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8月も中盤にさしかかり、お盆の季節がやってきました。上半期も多くの名作が発売されましたが、この時期ならではのホラーゲームも忘れてはなりません。夏の風物詩でもあり一年を通して今が一番旬で、遊びがいのあるジャンルではないでしょうか。
今回はニンテンドースイッチで遊べるホラーゲームのなかから低価格かつ、恐ろしくもコストパフォーマンスに優れた作品を5つ紹介します。さぁ恐怖と戦慄の世界へようこそ。
『ザ・パーク』
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子どもたちに喜びと幸せを届けるはずだった遊園地は相次ぐ事故とともに、瞬く間に悪夢の楽園へと姿を変えました。『ザ・パーク』は主人公であり母のロレインが、落としたクマのぬいぐるみを探しに1人夜の遊園地にもどった息子を追いかける、一人称サイコホラーアドベンチャーゲームです。
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アドベンチャーゲームである本作は、物語の要所に日本語字幕を含めたムービーシーンが挿入され、母親の過去・遊園地の歴史・息子との関係が描写されます。単にプレイヤーをビックリさせるのではなく、ストーリーの背景や心情を理解しながら進むので一人称視点と相まって、高い没入感が得られるでしょう。
基本システムは探索のみ。主人公が一般人ということもあって銃を撃ったり殴ったりするバトル要素や謎解きはなく、アクションが苦手な人でもあたりの雰囲気を楽しみながら遊べますね。持てるアイテムもライトだけと徹底しており、あくまで精神的な恐怖を追及しているので道中でモンスターと戦うこともありません。もし敵がいるとしたらそれはプレイヤー自身の恐怖心でしょう。
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舞台が遊園地ならもちろんアトラクションだってあります。ジェットコースターや観覧車、アヒルボートなどは実際に乗って遊べるのです。そう聞くだけでわくわくしてきますね。しかしここは無人かつ恐怖の遊園地、その外観や仕様は普段とは違ったものになっているかもしれません。園内が丸ごとお化け屋敷になってしまったかのような味わいをぜひお楽しみください。
プレイ時間は全体を通して1時間前後と短時間で終わりますが、雰囲気や恐怖の演出が巧みにつくられており、心に傷跡を残すほどの強い衝撃を経験ができます。隠された真実が物語を通して徐々に明らかになるので、シナリオを考察しながら楽しむプレイヤーにおすすめ作品です。
¥6,100
(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)
『ダンジョンナイトメア 1+2 コレクション』
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プレイヤーを驚かせる演出と怖さが、実況プレイヤーを中心に話題になった3D脱出ホラーゲーム「ダンジョンナイトメア」シリーズがひとつになって帰ってきました。元はPC版のゲームですがニンテンドースイッチ版に向けてグラフィックとゲーム性が向上し、コントローラーの振動にも対応したため、ホラー演出がより一層引き立っています。
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はじめに背景をあまり語ることなく、ゲーム開始と同時にダンジョンに放り出されます。本作は悪夢にうなされる主人公が、薄暗い闇に潜む得体の知れないものたちから逃げながら、アーティファクトを見つけて脱出を図るのが目的です。ホラーの系統はいわゆる“ビックリ系”。そのため光源がほとんどなく、数歩先の道ですら見えない迷宮のなかから突如としてガイコツや猟奇的な絵画が出現します。これ見よがしに建てられている扉を前に「この先にいる、絶対いる」と思いながら恐る恐る開け、本当に出てきたときの恐怖はトラウマものですね。
ルールはシンプルでステージクリア制を採用。タイムリミットもないため時間をかければ誰でもクリアできますが、マップの構成・アイテム・敵の配置がランダムなので、何度プレイしても最後まで緊張感をもって楽しめます。
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出現するモンスターは主にガイコツとミイラの2種類。ガイコツは視界内のプレイヤーをジッと監視し、目を反らすと襲ってくる“だるまさんが転んだ”に似た駆け引きであり、恐怖の対象を見つづけながらの探索となり、非常にスリリングです。奇声をあげながら徘徊するミイラは執念深く、いちど発見されてしまうと安全だと思っていた扉を開けて追いかけてきます。実際に追われた際には背後を確認できない一人称視点と相まって、リアリティ溢れる恐怖を味わえるでしょう。
インディーゲームでありながら結構なボリュームがあり、プレイヤーの行動によってエンディングが変わる本作。つねに緊迫感を持ちながら寿命が縮むようなホラーゲームを探している方は、チャレンジしてみてください。
『ドットホラーストーリー ダブルパック』
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自分の幸せを掴み取るかはたまた罪悪感に押しつぶされるか、『ドットホラーストーリーダブルパック』は同シリーズの1と2がひとつにまとまったお得なセット商品です。その名の通り全編を通してドットで描かれる本作はサイコホラーアドベンチャーゲーム。いきなり驚かせてくるホラーとは違い、主人公の葛藤が徐々にプレイヤーの心を蝕んでいくでしょう。
主人公のプライスは法律事務所の社員です。お金持ちになりたい夢を持っている彼の仕事は、物件からの立ち退きを住人に迫ることでした。家賃滞納・道路建設などを背景に、身寄りのない老人や夢破れた男の家をおとずれて、同意を得るために手をつくすことになります。
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ゲーム性は探索とパズルがメインで難しい操作は必要なく手軽に遊べますが、一方物語は複雑で頭を悩ませながら進むことになるでしょう。
『ドットホラーストーリー』の主人公が任されている仕事の内容は重く、訪問するたびに住人から情の入った訴えをうけることになります。そして、何度も自身の道徳に背くような経験をすることでストレスが限界に達し、やがて幻覚を見るようになり精神的に地の底へと堕ちてしまうのです。しかし皮肉なことに、仕事をこなし罪悪感が大きくなるほど生活が安定します。
間接的とはいえ、プレイヤーも主人公を通して人の死や破滅に加担しながらストーリーをすすめていくため、彼が受けた衝撃やストレスがプレイヤーにも伝わる作りになっています。想像しただけでも恐ろしいですね。
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『ドットホラーストーリー2』では失意の底にあった主人公が内なる悪魔を克服するために自身の心の中を探索します。理性・苦しみなど感情をテーマにしたキャラクターと出会い、絶望を希望に変えるために過去を受け入れ、自身を許す必要がありました。前作同様、彼が経験する感情の揺らぎをプレイヤーも直接感じることになるので、涙なしには見れないでしょう。また、物語は前作の終わりから始まるため、プレイの際にはあらかじめ無印をクリアしておくとより楽しめると思います。
全体を通して登場人物に感情移入しやすい工夫がされており、訴えかける題材も重い本作。現実には起きえないファンタジーとは異なり、一歩間違えれば誰にでも起きうるリアルなテーマがプレイヤーの精神を削っていきます。1周3時間程度で遊べるので、普段のゲームの合間にプレイしてみてはいかがでしょうか。
『ネバーエンディングナイトメア』
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永遠に終わらない悪夢をさまよいながら精神的恐怖を与えるサイコロジカルホラーゲーム、それが『ネバーエンディングナイトメア』です。PC版にて発売された当初から主人公のモデルとなった人物や、手書き風のモノクロタッチなグラフィックが話題となり、一躍有名になった作品です。
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物語は主人公トーマスが自身の精神世界をさまよいながら、悪夢の正体に迫るというのが大筋です。ゲーム開始直後、目の前に立つ少女が口から血を吐き、実はそれが自分自身だったという恐ろしい描写からはじまります。
本作をプレイするうえで物語をより身近に感じ、深く考えるきっかけとして知っておくべき事実があります。それは強迫性障害と鬱病に苦しんでいた開発者自身の感覚がそのまま反映されたホラーゲームであるという点です。ストーリーの根幹はもちろん、作中に登場する人物や主人公との関係性に至るまで事実に準じたものになっています。全部で3つあるエンディングはどれも謎めいたものになっており、「何が現実なのかすら分からない悪夢」という製作者の経験のもと作られているのです。
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ゲームシステムは横スクロールアドベンチャー。操作は簡単で主人公が敵をやりすごすために隠れたり走ったりするほか、多少のギミックを解決するといった程度で難しくはありません。
ただ道なりに進んでいるだけでは単調になりがちですが、魅力はそれ以外のところにあります。例えば抽象的で不気味な背景・基本モノクロ調で描かれるのに血液だけは赤で描写されるムービーシーンや難解なストーリーといった要素です。これらは精神的恐怖を与える本作特有のものであり、プレイヤーが主人公の身に起きた出来事やその思考を考察することによってはじめてリアリティをもち、怖さへと変わるのです。
恐怖の演出が多いわけでもなく、アクションが難しいわけでもないのにプレイすると何故か心が疲れた気分になる『ネバーエンディングナイトメア』。考察が好きな人におすすめの作品となっています。
『コール・オブ・クトゥルフ』
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突然ですがクトゥルフ神話TRPGをご存じでしょうか?神話的知識を持たない一般人がさまざまなシナリオを通して、存在するだけで発狂してしまうような「神話生物」の恐怖に晒されながら真実を暴き、時には殺すことを目的として発狂するように楽しむテーブルRPGです。
『コール・オブ・クトゥルフ』はそんなクトゥルフ神話TRPGにインスパイアされた探索アドベンチャーゲームです。
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舞台は1924年のアメリカ。主人公であり探偵のエドワードは、とある悲劇的な死を調査するためにボストン州の小島、ダークウォーター島に向かいます。調査を進めたいが地元の人は何も話してくれず、警察の捜査報告も怪しいと悟った彼は独自に調査をはじめました。そして調べれば調べるほど、恐ろしい真実に近づいていくのです。
クトゥルフ神話TRPGに触れたことのある人なら、この伝統的な導入に「いかにも!」と感じるのではないでしょうか。プレイヤーが操る主人公のステータスはSAN値の通称で知られる「正気度」に加え、筋力・目星・オカルトなどの計7種類。これらの能力は作中のいたるところで使用され、物語の進行に大きくかかわってきます。
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本作にこだわりを感じるポイントは、より原作の雰囲気に近づけた展開を感じられるという点です。急にビックリするような演出は少なく、徐々に神話生物に接近する主人公を通じてじわじわとプレイヤーの心を恐怖で満たしていきます。どうあがいても自分の手の届かない存在が、自身の運命を勝手に決めていく、そんな恐ろしさを味わえます。また、おなじみのマジックアイテムやサイン、カルト集団といった語るには欠かせない要素がしっかり盛り込まれており、この素晴らしい雰囲気づくりにファンなら興奮すること間違いありません。
全体的に原作に忠実で王道のストーリーを描いているので、クトゥルフ神話TRPGの世界観で遊びたいけどなかなか集まって遊べない方や、興味はあるけどなかなか手を出せなかった方にはぜひプレイしてほしい作品です。
今回はニンテンドースイッチで遊べるホラーゲームのなかから、3000円以下で遊べるおすすめ作品を5つ紹介しました。夏が終わりに近づきながらもまだ暑さが厳しいこの季節に、身の毛もよだつようなホラーはぴったりのジャンルです。ゲームを通して夏の醍醐味を味わい尽くしてみてはいかがでしょうか。