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「死にたくなければ教皇に従うのだな…」
『聖闘士星矢 黄金伝説』のラスボスであるシャドウクロスは、聖闘士たちが仕える女神アテナに次ぐ権力者である教皇…の影武者です。
シャドウクロスは教皇の姿を装って十二宮の最奥にある教皇の間に控えており、星矢がそこまでたどり着くと正体を現して「死にたくなければ教皇に従うのだな」と警告しつつ戦いを挑んできます。
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本作は車田正美氏の大人気コミック『聖闘士星矢』を原作としたゲームですが、原作コミックの連載開始は1985年12月で、本作が発売されたのは1987年8月です。本作の発売時に、原作は第70話あたりでしょうか? そのくらいの話数だと「十二宮編」はまだ中盤くらいだったと思われます。
そのタイミングの開発~発売では「十二宮編」のラストまでをゲーム化するのは不可能です。そんな事情もあり、本作は事前にゲームオリジナルラスボスのデザインが読者公募されました。そうして選ばれた投稿を元にして生まれたのが、このシャドウクロスです。
ただ、当時の筆者は「ジャンプ派」ではなく「単行本派」でしたので、ラスボスがそんな経緯で誕生したオリジナル聖闘士だとは露知らず…「これ、誰ぇぇぇぇぇ!?」となってしまったのでした。
とはいえ、その強さはラスボスというにふさわしいもので、この記事を書くにあたって当時有名だった最強パスワード(とうきょうとたいとうくこまがたばんだいのがんぐだいさんぶのほし)を敢えて使わずに再プレイしたらシャドウクロス戦までにボロボロになってしまい惨敗しました。
そして、ここまで来たらもう引き返せないので詰み(ゲームスタートか、パスワードを取ったところからやり直すしかない)です。今やっても強いな!?
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コスモは通院して増やせ
『黄金伝説』は、あまりに尖ったシステムも語り草となりました。主人公の星矢には「COSMO(コスモ)」と「DAMAGE(ダメージ)」という二つのパラメーターがあり、「ダメージ」はいわゆるHPです。
「コスモ」はMPやSPとでもいうべきもので、これを各種ゲージに割り振ることで攻撃力と防御力が飛躍的に上昇します。「ダメージ」の残量にまだ余裕があっても、「コスモ」が切れたら負けが確定する…そういうバランスでした。
そしてこの二つはステータス画面で双方向に変換できるので、残り「ダメージ」に不安があるなら「コスモ」から変換し、残り「コスモ」に不安があるなら「ダメージ」から変換する…とうまくやりくりするのがコツでした。
ここで重要になるのが、街の施設である病院です。病院ではバトルを一戦終えるごとに治療を受けることができ、「ダメージ」を一定値まで回復できます。
そしてこれらの仕様を合わせると見えてくる本作の攻略は…「バトルを一戦終えるたびに、ダメージが残り1になるまでコスモに変換してから病院で治療を受けることでダメージを回復しつつコスモも増やす」というものでした。
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簡潔にまとめるなら「コスモはこまめな通院で増やせ」となります。たしかに原作の星矢も重傷を負って入院するシーンなどがありましたが、そこはゲームプレイに取り込まなくてもよかったのでは…!?
さて、そんな『黄金伝説』から実に31年後となる2016年にはスマートフォンゲーム『聖闘士星矢 ゾディアックブレイブ』の配信が始まりました。約6年間の運営を経て2022年7月28日にはサービス終了となってしまうのですが、2021年にプレイアブルキャラとして「シャドウクロス」が実装されたのを見たときは「バ、バカな…こいつの設定はまだ生きていたのか…!?」とまたもや驚いてしまいました。
杉田智和さんのドスを効かせた演技で「教皇に従うのだな…」と往年のセリフを言ってくれているところが、なんとも懐かしさを抱かせます。
さて、「十二宮編」は『聖闘士星矢』における鉄板エピソードですので、『黄金伝説』から『ゾディアックブレイブ』までの間にも何回かゲーム化されました。筆者はそのすべてを遊んでいるわけではないのですが、印象的だったのは2005年にPS2で発売された『聖闘士星矢 聖域十二宮編』です。
同作にはプレイヤーが教皇となって十二宮に聖闘士たちを配置し、攻めてくる星矢を倒すのが目的の「幻朧魔皇拳」モードがありました。星矢を何度倒そうとも、そのたびに不屈の闘志でコスモを燃やして立ち上がってくるので「バ、バカな…青銅(ブロンズ)の小僧ごときになぜこんなにも強大な小宇宙(コスモ)が…」と作中の敵が味わう驚愕ぶりを存分に味わえたものです。
主人公とは異なる視点で作品の雰囲気を満喫できる、おもしろいモードでした(星矢が強くすぎてまったく勝てませんでしたが)。
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