■弱者だったはずなのに──いつしか芽生える「共犯意識」

一方で、まったく異なる感情へ向かうプレイヤーもいるでしょう。その代表例が、「共犯意識」です。
確かに、小人を冴子へ差し出す作業は苦しく、気が重くなります。しかし視点を変えると、自分が生殺与奪の権を握っていることに気づきます。

誰を生かし、誰を死なせるか。その最終判断は主人公──つまりプレイヤー──が下します。絶対的支配者は冴子ですが、その冴子から管理を任された主人公は、小人社会において2番目の権力者でもあるのです。
最初は自分も被害者だと思っていた。けれど、繰り返される日常の中で、「自分は支配される側ではなく、支配する側でもあった」と実感する瞬間があります。

その事実を嫌悪するプレイヤーは、さきほど触れた「怒り」に駆られるはず。ただし、嫌悪を感じず、冴子を許容するプレイヤーもいることでしょう。
後者の場合、そこから芽生える感情は「怒り」ではありません。冴子と同じ立場に立ち、小人たちの運命を左右する者同士として、奇妙な「共犯意識」や「一体感」が生まれる可能性があります。

直接であれ間接であれ、小人を死へ追いやるという「背徳感」を共有し、それがいつしか冴子との「連帯感」へと姿を変えていく。このように、怒りとは正反対の場所へ辿り着くプレイヤーが生まれることも、『SAEKO: Giantess Dating Sim』という作品の大きな特徴と言えるでしょう。
冴子へ反発するのではなく、寄り添う道を選んだ先に何が待つのか。その結末が気になったなら、ぜひ自身の手で確かめてみてください。
■あなたの「癖」は、どの感情に反応するのか

『SAEKO: Giantess Dating Sim』は、「不安」と「恐怖」から始まり、「罪悪感」に苛まれる日々を送る作品です。しかし、湧き上がる感情はそこで止まりません。
理不尽な世界に「怒り」を覚える人もいれば、自分への「嫌悪」に苛まれる人もいる。そして、「背徳感」の先で冴子との「連帯感」を覚え、共犯者としての立場に心を揺さぶられる人もいるでしょう。

かなりエッジの効いた作品なので、人を強く選ぶ面があるのは否めません。ですが、揺さぶられる感情のどれかに、自分だけの「癖」が眠っているなら、本作はきっと忘れられない一本になるはずです。
絶対的支配者との異様な共同生活は、単なる奇抜な設定では終わりません。プレイヤー自身の感情を暴き出し、その先にある嗜好や価値観すらも問いかけてくる──『SAEKO: Giantess Dating Sim』のプレイは、そんな危うくも唯一無二の体験を味わわせてくれました。

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