◆「TYPE-MOON」がもたらした『月姫』という奇跡
ゲームブランドの前身となる同人サークル「TYPE-MOON」。その中心人物となるのは、ユーザーを魅力する物語を次々と生み出す奈須きのこ氏と、奈須氏の世界をビジュアル面で表現してきた武内崇氏の2人。多くのスタッフに支えられながらも、そのスタイルは昔も今も大きく変わることはなく続いています。
「TYPE-MOON」が本格活動をする前に、「空の境界」のweb公開なども行われていましたが、当時のインターネット事情は今ほど手軽ではなく、スマホどころか携帯の一般普及もまだまだ。基本的にPCが必須で、回線契約も今ほど高い割合ではありませんでした。
今の時代に作品を発表するなら、インターネットを利用するのが最も手軽で拡散力も高い手段です。しかし、当時のネットはまだそこまでの力はありません。そのため、奈須氏が描く物語を広く知ってもらいたいという武内氏の想いゆえに、ネット以外の手段を模索。そんな2人が選んだのは、コミックマーケットを始めとする同人誌即売会での頒布です。
しかし同人誌即売会は、文書量の多い小説を広めるにはあまり適していません。そのため、小説の頒布ではなく同人ゲームをリリースする形で、より多くの方に発信しようと考えました。2人が元々ゲーム好きで、また前述の通り当時のPCゲーム市場に活気があったことも、その一因でしょう。
無論、方向性を定めたからといって、簡単に制作できるわけではありません。むしろ、優れた制作ツールが手軽に手に入る今と違い、個人レベルでの作業環境には様々な苦労がついて回ります。しかも『月姫』は、原稿用紙換算で五千枚にも及ぶ長編。それに見合うプログラムやスクリプト作業、グラフィック、音楽、背景などの素材となれば、どう考えても膨大な量です。
主人公である遠野志貴と、真祖たる吸血鬼のアルクェイド・ブリュンスタッドが出会ったことで幕を開けた『月姫』。そこに、「埋葬機関」の一員であるシエルや、志貴と離れて暮らしていた妹・遠野秋葉、遠野家の使用人である翡翠と琥珀などを交えて、「吸血鬼と殺人鬼の物語」を描き上げたのが本作です。
当時も同人ゲームは活気づいていましたが、『月姫』のボリュームは商業作品レベル。それに類する同人作品はほぼ見あたらず、この1点だけでも類いまれな作品であることが分かります。発売を予定していた2000年夏には、ヒロイン「アルクェイド」「シエル」のシナリオだけを収録した『月姫 ～半月版～』をリリースし、4ヶ月後に一通りのシナリオを含めた初版の『月姫』の頒布にこぎ着けました。
ここから更に、問題点の修正とオマケを収録した『Plus-Disc』、誤字脱字の修正などが行われた再版なども登場。初版がリリースされる以前だけでなく、頒布した後も慌ただしい動きが続きましたが、それは同時に反響の大きさの現れでもありました。初版頒布の当日だけでも、持ち込んだ800本が完売。その後も口コミで知名度が増し、瞬く間に高い人気と注目を集めました。
当時は、一サークルの作品をダウンロード販売するなど考えられず、即売会に持ち込むか、「虎のあな」などの同人ショップに委託するか、通販で販売するか、この3つが主な手段です。しかし、一度人気に火がついた後は、どの手段でも容易に手に入れられず、プレミア価格で取引されることも少なくありませんでした。
2001年にはファンディスクとなる『歌月十夜』が頒布され、2002年には同人ゲームサークル『渡辺製作所』と共同で開発された『MELTY BLOOD』も登場と、話題が尽きず常に新たな刺激がもたらされたのも、『月姫』が長く愛された理由のひとつと言えます。この展開の仕方は後の『Fate』シリーズにも受け継がれており、作品に新たな血を注ぎ続けるTYPE-MOONのスタイルは『月姫』から生まれたのかもしれません。
そして『月姫』は、その後もTVアニメ化や『MELTY BLOOD』のアーケードゲーム展開など、更なる飛躍を見せていきます。この時点での『月姫』は、あくまで同人作品。近年では同人作品の商業化は珍しくありませんが、当時はかなり希有な例でした。
また、『月姫』のTVアニメ化や、同人版の設定資料集が「月姫読本 Plus Period」として出版されてはいますが、ADVゲームの『月姫』そのものはまだ同人版しかないため、多くの方がリメイクを待っているのが現状です。商業作品として登場した『Fate/stay night』の大ヒットも驚異的ですが、ネットも普及も広まっていない当時、同人ゲームという限られた展開ながらも多くの支持を得た『月姫』は、まさに奇跡的な一作と言えます。
その反響や発展は、当時では考えられないほどでしたが、その奇跡はもちろん降ってわいた幸運ではなく、努力と研鑽によって生み出されたもの。遙かな頂を目指して登り続けたからこそ得られた栄冠でした。「TYPE-MOON」だからこそ、『月姫』という奇跡を生むことができたのでしょう。
そんなTYPE-MOONの中核を為す奈須きのこ氏と武内崇氏は、中学校の入学式直後に初めて出会います。きっかけは、消しゴムを忘れた奈須氏が、武内氏に「消しゴムを貸してくれ」と声をかけたこと。この出来事こそが、後に多くのゲームファンを虜とした数々の作品を生み出す起源であり、純然たる奇跡だったのかもしれません。
「TYPE-MOON」の歩みと長い歴史を紹介するため、個々の紹介は簡単なものとなってしまいましたが、その原点を目指した旅路はいかがだったでしょうか。TYPE-MOONが生み出した作品の多くは、ゲーム、アニメ、映画など、その多くが今もアクセスしやすい環境にあります（『月姫』については、リメイクの登場を気長に待ちましょう）。
しかも、この年末年始には、関連作のアニメが放送予定。AbemaTVでは、劇場版「空の境界」とTVアニメ版「Fate/stay night [UBW]」を配信します。そして12月31日には、特番「Fate Project 大晦日TVスペシャル2017」内にて、新作アニメとなる「Fate/Grand Order -MOONLIGHT/LOSTROOM-」と「Fate/Grand Order × 氷室の天地 ～7人の最強偉人篇～」の2本を放送。来年1月からは、TVアニメ「Fate/EXTRA Last Encore」の放送もスタートします。
年明けには『FGO』も新たな展開を迎える予感をひしひしと感じさせます。数多くのTYPE-MOON作品を遊ぶもよし、アニメを楽しむもよし、『FGO』に打ち込むもよし。残り少なくなった2017年と新たな2018年も、TYPE-MOONを満喫しましょう！
【AbemaTV】
■【AbemaTV独占先行・日本初】劇場版「空の境界」 第一章～第五章
https://abema.tv/channels/anime24/slots/9N2CV7kcgY9rrs
■【AbemaTV独占先行・日本初】劇場版「空の境界」 第六章～終章
https://abema.tv/channels/anime24/slots/9a92JBxzuVbq59
■TVアニメ「Fate/stay night [UBW]」#00～01
https://abema.tv/channels/anime24/slots/9N2CWw87Mh1JtF
■TVアニメ「Fate/stay night [UBW]」#02～05
https://abema.tv/channels/anime24/slots/9N2CUC4c7f9aMu
■TVアニメ「Fate/stay night [UBW]」#06～09
https://abema.tv/channels/anime24/slots/DgvrShxgn1CuRh
■TVアニメ「Fate/stay night [UBW]」#10～12
https://abema.tv/channels/anime24/slots/9N2CUVvycKpyro
■TVアニメ「Fate/stay night [UBW]」#13～16
https://abema.tv/channels/anime24/slots/9N2CUW4wqebgT1
■TVアニメ「Fate/stay night [UBW]」#17～20
https://abema.tv/channels/anime24/slots/9a92KQ4pqpj3JX
■TVアニメ「Fate/stay night [UBW]」#21～24
https://abema.tv/channels/anime24/slots/9N2CWKgVK2Kixf
■TVアニメ「Fate/stay night [UBW]」#25
https://abema.tv/channels/anime24/slots/9a92MD6V5QLWLw
【『Fate/Grand Order』公式サイト】
■【カルデア広報局より】「Fate Project 大晦日 TVスペシャル 2017」放送決定！
http://news.fate-go.jp/2017/tbsp1231/
