決して“完璧”ではない『アノマリス』を、夢中で遊んだ40時間─「異界」の探索は、粗削りながらも没入度が高く、不器用ながら「面白さ」を追求した意欲作【プレイレポ】

見慣れた街並みが異界へと変貌し、常識の通用しないアノマリーが行く手を阻む。そんな世界で約40時間を過ごした筆者が、『アノマリス』の探索や戦闘、物語の手触りをお伝えします。

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決して“完璧”ではない『アノマリス』を、夢中で遊んだ40時間─「異界」の探索は、粗削りながらも没入度が高く、不器用ながら「面白さ」を追求した意欲作【プレイレポ】
決して“完璧”ではない『アノマリス』を、夢中で遊んだ40時間─「異界」の探索は、粗削りながらも没入度が高く、不器用ながら「面白さ」を追求した意欲作【プレイレポ】 全 40 枚 拡大写真

■アノマリーの「ルール」を見抜き、異界の脅威に挑む

十分に強化した銃器と豊富な弾薬があれば、有利に戦えるのは確かです。しかし、すべてのアノマリーを容易に倒せるわけではありません。弾薬の問題に加え、アノマリーそのものが持つ「異質さ」が、対処を難しくする場合もあります。

一部の個体には独自のルールが設定されており、力ずくで倒せないわけではないものの、何も考えずに攻撃を続ければ消耗戦は避けられないでしょう。比較的脅威度の低い敵なら、シンプルな方法で対処できますが、異界の奥へ進むにつれて、こちらの常識が通用しない存在が次々と現れます。

アノマリーのルールを見抜き、突破口を探すことも本作ならではの楽しみです。そのため、ルールの内容はできるだけ伏せておきたいところですが、アノマリーの恐ろしさを伝えるため、一例だけ紹介しましょう。

あるアノマリーは、プレイヤーの視界に入っている間は非活性状態となり、まったく動かなくなります。この状態なら危険度はゼロですが、こちらの攻撃もほとんど通らず、ダメージを与えてもわずか1程度。ところが、視界から外した途端に活性化し、画面の外から主人公へ襲いかかってくるのです。

このアノマリーの近くには共鳴する「遺物」が存在し、それを破壊すればアノマリーも消滅するため、遺物の探索が撃破の鍵となります。しかし、視線を外せば襲われるので、周囲を調べるのも簡単ではありません。

敵を視界に捉え続けたい一方で、このままでは遺物を探せないという、悩ましい状況に陥ります。しかも、ほかのアノマリーと同時に出現することもあり、視界を制限された状態で別の敵とも戦う場面では、危険度が大きく跳ね上がります。

この例はかなり特徴的な部類ですが、アノマリーごとのルールを理解し状況に応じて柔軟に立ち回ることは、本作の大きな醍醐味です。強敵が単にステータスの高さだけで脅威となるわけではない点も、本作ならではの魅力と言えるでしょう。

弾薬とインベントリの兼ね合いを考え、アーティファクトを得るために敵を観察し、ときには特殊なルールを突破する方法を探る。こうした複数の要素が組み合わさることで、『アノマリス』の戦闘に深みが生まれています。

なお、さまざまな判断や取捨選択が求められる一方、ゲーム全体の難易度はそれほど高くありません。探索中に周囲を警戒し、異形化スキルも活用して弾薬を節約すれば、何度か倒されることはあっても、行き詰まることは少ないでしょう。

そのため、アクションゲームに自信がある人は、最初から高めの難易度を選ぶのがおすすめです。アノマリーの性質を見極め、限られたリソースをやりくりする面白さを、より強く味わえます。

■本編とサイドミッションで描かれる、濃密な物語

物語の好みは人それぞれなので、絶対的な評価を下すのは難しいもの。とりわけ本作は、異界によって現実世界が脅かされ、人類の未来も危うい状況に置かれています。全体的に閉塞感が漂うため、そうした雰囲気が肌に合うかどうかで受け止め方も変わるでしょう。

そうした相性の問題をひとまず脇に置けば、『アノマリス』の物語はかなり完成度が高いと感じました。あくまで筆者個人の感想ですが、ゲーム性の中心であるTPSアクションを邪魔することなく、同時に物語としての存在感もしっかりと保たれています。

先ほど、主要人物それぞれに焦点を当てた個別のキャラストーリーがないと触れました。しかし、登場人物の性格や考え方は本編を通して自然に理解できるため、個別のストーリーがなくても物足りなさは感じません。

もちろん、各キャラクターを掘り下げるストーリーがあれば嬉しかったのも確かですが、本編のなかで人物像を十分に描けているのは好印象です。

また、主人公は理論よりも感情寄りのタイプですが、危機に対処する際にはクレバーな判断力も見せます。人間味がありつつも話が早いため、物語の間延び感もありません。

そして、物語を語るうえで見逃せないのが、「サイドミッション」の存在です。本編の目的とは別に依頼を受け目標を達成することで報酬を獲得できるこの仕組みは、単に素材を集めて納品するだけの、いわゆる「おつかい」に終始するものではありません。

用意されている依頼はすべてストーリー仕立てになっており、それぞれに結末も用意されています。個別のキャラクターストーリーとは異なるものの、独立したエピソードと呼べるだけの規模と内容があり、見ごたえも十分です。

最初に触れた通り、サイドミッションのプレイ内容自体は「探索」と「戦闘」なので、本編と変わりません。しかし、ストーリーが独立しているため、“同じことの繰り返し”感はなく、世界観を理解するうえでも役立ちますし、主要人物の意外な一面が垣間見えるのも嬉しい点です。

本編とサイドミッションで物語を描く構造そのものはシンプルですが、それぞれの内容は濃密と言ってもいいほど。寄り道できる別コンテンツをあれこれと増やすのではなく、ここぞという部分に注力している姿勢は、ゲーム性だけでなく物語面にも通じています。

また、シナリオを担当した田中ロミオ氏の手腕も、物語の完成度を支える大きな要因です。内容について、うかつに語るとネタバレになってしまうのでもどかしいばかりですが、個人的には物語目当てでも満足できる作品でした。

■完璧ではなくても、40時間を駆け抜けるだけの魅力がある

繰り返しになりますが、『アノマリス』は完璧なゲームではなく、構造もかなりシンプルです。異界を探索し、TPSアクションでアノマリーと戦い、物語を進めながら戦力を整える。ゲーム体験の大半は、このサイクルに集約されています。

しかし、その限られた枠組みのなかには、異界の異質さを雄弁に描くロケーションや演出、弾薬とMPを管理しながら危険を冒して過生成異物を狙う駆け引き、持ち帰った素材を使った強化・開発など、プレイを支えるさまざまな要素が有機的に噛み合っています。

何を優先し、どこで危険を冒すのか。プレイヤーの手に委ねられたさまざまな取捨選択が、プレイにメリハリと手応えを与えてくれました。

苦難を乗り越えるたびに新たな物語が展開し、ときに驚き、ときに戸惑いながら、異界の深層を目指す『アノマリス』。この戦いの結末を見届けたいという気持ちと、いつまでも「異界」を探索していたいという二つの思いを抱えたまま、筆者は約40時間を駆け抜けました。

ゲームとしての完成度や物語の雰囲気、探索と戦闘の繰り返しをどう感じるかは、人によって好みが分かれるでしょう。また、粗のない作品を求める人には、気になる点が多い作品かもしれません。

それでも、異界ならではの不気味な世界観に惹かれ、限られた弾薬やアイテムをやりくりしながら未知の脅威に挑む体験を求めている人にとって、『アノマリス』は十分に遊ぶ価値があります。

本作の世界観やゲームシステムに興味を引かれたなら、ぜひ異界への探索に足を踏み入れてみてください。そこには、粗削りな部分を差し引いてもなお、約40時間にわたって夢中になれるだけの体験が待っていました。

ちなみに、本編をクリアすると遊び応えのある新たなコンテンツが開放されるため、「異界」の探索はまだまだ終わりそうにありません。

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(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)
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《臥待 弦》

楽する為に努力する雑食系ライター 臥待 弦

世間のブームとズレた時間差でファミコンにハマり、主だった家庭用ゲーム機を遊び続けてきたフリーライター。ゲームブックやTRPGなどの沼にもどっぷり浸かった。ゲームのシナリオや漫画原作などの文字書き仕事を経て、今はゲーム記事の執筆に邁進中。「隠れた名作を、隠れていない名作に」が、ゲームライターとしての目標。隙あらば、あまり知られていない作品にスポットを当てたがる。仕事は幅広く募集中。

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