『ほの暮しの庭』は『夜廻』ファン、スローライフ好き、新規ユーザーのすべてに“良し”! 唯一無二の「不穏生活シム」恐怖も暮らしもお好み次第【プレイレポ】

ホラーが主役か、それともスローライフか。その答えは両方でした。『ほの暮しの庭』は、『夜廻』チームの新境地とも呼べる「不穏な生活シム」に仕上がっていました。

ゲーム プレイレポート
『ほの暮しの庭』は『夜廻』ファン、スローライフ好き、新規ユーザーのすべてに“良し”! 唯一無二の「不穏生活シム」恐怖も暮らしもお好み次第【プレイレポ】
『ほの暮しの庭』は『夜廻』ファン、スローライフ好き、新規ユーザーのすべてに“良し”! 唯一無二の「不穏生活シム」恐怖も暮らしもお好み次第【プレイレポ】 全 22 枚 拡大写真

■『夜廻』譲りのホラー体験

そんな『ほの暮しの庭』を唯一無二の存在にしているのが、根底に流れるホラー要素です。

舞台となる彼ヶ津村は山間部にある小さな集落で、住民の人数も多くはありません。そんなささやかな世界だからこそ、村の秩序を守るために「掟」が存在するのでしょう。しかし、この「掟」そのものが大きな問題でした。

「村のために協力せよ」「見知らぬ者に近づくな」といった掟は、まだ理解できます。しかし、「他人の秘密を暴くな」という、ある種のマナーとも言える姿勢をわざわざ掟に組み込むのは、逆に「よほどの何かがあるのでは」と邪推してしまいます。

また、「村を出てはならぬ」はやり過ぎのように感じますし、「山からの声に応えるな」まで来ると、ホラー要素に直結しているとしか思えません。

こうした「掟」にまつわる展開へと、プレイヤーは向き合うことになります。例えば、先ほど触れた「午後11時以降外出禁止」という掟が生まれた理由は、深夜の彼ヶ津村に「怪異」がうろつくためです。

「怪異」も多種多彩で、道を塞ぐ者もいれば、敵意をむき出しにして襲いかかってくる者もいます。単に驚かせるだけでなく執拗に追跡してくる怪異も多く、それぞれ対処法が異なるため新たな怪異に遭遇するたびに緊張感が走ります。

時には、怪異に追われて逃げ惑う先に別の怪異が立ちはだかる──といった場面もあり、しばしばパニック寸前に追い込まれたことも。「何をしてくるのか、そして何が起きるのか分からない」という未知の恐怖は、『夜廻』シリーズとも相通じる卓越したホラー要素と言えるでしょう。

■本当に恐ろしいのは、得体の知れない「不穏」な気配

しかし、『ほの暮しの庭』における重要なホラー要素は、怪異との遭遇だけではありません。怪異による直接的な恐ろしさとは対照的に、彼ヶ津村に広がる「正体不明の不穏さ」もまた恐ろしいものでした。

住民たちは基本的に、親切で友好的です。主人公のような「外部から来た人間」を排斥するような態度も、ほとんど見せません。

恐ろしいのは、村に住む住人ではなく、彼ヶ津村そのものです。「掟」を強いる圧力も不気味ですが、本質的に問題なのは「掟」そのものではなく、なぜその掟が生まれたのか──という点にあります。

先ほど紹介したように、「午後11時以降外出禁止」という掟は、蔓延る怪異と出くわさないための防衛策だと判明します。このように、掟となるに至った理由があると考えると、この村に秘められた「得体の知れない謎」が、形をとらぬ恐怖としてまとわりついてきます。

己の罪を「なかったこと」にして欲しいと呟く者、「呪いのようなもの」として鎖で封じた箱を部屋に置く者、「もう少しだけ、時間をください……」とひとり願う者など、住民たちが一瞬見せるその姿に、測り知れない謎や闇が隠されているように感じられ、静かに息を飲むこともしばしば。

そして特に気になるのが、当時の新聞にも掲載された「相次ぐ異常死」です。わずか1週間で7人も死亡するという出来事が、彼ヶ津村でかつて起きていました。その出来事は今も住民たちに深い影を落としており、その断片だけがこちらに伝わってきます。

こうした出来事が「怪異」と結びついているのか否かは伏せておきますが、夜ごとの異変に加え、社会的にも認知されている事件も絡み合い、オカルトとサスペンスの両面から、『ほの暮しの庭』の物語を盛り上げていきます。

スローライフの穏やかな日常と、村全体を覆う不穏な空気。この対比こそが、『ほの暮しの庭』最大の魅力と言えるでしょう。

■幅広いユーザーに「三方よし」な『ほの暮しの庭』

『ほの暮しの庭』は、スローライフ好きのユーザーにも応えるポテンシャルを持ち、『夜廻』ファンが求めるホラー体験にも十分応えてくれる作品でした。

しかも両者を融合させたことで、平穏な日常に不穏な気配が漂い、ともすれば作業感に陥りやすい毎日のワークにピリッとしたメリハリが生まれます。

また、従来のスローライフゲームは、プレイヤー自身が目標を見つけて遊ぶ作品も少なくありません。しかし本作には、「掟」という明確な謎があり、それを追い求めるという動線が分かりやすく示されています。そのため、スローライフゲームの経験がない人でも、物語に導かれながら遊びやすい作品になっていると感じました。

強いて難点を挙げるなら、一通りのシステムが解放されるまでかなり時間がかかります。要素が豊富な作品だからこそですが、チュートリアル的な要素が終わるまでまとまった時間を要します。そのため、序盤を乗り切る心構えがあった方がいいかもしれません。

それでも、『夜廻』チームが培ってきたホラー演出の手腕と、スローライフゲームの作り込みが融合した本作は、楽しくて遊び甲斐があり、不穏で先が気になります。

『夜廻』チームの実力が発揮された奥深いホラー体験、十分仕上げられたスローライフパート、新規ユーザーにも遊びやすい展開と、まさに「三方よし」な『ほの暮しの庭』。「恐怖」と「生活」が共存する唯一無二の体験を味わいたいなら、本作はまさにうってつけです。


『ほの暮しの庭』は、ニンテンドースイッチ/スイッチ2/PS5/PC(Steam/Windows)向けに配信中。価格は9,020円(税込)です。(ニンテンドースイッチ版のみ7,920円(税込))

詳しくは、公式サイトをご確認ください。

ほの暮しの庭 -Switch2
¥7,851
(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)
ほの暮しの庭 -PS5
¥7,316
(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)
  1. «
  2. 1
  3. 2

《臥待 弦》

楽する為に努力する雑食系ライター 臥待 弦

世間のブームとズレた時間差でファミコンにハマり、主だった家庭用ゲーム機を遊び続けてきたフリーライター。ゲームブックやTRPGなどの沼にもどっぷり浸かった。ゲームのシナリオや漫画原作などの文字書き仕事を経て、今はゲーム記事の執筆に邁進中。「隠れた名作を、隠れていない名作に」が、ゲームライターとしての目標。隙あらば、あまり知られていない作品にスポットを当てたがる。仕事は幅広く募集中。

+ 続きを読む

この記事の写真

/
【注目の記事】[PR]

特集

関連ニュース