見慣れた街や建物が、常識の通用しない異界へと変貌し、異形の存在が跋扈する──異常な空間「異界」を探索し、不可解な存在「アノマリー」と戦うTPSアクション『アノマリス/ANOMALITH』(以下、アノマリス)が、ニンテンドースイッチ2/PS5/Steamに向けて2026年10月29日に発売されます。
この発売に先駆けてプレイする機会に恵まれ、いち早く本作を約40時間プレイしました。その体験を元に、実感した本作の特徴や手触りをお届けします。

なお、今回プレイしたのはPS5版です。物語のネタバレには触れていないので、プレイ予定の方も安心してご覧ください。ただし、一部のアノマリーやアイテムを取り上げているので、ご注意ください。
■独自の世界観に期待が集まる『アノマリス』

本作は、自然法則を超越した「異界」を舞台に、そこで待ち受ける不可解な「アノマリー」との戦いをTPSアクションで描きます。設定からして万人向けとは言いにくく、独特の世界観が印象的な作品といえます。
TPS自体は世界的に人気のあるジャンルですが、「異界を探索するシングルプレイのサバイバルアクション」という方向性は、決して一般的ではありません。だからこそ、こうした雰囲気や設定に惹かれるユーザーにとっては貴重な存在であり、期待を寄せる人も少なくないのでしょう。
その期待の大きさは数字にも表れており、Steam版のウィッシュリスト登録数は12万件を突破。さらに、一定時間以上プレイした体験版のユーザー数も、各プラットフォームの合計で5万件を超えています(10月14日時点)。
これだけ期待されている『アノマリス』を、ひと足先にじっくりプレイさせてもらいましたが、最初に伝えておきたいのは、「決して完璧なゲームではない」という点です。
■グラフィックや構成には、気になる部分も

まず、モーションを含めたビジュアル全般について、リッチな印象はありません。本作はアニメ調のビジュアルを採用しており、写実的で高精細な作品とは方向性が異なります。ただ、近年はアニメ調の描画も進化しており、そうしたタイトルと比べると、やや物足りなさを感じます。
また、敵として登場するアノマリーのモーションも、基本的にシンプルです。「豊かな動きで滑らかに動く敵」を期待すると、肩透かしを食らうかもしれません。バージョン違いなどを含めても種類は豊富とは言いにくく、敵のバリエーションという点でも物足りなさが残ります。
主人公の「水無月 玲緒奈」は、装備によって見た目が変化します。着せ替えを楽しめるのは嬉しい要素ですが、組み合わせによっては衣装同士が干渉し、一部が貫通することもありました。着せ替え可能な3Dゲームでは起こりがちな問題とはいえ、長時間目にする主人公だけに、気になるところです。

加えて、「異界」内の壁が薄い場所では、アノマリーの身体の一部が壁越しに飛び出していることがありました。もちろん、そのまま壁をすり抜けてくるわけではないため、ゲームバランスに影響するものではありません。それでも、作り込みの甘さが気になるのは確かです。
こうした部分はプレイ中に幾度も目につくため、完成度を重視する人ほど、気になる点が積み重なっていくかもしれません。

ゲーム性にも言及すると、本作の構成はかなりストレートです。探索と戦闘を行う「異界」と、装備を整える拠点「危険区画対策室」の行き来に終始します。TPSアクションとその準備を繰り返すことが、ゲーム体験の大半を占めており、並行して楽しめるような独立した別のコンテンツなどはありません。
本編とは別に、依頼を達成して報酬を得る「サイドミッション」も存在しますが、こちらも基本的に「異界」の探索に挑むため、やること自体は本編と大きく変わりません。

本作では主人公以外にも主要人物がいるものの、各キャラクターに焦点を当てた個別のキャラストーリーもないため、寄り道を楽しみたい人にとっては、少し物足りない構成に映るでしょう。
■完璧ではない。それでも40時間夢中になれた理由

先ほど例を挙げたとおり、『アノマリス』は決して完璧なゲームではありません。そんなゲームを、なぜ筆者は約40時間もプレイしたのか。「仕事だったからなのか」と聞かれれば、答えははっきりとノーです。
今回、仕事としてプレイしたのは確かですが、40時間費やしたのは、あくまで筆者自身の判断です。それだけ長く遊び続けられたのは、『アノマリス』に時間を忘れて没頭できる魅力があったからにほかなりません。

先ほど挙げた問題点はもちろん偽りではなく、気になる点は間違いなくいくつもありました。それでも、『アノマリス』には、そうした粗さを補って余りある面白さがあったと感じています。
グラフィックの精度は、大作と比べれば見劣りするかもしれません。それでも、『アノマリス』の世界を表現するには十分な水準ですし、主人公である玲緒奈の操作感も悪くありません。
アノマリーの動きは確かにシンプルです。しかし、異形の存在ならではの挙動と捉えれば、不気味さを演出する要素として成立しています。世界観の設定を活用し、独自の雰囲気をうまく作り上げているとも言えるでしょう。

そうした工夫は、フィールドの描写にも表れています。「異界」は完全な異世界ではなく、現実世界を取り込んで変貌した空間です。病院や商店街、団地、地下鉄といった見慣れたロケーションを土台にし、奇怪な造形や演出を加えることで、異様な世界を作り上げていました。
例えば、広い廊下にぽつんと置かれた車椅子、ねじれながら長く伸びる通路、どこまでも連なり続ける車両、空に浮かぶレールの上を走る無数の電車。いずれも作中に登場する光景で、こうしたロケーションが「異界」ならではの不気味な雰囲気を存分に醸し出しています。

ささやかな違和感から目を疑うような景色まで、プレイヤーの精神に直接触れるかのような不気味さが漂っています。見慣れた場所が異様な姿に変わっているからこそ、そこに潜む違和感も際立つのでしょう。
グラフィックの水準そのものは、ハイレベルとは言えません。しかし、本作にとって最も重要なのは、必ずしも画面の美しさではないはず。世界を描くという意味では、異界やアノマリーが持つ「らしさ」の描写こそが欠かせません。

全部やろうとして中途半端になるよりも、雰囲気作りやロケーションの構築、核となるゲーム性に力を注いで世界を成立させる。そうした取捨選択が、本作の魅力をうまく高めているように感じました。
すべてが完璧なら理想的ですが、ゲーム制作には時間も開発費も人手も必要です。リソースは限られており、その配分がゲームの仕上がりを大きく左右します。その結果、先ほど触れたような粗さが残ったのかもしれません。

しかし、粗さを修正するよりも『アノマリス』という作品の個性を活かす要素により注力したのだとすれば、限られたリソースの運用として理解できます。決して粗さを肯定するわけではありませんが、『アノマリス』らしさを重視したのであればその判断が間違っているとは思えません。
完璧ではない『アノマリス』には、どのような魅力があったのか。続いては、探索と戦闘、そして物語の手触りについて迫ります。



