
「キャッ党忍伝てやんでえ」とは1990年に全54話が放送されたTVアニメシリーズです。
物語の舞台は、アニマロイドと呼ばれるデフォルメキャラクターたちが生活する江戸風の都市エドロポリス。ヤッ太郎、スカシー、プルルンの3名のネコ型アニマロイド忍者「秘密戦隊ニャンキー」が、幕府転覆を狙う老中「狐塚コーン守(きつねづかコーンのかみ)」の陰謀に立ち向かうギャグアニメでした。
普段はピザ屋を営業しているニャンキーの面々ですが、それは世を忍ぶ仮の姿。いざ事件が発生すれば、“ピザの特急便”の名目でリボルバー型のカタパルトから発射! 大空を滑空して現場へと赴き、激しいバトルを経て解決へと導きます。



そんな本作が、なんと36年ぶりに新作ゲームとなって登場!「なぜ『キャッ党忍伝てやんでえ』が今になって新作ゲームに!?」と当時のファンが疑問に思う中、東京ゲームショウ2026では、UAEに拠点を置くインディー系のパブリッシャー「Red Dunes Games」のブースで試遊コーナーが出展され、多くのファンの熱視線を浴びていました。
その試遊の列は、なんと60分待ちにもなったとか……!
当時のファンと思しきプレイヤーはもちろん、それよりも若いプレイヤー、さらには子ども連れのファミリー層まで「あれなにー?」と興味を示していて、国内では“知る人ぞ知る”「キャッ党忍伝てやんでえ」のポテンシャルの高さを改めて感じました。
しかしなぜ今になって新作ゲームをリリースするに至ったのでしょうか?
その答えのヒントとなるのが「当時のファン」と「海外メーカー」です。同じように話題となった『スペースコブラ:The Awakening』『UFOロボ グレンダイザー:たとえ我が命つきるとも』と同様に、「あのアニメ作品にまた会えるかも!」と思えるような希望を探りたいと思います。

◆『キャッ党忍伝てやんでえ ~復活のニャンキー! やっぱり明日は日本晴れ!』ってどんなゲーム?
本作、『キャッ党忍伝てやんでえ ~復活のニャンキー! やっぱり明日は日本晴れ!』は海外名称『Samurai Pizza Cats: Blast from the Past!』の2DアクションRPGです。
プレイヤーはニャンキーの3名のメンバー、ヤッ太郎、スカシー、プルルンをステージ内で自由に切り替えながら2Dステージを攻略し、見下ろし型のエドロポリスの町を歩き回ってサブクエストを受注したり、アイテムを購入したり、町民と会話したりします。
クエスト中はキャラクターのレベルアップや新たなバトルカードの獲得ができますし、バトルカードの所持状況によっては新たなルートが解放されるなど、探索の楽しみも味わえます。
もちろんプレイアブル3名のうち、ひとりを重点的にパワーアップさせても問題ありませんが、中には特定のキャラクターが出撃不能なクエストがあったり、特定のキャラクターのスキルが必要だったりで、スムーズに攻略するならバランスを取りながらの育成が求められます。



特筆すべきは当時の世界観を完全再現したビジュアルと、オリジナルスタッフの参加およびオリジナルキャストの吹き替えです。
本作では当時の雰囲気を完全再現するため、あえて4:3のアスペクト比で作画。すべてセルアニメ時代と同じ、手描きの温かみある画面作りをめざしました。またオリジナルストーリーとなるシナリオ面では、関島真頼さんとともにシリーズ構成および脚本を担当したあかほりさとるさんが参加しています。
吹替え版の声優陣も、ヤッ太郎役の山口勝平さん、プルルン役の折笠愛さん、ナレーターの堀内賢雄さんなどオリジナルキャストが復帰。スカシーは山下誠一郎さんにバトンタッチしているものの、当時の雰囲気が感じられる役作りをされていて違和感はありませんでした。
本作が放送された1990年といえばファミコン時代の最後の世代。1990年にスーパーファミコンがリリースされる中、「キャッ党忍伝てやんでえ」のファミコン版ゲームが1991年にリリースされました。
ドット絵からセルルックに進化した本作は、TVアニメ本編とは異なるメディアであるものの、続編として楽しめますし、もちろん本作を入り口にして新たなファンが楽しめる内容となっていました。



◆「キャッ党忍伝てやんでえ」は90年代アニメブームの隠れた名作⁉
隠れた名作は少し言いすぎかもしれませんが、潜在的なファンの熱量は、30年以上経っても良い思い出として消えることなく胸の中にありました。
タツノコプロといえば「タイムボカン」シリーズが有名ですが、80年代当時は「超時空要塞マクロス」「赤い光弾ジリオン」「天空戦記シュラト」などが人気で、とくに「天空戦記シュラト」は「聖闘士星矢」「鎧伝サムライトルーパー」に続く美少年ヒーローアニメとして認知され、多くの女性ファンを熱狂させていました。
その「天空戦記シュラト」に、“小山カメラマン(タイムボカンシリーズ)”で有名な小山高生さんとともにシリーズ構成として関わったのが関島眞頼さんであり、当時文芸として参加したのがあかほりさとるさんでした。

あかほりさんは「天空戦記シュラト」のノベライズで作家デビューし、その後、「NG騎士ラムネ&40」のシリーズ構成、「爆れつハンター」や「セイバーマリオネット」の原作者として活躍。90年代は声優ブームに端を発するアニメブームに湧いており、深夜ラジオが続々と立ち上がる中、そのブームの中心人物のひとりとして引っ張りだこでした。『サクラ大戦』シリーズに関わるのは、そのブームの真っただ中のことです。
筆者としては忍者好きだったこともありましたが、「天空戦記シュラト」のファンでノベライズも読んでいたことから「キャッ党忍伝てやんでえ」に注目。田舎の出身なので日曜の朝6時という時間帯ながら、毎回眠気と戦いながら視聴していました。
そのような状況なので本編の詳しいエピソードはよく覚えていませんでしたが、特徴的なオープニングテーマだけは明確に記憶に刻まれています。時代劇などで「おっとどっこい」と聞くと、「おっとどっこい過去、おっとどっこい未来~」の歌い出しが自然と甦ってきたほどでした。

またシリーズ構成の関島眞頼さんといえば、1992年に放送された「宇宙の騎士テッカマンブレード」(こちらもタツノコプロ)なども有名なところ。ハードSFの本作は、記憶を失った主人公Dボウイの悲劇的な運命が描かれており、衝撃的なラストに何とも言えない余韻を感じました。その後、AICの文芸・設定制作時代に担当した「新・天地無用!」では個人的に大変お世話になり、「こんな大人になりたい!」と思ったものでした。
「キャッ党忍伝てやんでえ」はその後、サバン・エンターテイメントにより「Samurai Pizza Cats」のタイトルで海外版が制作されることになり、世界中で放送されることとなります。しかし翻訳の資料が不足していたことから独自の世界観が構築され、カルト的な人気を誇ることになったそうです。
そのあたりの人気ぶりについて、声優の桃井はるこさんも、海外公演の際に反響の大きさを知って驚いたとXにポストしていました。頻繁に海外イベントに呼ばれていた桃井さんならではのエピソードです。
いずれにしても、アニメファンを中心にしたアニメブームの盛り上がりの中で、“知る人ぞ知るアニメ作品”として記憶に残ったのが「キャッ党忍伝てやんでえ」だったのです。

◆「スペースコブラ」と「UFOロボ グレンダイザー」はどうだったのか?
『キャッ党忍伝てやんでえ ~復活のニャンキー! やっぱり明日は日本晴れ!』で「なぜ今?」と感じましたが、過去、同様のリアクションとなったゲームが他にもありました。それが『UFOロボ グレンダイザー:たとえ我が命つきるとも』と『スペースコブラ:The Awakening』です。
『UFOロボ グレンダイザー:たとえ我が命つきるとも』の開発元は「Endroad」、『スペースコブラ:The Awakening』の開発元は「Magic Pockets」、どちらもフランスのメーカーで、パブリッシャーは両方とも「Microids」でした。
「UFOロボ グレンダイザー」「スペースコブラ」「キャッ党忍伝てやんでえ」はいずれも海外人気が高く、とくに「UFOロボ グレンダイザー」はフランスで視聴率100%を達成した伝説のアニメでもあります。しかしただ「海外人気が高いから」だけではなく、当時のファンが管理職になり、決裁権を持ったことでゲーム化につながったことが海外のインタビューなどから伝わってきました。
「作りたいから作った」。それぞれの記事で言及されるのはその「原作愛」です。
当時の映像をそのまま甦らせたい。『スーパーロボット大戦』のようなSLGではなく、実際にあの世界観でグレンダイザーを動かしてみたいなど、なみなみならぬ熱意を注いで作っていることがうかがえました。

「なぜ今?」という疑問に対して理由はさまざまですが、たとえばコラボをきっかけに単独ゲーム化企画を提案した「キャッ党忍伝てやんでえ」など、ようやく商品化を実現できるようになった環境の変化があったと言えます。
これまでの日本産IPといえば、日本側から打診して実現する実写化パターンがほとんどでした。しかしここ20年ほどで日本のアニメコンテンツがタイムラグなしで海外ファンの元へ届くようになったり、フィギュア業界では海外メーカーが版権元に打診して、昭和ロボットアニメや懐かしのキャラクターを最新の技術で立体化したりと、市場がようやく追いついた雰囲気を感じます。
つまり自国で完結していたコンテンツ展開が、グローバル展開の波に乗って、一方通行のものからようやく相互グローバル化したということ。
東京ゲームショウに限らず、フィギュアの祭典「ワンダーフェスティバル」や、アニメの祭典「アニメジャパン」でも海外出展が増えていることからもその雰囲気を感じます。映像ジャンルでは「超電磁マシーン ボルテスV」がフィリピンで実写化されて話題になりました。
つまり、これまでは「古い作品だから新しい展開がない」「人気の部分で弱いから新商品が出せない」と諦めるしかなかった状況が、「海外メーカーから打診があって実現した」という「キャッ党忍伝てやんでえ」のような例が増えるかもしれないということ。それはファンにとって新たな希望だと言えるでしょう。
次はどの“懐かしアニメ”または特撮作品が復活し、我々を驚かせてくれるのか? リメイクでも続編でもない、「オリジナルの復活」に今後も注目が集まります。





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