そんな懐古厨のアンテナにピピッときたのが今回取り上げる3DSダウンロードソフト『9-in1 アーケードコレクション』です。「レトロな8ビットグラフィックとサウンドが満載のクラシックな「アーケードゲーム」コレクションが登場!」(公式サイトより引用)ということで、 我々のノスタルジアをどれほど掻き乱してくれるのか、早速プレイしてみました。
■1本約33円。駄菓子か。
まずポイントは300円という価格帯。クレジットカードで追加できる金額の500円よりも安い!しかも1ゲームの中に9つものゲームが入っているので、単純に割ると1本あたり約33円。これはもう駄菓子感覚でいただけてしまいますね。
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ロゴをチェック。なんていうか…MS標準フォントを打ちっぱなし感がしますが…
■LSIゲームっぽいレトロ感
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9つのゲームの内容は以下の通り。
・レンガブレーカー
オーソドックスなブロック崩し。連続してブロックを崩すとパワーアップアイテムが降ってきます。動きはまったりめ。
・スペシャルデリバリー
世界的人気アクションゲーム風の強制横スクロールゲーム。「ゲームセンターCX」でおなじみ、“ギリジャン”を駆使するシーンもあり。
・忍者モンキー
1画面固定式のシューティング。中央の忍者から放射状に発射される手裏剣で敵を倒します。忍者はシルエット状で『ゲーム&ウォッチ』のよう。
・ボックスロジック
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倉庫番風のパズルゲーム。持ち時間4分。1度クリアしたステージはアンロックされて何度もプレイできます。Aボタンまたはタッチパネルで1つ前の動作に戻ることも可能。リトライもできますが、制限時間のカウントはそのままなのでリセットしてしまったほうが早いかも。
・もつれたスペース
1画面固定式の全方位シューティング。タイトルの出オチ感が半端ない。
・パーフェクトランディング
落下型アクション。敵に当たらないよう左右に上手く避けつつコインを獲得して地上を目指します。
・ソーサールーム
トップビュー型パズルアクション。背後にどんどん増えるプロテクターと壁に当たらないようにしながらアイテムを集めます。
・悪魔の迷路
1画面固定式アクション。敵の視界に入らないように注意しつつ、姿を消すアイテムなどを駆使して星を集めます。
・幽霊の籠
落ち物アクションパズル。同じ色の幽霊(ブロック)を4つ揃えて消します。一定時間がたつとランダムで幽霊が現れるのでせっかく組み立てた連鎖の段取りが崩壊してしまうかも…!
9つ書き連ねるとそれなりの量ですが、基本はLSIゲーム機などでよく遊んだオーソドックスな内容。操作説明はありませんが、十字ボタン、Aボタン、Bボタンで全てのゲームが遊べます。
元々は海外のゲームで、海外では10本入りで配信されていたとか…確認したところ、スペー○イン○ーダー風のゲームが削除されていました。大人の事情か…
■あくまでレトロ「風」
パワーアップアイテムなどの独自要素はありますが、オーソドックスなものはオーソドックスなまま、実にシンプルなゲームです。各ゲームにキャラクターはあまり感じられず、これぞ「THE・コンピューターゲーム」といった雰囲気を感じます。
ゲームは確かにレトロなのですが、全体的な雰囲気はそうでもなく、無駄に立体視だったり、背景だけ今時風だったり、負けると音声が入ったり(しかも海外のゲームなのでやたら外人っぽくて笑いを誘う)、やや中途半端。ぜめて「ファミコン風」とか、世代を意識してデザインをすればよかったのでは?と感じてしまいます。8ビット機っぽい音楽はそこそこ軽快なのですが、この中途半端さのせいで浮いてしまっている感が否めず。そのミスマッチがチープさに拍車をかけてしまっています。
■微妙なローカライズがむしろレトロ
チープさはデザインだけではなく、ローカライズされた文言からも感じます。これ、直訳だよね?という文言があちこちで見受けられていっそほほえましいです。
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ですがこの微妙なローカライズが独特のテンションを維持してくれるおかげで、ネタゲー好きな一部のプレイヤーのやる気を奮起させてくれることは間違いなしです。残念!負けました!このテンション!嫌いじゃない!
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そしてゲームのタイトル。内容の部分でもちょこっと触れましたが、出オチ感が漂っていてすばらしいセンスです。特に秀逸なのが「もつれたスペース」。なんとなく哲学的に聞こえますがただの直訳ですねほんとうにありがとうございます。「幽霊の籠」にいたってはタイトルから落ちゲー要素をまったく感じません。
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このポップさで、「幽霊の籠」。
この絶妙なセンス、懐かしいなと思ったら、昭和の洋楽につけられた邦題でした。 イギー・アンド・ザ・ストゥージズの「淫力魔人」のような。例えばピンク・フロイドの「もつれたスペース」って言ってみるとなんだか名盤っぽく聞こえませんか?
■駄菓子メーカーでいうところの、ジ○ック製菓
微妙に外したレトロ感、ネーミングセンス、一本あたりの単価の安さ、これらを総合すると、「王道から外れた駄菓子」という形容がしっくりくるのではないでしょうか。コンビニでも売っているオシャレな駄菓子ではなくて、ダジャレや死語を使ったいい意味で「ダサい」駄菓子。これに該当するのがジ○ック製菓の駄菓子群です。タイトルはしょーもない!って思うけど中身は普通に食べられる、そんな駄菓子に近いものを本作から感じました。ゲーム性からはノスタルジアをあまり感じませんでしたが、別の角度からノスタルジックな気分にさせてくれる本作、駄菓子をつまみながら嗜んでみてはいかがでしょうか?
『9-in1 アーケードコレクション』はニンテンドーeショップにて300円(税込)で配信中です。
(C)2014 Gamelion. Licensed to and published by Teyon.
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■著者紹介
みかめゆきよみ
ゲーム好き、日本史好きの漫画家兼フリーライター。
ゲームはジャンル問わずなんでもござれ。難しければ難しいほど燃えるドMゲーマーです。
歴史・ホラー漫画、歴史コラム、イラストなど雑多に活動しています。
サイト「車輪の真上」
http://zwei.lomo.jp/syarin/