最新の『人生ゲーム』は同性婚に対応し、配信者にだってなれる!一方、風刺やネガティブ要素は控えめ?

最新の『人生ゲーム』は同性婚に対応。職業には「配信者」なんてものも。

ゲーム Nintendo Switch
最新の『人生ゲーム』は同性婚に対応し、配信者にだってなれる!一方、風刺やネガティブ要素は控えめ?
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アメリカのテーブルゲーム『The Game of Life』の日本版『人生ゲーム』は、今に至るまで様々なバージョンが登場しています。

特に「その時代の世相を反映する」という点では、『人生ゲーム』は非常に敏感です。現代の目から見ると「当時はこんなものが流行っていたのか!?」と思わせてしまうほど、『人生ゲーム』はその時代の雰囲気を常に取り込んでいます。

さて、10月6日に配信が開始された『人生ゲーム for Nintendo Switch』にも、そのような具合の「現代への同化」が施されているようです。

◆その時代を反映するテーブルゲーム

一番最初の『人生ゲーム』がタカラ(現タカラトミー)から発売されたのは1968年9月。この時代、「お金を稼ぐ概念のある双六」自体が日本では珍しいものでした。

従来の双六は、単にゴール(あがり)までいかに早く到達するかを競うゲーム。しかし『人生ゲーム』はお金を貯蓄しなければならず、運が悪いと借金生活です。また、職業に就くことにより給料をもらえるという概念もあります。

1968年の日本は、高度経済成長期の真っ只中。所得は毎年着実に増え、それに応じて人々の可処分所得にも余裕が出てきました。ある意味、時代の雰囲気は2023年の今よりも明るかったかもしれません。

しかし、時代はやはり流れるもの。オイルショックをきっかけに高度経済成長期が終わり、70年代後半、80年代、バブル期、そして出口の見えないデフレ経済期へと移っていきます。ところが、『人生ゲーム』は古き良き高度経済成長期と共に墓場に入るどころか、それぞれの時代に合わせて姿を変えながら「日本を代表するテーブルゲーム」としての地位を確立していきます。

◆今作では同性婚が可能

筆者自身が特に覚えているのが、1994年発売の『人生ゲーム平成版VI』。これは前年の「米騒動」を反映した内容でした。

お金だけでなく、米を蓄えなければならないというルールを採用。しかもアッパー系とダウナー系の2種類の薬(もちろんヤバい薬です)まであり、それを使って出目を操作することも可能です。ただし、薬を持ち続けていると一斉摘発が……。

この『平成版』シリーズというのは90年代らしくブラックかつアダルティな内容で、子供がやるにはやや敷居の高いものでもありました(けれど筆者は堂々とプレイしていましたが)。

一方、今回ニンテンドースイッチ向けに配信が開始された『人生ゲーム for Nintendo Switch』は、CEROレートAが示す通り全年齢向け。難読漢字を抑え、子供でもプレイしやすいように設計されています。薬? そんなのあるわけじゃないじゃないですか!!!

しかし、そんな『人生ゲーム for Nintendo Switch』にもしっかり「現代の価値観」が反映されています。

メインプレイモードでは子供時代から老後に至るまでの人生を追体験することができ、お金や資産の他にも能力値の概念があります。就職、転職、または現在の職業で出世する際にはこの能力値が物を言う仕組みです。

そして、『人生ゲーム』といえば何と言っても結婚イベント。ところが『人生ゲーム for Nintendo Switch』の場合は必ずしも結婚する必要はなく、しかもパートナーに同性の人を選ぶことも可能。同性婚という概念が実装されているのが今作の特徴です。

さらに厳密に書けば、「性別」の概念自体がかなり薄口に仕上がっています。「この人は男性、あの人は女性」とステータスで決められているわけではありません。

◆ネガティブなイベントは少なめ

同性の人と結婚するか異性の人と結婚するかで、表現に差は殆どありません。あるとすれば、せいぜい結婚式の時の服装くらい。

これはパートナーが同性でも子供を作ることができるという意味でもあります。「天からの授かりもの」という表現で、2人の間に子供が誕生します。

「どのような人生を選んだか」「誰と結婚したのか(或いは結婚しないのか)」という選択肢の違いで極端なポジティブ・ネガティブ表現は見受けられず、「どの人生を選んでも楽しくプレイできる」という方向性が貫かれているようです。また、このゲームにはネガティブなイベントマスがあまり多くなく、「不運に苛まれてまったく楽しくない人生になってしまった」ということは起こり得ない仕様です(ただし、運のパラメーターは実装されています)。

幼児期から高校卒業までの若者時代を丁寧に描いているのも、筆者から見れば好印象。一方、この部分だけをプレイする「子どもだけモード」や、逆に省略する「大人からモード」も用意されています。なお、全生涯をプレイヤー4人でプレイした場合にかかる時間は約2時間20分。うん、やっぱりそれなりのボリュームです!

◆「風刺要素」はゼロ

職業は会社員、サッカー選手、野球選手、医者、俳優、料理人、アイドルといった「定番の職業」の他、現代らしく配信者というのもあります。個人的には格闘家という職業があるのに驚きました。

ただ、現実にはないような尖った職業はありません。また、一度就いた職業から解雇されても無職になることはなく、最低限の稼ぎを得られるフリーランスという職業があります。うーん、でも配信者やマンガ家って、結局はフリーランスじゃないのかなぁ? まぁ、そんな細かいことはこの際問題にするべきじゃないでしょう。


『人生ゲーム for Nintendo Switch』の価格はダウンロード版が6,600円。ソフトとしては決して安価というわけではありませんが、その分だけ作りがしっかりしているという印象が見て取れます。

ただ、『平成版』のつもりでこれを購入してしまうと期待は裏切られてしまいます。『人生ゲーム』とは二条河原の落書のような「その時代の風刺」と捉えている人には、正直不満を感じてしまう内容ではあります。他のプレイヤーを直接攻撃するようなアイテムや選択肢等もなく、そのせいで何となく物足りない……という見方も無きにしも非ず。しかしこのあたりは「最後まで混戦になりがちで、意外な人が1位になる」という効果も生み出しています。

そしてこの作品、やはり1人で遊ぶよりも多人数で遊ぶべきものかもしれません。ローカルプレイやオンラインマルチプレイにも対応しているため、たまの休日に家族や友達で遊ぶのには最適のゲームと言えます。


人生ゲーム for Nintendo Switch -Switch
¥5,758
(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)

《澤田 真一》

ゲーム×社会情勢研究家です。 澤田 真一

「ゲームから見る現代」をテーマに記事を執筆します。

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