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韓国でのローンチを経て、2017年11月に日本国内でのリリースが始まった『デスティニーチャイルド(以下、デスチャ)』。インサイドでは(“フトモモニーソ祭”含む)多数の記事を掲載してきました。そのおかげか、韓国に建つ『デスチャ』開発元・SHIFT UP社、BGMを手がけるESTIMATE社へ訪問できることになったのは前回の記事の通り。まだ読んでないという方は、ぜひ下記リンクより「SHIFT UP潜入記事」をご一読ください(かわいい犬の写真もありますよ!)。
『デスチャ』の生まれた場所・SHIFT UPへ潜入
『デスチャ』の魅力ってなんだろう―。そう考えた時に出てくるものはたくさんあると思います。Live2Dはもちろん、バトル、ストーリー、チャイルドなどなど…。その中でも、絶対に外すことができないのが、BGMです。平田志穂子さんが歌うオープニング含め、『デスチャ』の随所で流れる素敵BGMは、いちスマホゲームの域を超えたクォリティです。
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そんなBGMの製作を一手に引き受けるのが、今回訪問したESTIMATEおよび、代表を務めるサウンドプロデューサー・ESTi氏です。ヒョンテ氏と同じく、日本での活動も多いので、ご存知の方も多いでしょう。『デスチャ』はヒョンテ氏とESTi氏の合作であり、故にこの2人がいなければ産まれることはなかったのではないでしょうか。それほどまでに、本作においてESTi氏とESTIMATEの存在は重要なものになっています。
というわけで、本稿ではESTIMATEへの取材の様子と、ESTi氏に伺った様々なお話、そして最後にはヒョンテ氏とESTi氏のインタビューをお届けします。読者プレゼントもありますので、ぜひ最後までお楽しみください。
◆ESTIMATEってどんなところ?
ESTIMATEはSHIFT UPと同じフロアにあり、前回の記事でもご紹介したバーラウンジを介して行き来することができます。フロアは2つのスタジオと1つのオフィスで構成されています。
さて、色々と案内していただく前に、まずはESTi氏への挨拶から。公認サポーターたちと一緒に作業をしていたESTi氏の元へ。ちなみに、こっそりヒョンテ氏もついてきていました(笑)。
――ESTiさん、本日はよろしくおねがいします!
ESTi氏:はい、よろしくお願いします。
――さっそく、いろいろとお話を伺っていければと思います。現在、ESTIMATEでは何人くらいの方々が働いているのでしょうか。
ESTi氏:私を含めて5人です。この5人で、『デスチャ』のほぼすべての楽曲を担当しています。
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――5人!少数精鋭ですね。ESTIMATEの環境に関してはいかがでしょう。
ESTi氏:ESTIMATEの社員は、私と同じように日本の音楽が大好きで、日本で活動したいと思っていました。『デスチャ』の楽曲は日本で発表することを前提になっているので、各々のクリエイティビティを存分に出せていると思います。日本の音楽が好きで活動したいと思っても日本の現地に生活していないわけで活動が難しい場合、K-POPや韓国の音楽を意識して作ることがほとんどです。しかし、ESTIMATEの社員たちはそうした場所の制限を気にせず、韓国で音楽を作っていますが日本及び世界のお客さんに聴かせることを想定しながら作っています。ESTIMATEではそれが実現できていて、彼らは日本の音楽をたくさん聞いてアイディアを出せているので、いい労働環境だと思いますよ。
――海外の方が日本で、しかも音楽だけで食べていくのは難しいのでしょうか。
ESTi氏:歌手やアイドルはしっかり事務所があり活動の広場がありますが、BGMの仕事はそうしたものがハッキリ見えないので難しいですね。韓国ではアニメ製作会社も少ないので、たとえば日本のアニメ音楽を作りたいと考えている人は、ほぼゲーム会社で働いています。
――ちなみに、今現在『デスチャ』の楽曲をどのくらい作られているのでしょうか。
ESTi氏:プロジェクトがスタートしてから約1年が経ちますが、100曲は超えていますね。では、実際に作業現場を見てみましょう。
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案内されたオフィスには、ギターやドラムなど音楽制作に欠かせないような楽器はもちろん、やっぱりフィギュアが沢山!好きなものに囲まれていると作業が捗るのはみんな一緒のようです。
――今はどの様な作業をされているのでしょうか。
ESTi氏:サントラの試聴用動画を作成しています。CDでも発売するのですが、やはり今はみなさんYouTubeを見ていることが多いので、そちらにアップする予定です。
――サントラ!いつごろ発売になるのでしょう。
ESTi氏:2018年内を予定しています。ESTiという人がいたんだという思い出になるものを目指して作っています。部屋にコレクションしていただいてもいいので、どうぞよろしくお願いします。
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――それは楽しみですね。1曲作成するのには、通常どの程度時間がかかるものなのでしょうか。
ESTi氏:長くなると2日ですね。たとえば、エイプリルフールのストーリーでは、企画は1ヶ月前から行っていますが、実際に曲の作業をするのは2日で、アイディア出しなどはもっと時間がかかります。『デスチャ』では、イラストができてから楽曲制作の作業を開始します。
――基本的にキャライラストが完成してから、曲作りをはじめるのでしょうか?
ESTi氏:そうですね。ヒョンテさんの手が速いので、イラストをいただいたらまず曲ではなく声を考えます。そして、声優さんが決定すると次に声に合わせてBGMを製作します。『デスチャ』ではキャラクターが大事なので、ボイスが決まった後に合わせて音楽を作りますよ。ヒョンテさんの場合、軽くラフを描いたつもりがノッてきちゃって「完成しちゃいました!」ということもあるので、合わせて急いで作ることもあります(笑)。
――それは大変そうですね(笑)。オフィスには日本の作品のフィギュアが多いようですが、ESTiさん自身が影響された作品はありますか?
ESTi氏:はい。1994年、私が中学2年生だった頃、先輩が「新世紀エヴァンゲリオン」のビデオを見せてくれて、日本の音楽に興味を持ちました。ヒョンテさんにも「エヴァ」を見せて、それが『デスチャ』までつながっているので、とても思い入れのある作品ですね。
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――『デスチャ』の原点は、ある意味「エヴァ」なんですね。他に影響を受けたものはありますか?
ESTi氏:90年代の日本のJ-POPにも影響を受けています。「エヴァンゲリオン」の音楽が好きだったのですが、父に頼んだらアイドルのベストアルバムを間違って買ってきてしまって(笑)。ただ、結果的にそれは『アイドルマスター』の仕事(※)につながりました。なので、私の『アイマス』の楽曲は、昭和っぽい独特のメロディになっているのだと思います。
(編集部注:ESTi氏は『アイドルマスター2』『アイドルマスターシンデレラガールズ』に楽曲を提供している)
――日本といえば、『デスチャ』の楽曲には平田志穂子さんを起用されていますよね。どの様な経緯で決まったのでしょうか。
ESTi氏:『デスチャ』の(韓国での)リリース時期が決まった頃は、ちょうど韓国のスマホゲームが盛んな時期だったので、宣伝する際には有名な歌手や芸能人を起用することが多かったんです。私たちも探したのですが見つからず、では日本の方から選んでみようと。それもとても難航したのですが、ヒョンテさんに好きな歌手を聞いたら、『ペルソナ』の音楽が大好きだったと伺いました。そこで私が思い切って平田さんにコンタクトをとってみたら、そこからはとてもスムーズに決まりました。ちなみに、平田さんの曲は全部好きですね。ヒョンテさんが好きな歌手さんを選び、その方に歌っていただいたことにとても満足しているので。
YouTube:https://youtu.be/EshW49Zi_pI
――平田さんとの楽曲作りはいかがでしたか?
ESTi氏:平田さんが学生の頃から好きだった海外のポップスを偶然私も好きで、お互い音楽的に通じるものがあったのではないかなと。かっこいい音楽を歌って欲しいと提案したらキャッチしてくれるので、主題歌の仮メロがない状態でも、平田さんは譜面だけ見てよくわかってくださいました。私もヒョンテさんも平田さんも、学生時代に海外の音楽に親しんでいるので、共通点が多いのも作品作りにはプラスになっていますね。
――ちなみに、韓国でも平田さんは人気がありますか?
ESTi氏:平田さんは、韓国では『ペルソナ』のイメージが強く、作品のファンの方々が入ってきていただけましたね。英語の歌詞を歌っていただけるので、ワールドワイドなプロジェクトである『デスチャ』にとてもマッチしていると思います。TVアニメの主題歌は、日本オリジナルのものなので、日本語で歌っていただきましたが、英語も日本語もお願いできてありがたいですね。
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――アニメといえば、そちらの楽曲はどのようなものになるのでしょうか。
ESTi氏:監督さんが選んだ『デスチャ』のBGMもありますが、オリジナルパートはオーケストラの収録を日本で行い、アニメ音楽をイメージして作っています。『デスチャ』の音楽は劇伴のように作りたかったので、室屋さんのストリングスもマッチして面白い楽曲になりましたね。
先程「エヴァ」の話もしましたが、「劇伴」という言葉を知ったのも「エヴァ」でしたし、ずっとアニメの音楽を作りたいとも思っていました。学生の頃から夢見たものが実現できていてうれしいですね。もっと若い頃にこうした機会に恵まれればよかったのですが、ESTIMATEを立ち上げて、フットワークも軽くなったからこそできるものだと思います。
――夢の実現、素敵ですね!
◆ESTi氏による生演奏&ユキカさんの「だよねだよね」
――ところで今、目の前に気になるものが…。これはクレオパトラでしょうか?
ESTi氏:はい、クレオパトラレイドに使われる楽曲「ピラミッドピアス」の試聴動画を作っているところです。
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――おお!日本ではまだ未実装なのですが、ゲーム内ではいつごろ聴けるようになりますかね…?
ESTi氏:4月中旬ごろに配信されると思います。今日はこの曲の生演奏と、初音ミクコラボの「だよねだよね」披露しますよ。さっそく、スタジオへ行きましょう!
――本当ですか!楽しみです!
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そうして案内されたスタジオがこちら。中には機材がぎっしりあるも、僅かな空きスペースに「エヴァ」や『アイマス』グッズが。生演奏は、クレオパトラレイドに使われる「ピラミッドピアス」と、『デスチャ』メインテーマの「Pathos(パトス)」アレンジバージョン「Pathos Refrain」(ゲーム起動時に流れるもの)の2曲。生演奏の様子は下記動画でお楽しみください!
YouTube:https://youtu.be/8R1ymB35xcg
YouTube:https://youtu.be/3b_TpOk6qXI
――生演奏、最高でした!ありがとうございます!1曲目の「ピラミッドピアス」は、どのようなイメージで作られましたか?
ESTi氏:クレオパトラは、幼い姿から少女、セクシーな姿へと色々な形に成長します。曲を初めて書いたときはエジプト的な雰囲気にしようと思ったのですが、キャラに成長要素があったので、年齢が見えるような曲にしようと考えました。そのため、音色はアラビアンですが、基本的にはキャラの成長を見せられるような重さのある曲になっています。クレオパトラのシナリオの中では、別のエジプトテイストの楽曲も聴けますよ。
――2曲目の「Pathos Refrain」はどの様な曲になりますか?
ESTi氏:今回演奏した「Pathos Refrain」は、メインテーマである「Pathos」を明るめにアレンジされたバージョンです。ゲームを起動した時のBGMとして使われていますね。「ピラミッドピアス」はまだ日本の方は聴いたことないと思いますので、日本の方もよく知っている、一番聴いている曲として演奏させていただきました。
――メインメニューで流れているBGMも「Pathos」ですよね。私も好きで、よくメニュー画面をつけっぱなしにして、お気に入りのチャイルドを眺めながら聴いています。
ESTi氏:実を言うと、この曲は「エヴァ」に関係しているんです(※)。これはヒョンテさんの口癖でもあって、“心を動かせる情熱”という意味で使われています。メインテーマとして使われているだけでなく、いろんなアレンジとして今後も使われると思いますよ。『デスチャ』はキャラがメインのコンテンツなので、曲が前に出てはいけないのですが、この曲に関しては、キャラより目立つことなくスッと耳に入る曲として、ヒョンテさんからも良い反応をいただきました。その時、『デスチャ』はキャラがあり、声があり、そして音がついてくるというバランスだと理解した思い出の曲でもありますね。
(※編集部注:TVアニメ版「新世紀エヴァンゲリオン」OP曲「残酷な天使のテーゼ」の歌詞に“パトス”というワードが含まれている)
――こんなところにも「エヴァ」が!ちなみに、初音ミクコラボの「だよねだよね」も披露いただけるとのことですが。
ESTi氏:はい、そちらはユキカさんにお願いしたいと思います。
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「Ragna Break Season 1 Cafe de Petit」のPVなどで「だよねだよね」の歌唱を担当した寺本來可(ユキカ)さん。彼女は、韓国で展開された実写ドラマ「アイドルマスター.KR」のキャストとして韓国へ渡り、その後も継続して韓国での活動をされています。今回は、「だよねだよね」を生披露していただきました!こちらも動画をおさえてきたので、以下よりどうぞ!
YouTube:https://youtu.be/wajNs7h1mDw
――ユキカさん、ありがとうございました!ESTiさん、彼女はどの様な経緯で『デスチャ』に関わるようになったのでしょうか。
ESTi氏:ユキカさんは、「アイドルマスター.KR」の活動で韓国にいらしていて、彼女の事務所の方から連絡をいただきました。そして、初音ミク用に作った「だよねだよね」を歌っていただきました。ユキカさんは韓国語も堪能なので、これからも『デスチャ』の新曲やキャラ声優などでお世話になりたいと思っています。
――それは楽しみです。韓国でも日本でも同じ声優さん、というのはかなりレアなキャラになりそうですね。
◆ESTi氏のこれから
――それでは、最後に少し、ESTiさん自身の今後について伺えればと思います。ESTiさんは事実上の引退を発表されていますが、現状を教えてください。
ESTi氏:実家が花屋で、そちらのお仕事をするために音楽の第一線から引くというイメージでTwitterに書いたのですが、それが大きな話題になってしまった感じですね。今までは個人の作家としての活動がメインでしたがそれは置いておいて、後輩たちをサポートとして、私の好きな音楽のアイディアやノウハウを引き継いていきたいと思っています。ゲーム音楽の範囲のなかで、自由な曲作りができる環境を作り、個人よりもサポーターとして活動するというスタンスに変わる形です。
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――『デスチャ』の音楽を担当されたのは、後輩にも仕事をさせたいという狙いがあったのでしょうか?
ESTi氏:そうですね。全曲私のプロデュースが入っていますが、半分ぐらいは後輩たちが作っています。私自身の曲作りの方式というものがあるので、いまはESTIMATEの社員にそれを教えて、将来的にはもっと大きな範囲でシェアして、おもしろい音楽、昔のMMORPGのテイストがする音楽を伝えていきたいと思っています。
――ご自身の音楽活動は今後されないのでしょうか?
ESTi氏:私としては『デスチャ』で一緒に作っている後輩たちの活動で満足しているので、特にありませんね。自分はアーティストではなく職人タイプだと考えているので、スキルやノウハウが財産です。そのため、個人でアルバムを出していくよりも、技術をシェアしていくことが、私が音楽をやっている意味だと思い、ESTIMATEを立ち上げて会社の活動をしています。私個人だとしたら100曲も作れないので、フリーランスの時よりも今は楽しいですね。
――ESTIMATEが作る曲、これからも楽しみにしています!ESTiさん、今日はありがとうございました!
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次のページではヒョンテ氏&ESTi氏に、『デスチャ』の今後をインタビューします!