』の2作をあげました。前者では、視聴者が武器ステータスを閲覧したり、カスタム投票を行ったりできる機能が実装されており、後者ではパーティーメンバーの装備やステータスなどをリアルタイムで閲覧し、キャラクターの選択肢を投票で決めることができました。

また『Cult of the Lamb』では、動画の視聴者が信者として登場できるほか、そのアバターがかなり細かくカスタムできるという面白さがありました。投票による支援や妨害を行うだけでなく、Twitchポイントを消費することでゲーム内アイテムを通し、配信者へ還元できるシステムもあります。

こうしてみると、配信者と視聴者の相互関係をかなり意識したシステム構築は、ここ10年の中で行われてきたことがわかります。

こういった事例を実現するプラットフォームやSDK(Software Development Kit)は様々あります。

先程まで話題に上がっていたTwitch Extensionsは、視聴者の操作を受け付けるUIではあるものの、それはUI部分の描画であって、大量の視聴者からコマンドをさばいて反映するシステムが必要になります。加えてゲーム本体と通信し、反映するシステムも必要です。

そういったSDKとして、一條氏は「Muxy Gateway SDK」を例にあげました。ゲーム開発者向けの通信側SDKで、PC、コンソールに対応しており、今まで紹介したような、ゲーム内イベントを視聴者が発生させる、ゲーム内のデータをTwitch Extensionに表示する、投票するといったことが使えるようになっています。

もう1つは「Crowd Control」です。Crowd Controlはゲーム開発者向けではなく、基本的にMOD制作者向けの通信側ツールで、ゲーム会社とは関係なく機能追加することができます。今まで発売されたレトロゲームや既存作に対してMOD制作者がMODを作成し、視聴者連携できるようになるパターンが多いといいます。厳密にはゲームの規約に抵触する可能性もあるケースにもなりえると一條氏は指摘しました。

Crowd Control Coinsとして独自通貨をつかい、収益の80%が配信者へ分配されるビジネスモデルも構築されています。『Only Up!』『Lethal Company』などで公式・非公式的に使われていると紹介しました。

すこし毛色の違う例として、独自のウェブサイトとアプリをつかって視聴者連携を提供しているものとして、「Mirrativ(ミラティブ)」をあげました。

「ミラティブ」は配信アプリの中にゲームが直接組み込まれており、配信者と視聴者がシームレスに共同プレイできるシステムを組んでいます。そこにギフティングを連携させ、視聴者が配信画面へ直接ギフトも送れる形になっています。

加えて「Third」というサービスでは、YouTubeやTwitchを使用し、ウェブサイト上にボタンを並べてクリックするとゲーム側に反映させるというSDKとなっており、ギフティング収益がゲームコンテンツを持つ制作会社へ直接還元されるシステムになっています。

こうしてみると、視聴者がゲーム配信へと関わるのには4つのパターンがあると一條氏はいいます。

  • アバターが登場するタイプ(視聴者や敵が登場する)

  • リアルタイム介入(アイテムや敵が現れる)

  • 投票/意思決定(物語やキャラクターの今後を決める)

  • 情報開示/可視化(詳細ステータスを見られる)

こういったタイプに分かれており、技術的な仕組みもさまざまな類型がみられます。

  • コメントを利用した擬似的実装

  • 動画プラットフォームが専用機能を提供している(例:Twitch Extensions)

  • 独自のウェブサイト上でUI操作させるサードパーティ型(例:Muxy Gateway SDK、Crowd Control、Thirdなど)

  • 動画配信アプリがゲームを内包しているミニアプリ(例:ミラティブ)

  • 動画視聴する環境と視聴者が操作して介入する環境を別々に置くコンパニオンアプリ型

こういった形に分かれるとしました。

今回のまとめとして、動画配信と視聴者の連携を導入するためには、設計方針として、配信者と大人数の視聴者が同時に関わることを前提とした「非対称なゲームデザイン」を考えなくてはいけないと指摘しました。

配信者であるゲームプレイヤーが、邪魔ばかりされすぎるとイヤな気持ちになってしまうので、お助けアイテムとのバランス感、視聴者側の介入頻度やオン/オフまでコントロールできるようにしないと、ゲームがカオス化してしまい、ゲームにならなくなる可能性をあげました。

体験として提供したいのは、やはり視聴者と配信者が直接関わっているという体験をうまく考えさせること
配信者が視聴者の名前を呼んで「何するんだよ」と一言言わせたら"勝ち"
そういった設計が重要だといいます。

また視聴者側としても、何百円、何千円をアイテムに注ぎ込んでリターンがありますし、配信者と直接関われたという体験を得ることができ、そういった目線も重要だといいます。

一條氏「Free to PlayをもじってPay to Winと言われたりしますが、今後こういった機能がスタンダードになっていくと、Pay to Joinになってくるかもしれません。高額課金者ばかりが機能を使って出てくるようになってしまうかもしれないので、みんなが平等に参加できているように思える設計が望ましいと思います

今後は、視聴者介入を促進させるメッセージアプリや動画プラットフォームが増えていくことが予想されるそう。プラットフォームに依存せずチャットギフトを受け取れるように、さまざまなSDKを調査・対応できるようにして、複数の動画配信プラットフォームへ展開できる構造を持つことが求められると展望を話しました。

加えて、ゲーム開発会社がゲームを直接遊ばない視聴者層に対しても、ゲーム配信や動画を介してコンテンツ体験を提供し、その対価を得るビジネス(マネタイズ)モデルを構築していくべきだと強調しました。ゲームを持っていない視聴者にもゲーム体験を伝えていく、ゲームを遊んでいるけどもゲームだと感じさせない、そういった設計思考が求められるのではないかと語りました。

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(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)

《草野虹》

福島・いわき・ロック&インターネット育ち 草野虹

福島、いわき、ロックとインターネットの育ち。 RealSound、KAI-YOU.net、Rolling Stone Japan、TOKION、SPICE、indiegrabなどでライター/インタビュアーとして参加。 音楽・アニメ・VTuberやバーチャルタレントと様々なシーンを股に掛けて活動を続けている。 音楽プレイリストメディアPlutoではプレイリストセレクター(プレイリスト制作)・ポッドキャストの語り手として番組を担当している。

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