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ファンタジー小説「ハリー・ポッター」の人気ぶりは、今更改めて説明する必要もないほど知られています。世界的に支持を集め、小説を原作とした映画シリーズも大ヒット。ユニバーサル・スタジオ内に「ウィザーディング・ワールド・オブ・ハリー・ポッター」が開園されるなど、多彩な展開を遂げ、いずれも大きな話題となりました。
そして今年の2月10日に、「ハリー・ポッター」は新たな世界を切り開きます。本シリーズの世界観をオープンワールドで表現した、アクションRPG『ホグワーツ・レガシー』の登場です。作中の人物たちの活躍を眺めるだけでなく、魔法学校の一生徒を自分が直接操作し、不思議で魅力的な世界を気の向くまま冒険できるようになりました。
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ただし、2月10日に発売された『ホグワーツ・レガシー』は、PS5/Xbox Series X|S/PC版のみ。PS4版とXbox One版は、ゴールデンウィークの最中となる5月5日に発売されます。
一部のハードではまだプレイできない状況の中、販売が始まった『ホグワーツ・レガシー』ですが、その不利を感じさせない躍進ぶりを見せ、発売から2週間で全世界販売本数が1,200万本を突破。SNSでも本作をプレイした体験や「許されざる呪文」などが話題となり、大いに盛り上がりを見せました。
先立ってプレイした人たちがいち早く本作の面白さを語り、方々から高い評価を受けている『ホグワーツ・レガシー』。PS4版の発売日を待望しているのはファンだけでなく、その実績と話題性から、原作や映画を見ていない未経験者の中にも関心を寄せている人がいるほどです。
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ですが未経験者からすれば、「ハリー・ポッター」を知らなくても楽しめるのか、そこが気になるところでしょう。実は筆者も、「ハリー・ポッター」をほぼ知らず、Twitterで話題になる要素だけをチラ見して知っている程度。“1ミリも知らない”とは言えませんが、謙遜抜きで“ミリ程度しか知らない”という、ほぼ無知な立場でした。
そんな“ミリ知り”勢が、果たして『ホグワーツ・レガシー』を楽しめたのか。一切の斟酌なし、プレイ体験と実感を主体としたプレイレポートをお届けします。
PS4版などでこれから遊ぶ人もいるので、ストーリー上のネタバレは極力控えます。また、「ハリー・ポッター」未経験者にもお届けするため、本シリーズ独自の専門用語も可能な限り抑えてあります。作品の知識がなくても全く問題ないので、PS4版やXbox One版でこれから遊ぶか悩んでいる方は、この記事を参考にどうぞ。
なお、今回のプレイレポートはPS5版を遊んだ体験に基づいています。
■原作ありのゲームながら、主人公とプレイヤーは同じ目線
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アニメや漫画などの原作がある作品がゲーム化された場合、重要なのが主人公の存在や立ち位置です。原作にいるキャラが主人公だと、未経験者はまずここで壁を感じます。
この最初の懸念ですが、『ホグワーツ・レガシー』の場合、まったくと言っていいほど気にする必要はありません。主人公は既存のキャラではなく、しかもキャラクターメイキングで作成します。主人公に関する必要な事前情報はほぼゼロですし、自分好みのキャラを作って遊べるので没入度の点も問題ありません。
また主人公は、魔法の学校(ホグワーツ魔法魔術学校)に編入する生徒という立場で、学年は5年生です。中途からの編入なので、学校に在籍している生徒や先生との接点はなし。学校での経験は、主人公とプレイヤーが同じ歩みでこれから培います。
両者の位置が近しいので齟齬は生まれず、「主人公だけ知っていてプレイヤーが知らない」という情報がなく置き去り感はありません。原作があるゲームながら、誰でも入りやすく構成されているのは嬉しい点です。
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また世界観についてですが、本シリーズ独自の単語などがいくつも存在します。原作を知らないと、初めて聞く言葉を目にする機会が多々あります。そうした独自の言い回しに慣れる必要こそあるものの、さほどの苦労ではないとも感じました。
例えば、完全オリジナルのファンタジーRPGを遊ぶ時も、その作品固有のワードと出くわします。『ホグワーツ・レガシー』独自の単語に触れるのは、そうした作品を遊んだ時とほとんど変わりません。また独自の単語は、建物や土地、呪文の魔法といった名詞が大半を占めており、理解に悩むこともなし。
しかも本作は、「ハリー・ポッター」で描かれた世界よりも約100年前も前の時代。主要な登場人物もその当時の人間たちなので、こちらも事前知識は必要ありません。ファンでも未経験者でも、『ホグワーツ・レガシー』の世界は新しく刺激的な世界を提供してくれます。
■「再現度」が分からなくても、「世界の構築」の素晴らしさを実感できる
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『ホグワーツ・レガシー』の魅力について、多くの人が「再現度が凄い」と語ります。しかしその素晴らしさを実感するには、元となる世界を知っているのが前提です。筆者のような未経験者は、残念ながら再現度への驚きや関心を味わうことができません。
しかし、本作の世界に驚きがないのかと聞かれれば、その答えはNOです。原作を意識せずとも、『ホグワーツ・レガシー』の世界は目を奪う刺激に溢れていました。
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舞台の中心となるのは、主人公が籍を置く魔法の学校ですが、ここの作り込みがまず凄まじいレベルです。科目ごとに分かれた教室が点在し、それを繋ぐ通路や広間、階段などが立体的に組み合わされており、そのすべてが伝統や歴史を感じさせる装飾に満ちています。
しかもただ広いだけでなく、主人公が近づくとリアルタイムで組み上がる階段や、時折しゃべりだす甲冑、構内を徘徊する白い霊など、「魔法が当たり前に存在」という世界観を、視覚的に演出する仕掛けが盛りだくさん。そのため、学校内を歩いているだけで、様々な楽しさに出くわします。
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ほぼ未経験者なので「ハリー・ポッター」の再現度については語れませんが、「ファンタジー世界の構築」という点だけで考えても、『ホグワーツ・レガシー』が非常に高いレベルでそれを実現していると実感できます。そんな世界に没入できる喜びは、未経験者でも十分味わえます。