『FGO』も大ヒット! ゲームブランド「TYPE-MOON」18年の歩みを遡る─年末年始も関連作のアニメラッシュ【特集】

生み出す作品のことごとくが注目を集め、アニメ化を始めとするメディアミックス展開を辿ることも多々。近年では、iOS/Androidアプリ『Fate/Grand Order』(以下、FGO)の成功にも大きく貢献した、有限会社ノーツのゲームブランド「TYPE-MOON」。

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◆続編が待たれる『魔法使いの夜』、幾度も巡る「空の境界」



PC向けゲーム『魔法使いの夜』がリリースされたのは、2012年4月12日。2010年に登場した『Fate/EXTRA』と、2012年11月29日発売のPS Vita版『Fate/stay night [Realta Nua』も挟まれる形となっており、躍進を続ける『Fate』シリーズの最中に発売されました。

ですが、小説として世に生み出された原作版「魔法使いの夜」の誕生は更に遡り、『Fate』シリーズはもちろん、『月姫』や「空の境界」よりも古い1996年。今から21年も前にその原点が生み出されており、TYPE-MOONの中核的な存在の一人である、「空の境界」を執筆した奈須きのこ氏曰く「友人以外の第三者に読んでもらうことを前提とした長編小説を一冊本まるごと書き上げたのは、「魔法使いの夜」が最初」とのこと。出発点とも言える作品になっています。

TYPE-MOONの各作品は、共通する世界設定を持っていることも多く、重要なキーワードを共有しているのも特徴のひとつ。その軸となる部分やベースは、原作版「魔法使いの夜」で培われたものが少なくありません。一例として、TYPE-MOON作品では「魔法」と「魔術」を同一視せず、魔法はごくごく一部の者のみが使える特別な神秘、奇跡的な手段として扱われる傾向にあります。

そんな「魔法」を使える「魔法使い」である蒼崎青子を主人公に据え、生粋の魔女・久遠寺有珠や田舎出の少年・静希草十郎との共同生活を描いた「魔法使いの夜」。奈須氏やTYPE-MOON作品の原点とも言える小説が、PC向けにゲーム化すると決定した際には、やはり大きな話題となりました。

もちろん、PC版『魔法使いの夜』発売後も、感想や考察がネット上を飛び交ってにぎわいを見せましたが、原作版・PC版ともに、全三話構成の一話目に過ぎません。独立した物語として結末を迎えたものの、全体としてはまだ完結していないため、その全てを知りたいファンにとっては待ち遠しい想いを抱える時間が、今もなお続いています。


この原作版「魔法使いの夜」の後に執筆され、2001年に同人誌という形で頒布されたのが小説「空の境界」(全2冊)です。当時のTYPE-MOONは同人サークルとして活動しており、後述する『月姫』のリリースを経て人気サークルとして名を馳せていました。

「空の境界」自体は、同人誌として登場する前からその一部をweb小説として公開し、また『月姫 PLUS-DISC』にも収録。そのため、「空の境界」の存在は既に知られており、完結までを含めた「空の境界」の登場を多くの方が待ち望んでいました。

「空の境界」に向けられた熱は、同人版の頒布だけに留まらず、2004年6月に講談社ノベルスにて商業デビューも果たします。しかも、5千部限定の愛蔵版も用意され、9,800円という価格にも関わらずわずか2時間で完売。「小説家・奈須きのこ」のデビュー作は、同人版の活気に劣らぬ勢いを飾る形に。

あらゆるモノの「死」を見る「直死の魔眼」という力を持つ少女・両儀式の周囲で巻き起こる奇怪な事件を通して、式の内面や変化が綴られていく「空の境界」。時系列をあえて前後させた構成が、読み手の思考と考察を刺激する編成となっています。

「空の境界」は、第一章から第七章、そして作品名と同名の終章が軸となっていますが、後に公開された「未来福音」や「終末録音」、漫画「1998年」なども本シリーズのひとつ。これらも様々な時間軸に振り分けられており、物語全体を紐解く手応えを読者に楽しませました。

そんな「空の境界」は、劇場アニメやTVアニメ化なども行われており、両儀式の物語をより視覚的に味わうことができます。また、講談社文庫版(全3冊)が販売されたほか、20周年記念版が2018年1月に登場。この20周年記念版は全三巻がばら売りで展開され、「未来福音」「終末録音」も収録されるので、未読の方はお見逃しなく。

web小説、同人頒布版、講談社ノベルス版に文庫版、20周年記念版と、幾度も立ち返るようにその姿を現す「空の境界」。さらに、TVや劇場という別の手法でも描かれ、その魅惑的な世界は折々で私たちの前に帰ってきます。『Fate』シリーズを“一生かけて楽しむ娯楽”とするならば、「空の境界」は“幾度も巡る出会い”が約束された物語なのかもしれません。

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《臥待 弦》

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