◆少年少女の感情と、様々な噂が交錯する日々を描く『夕闇通り探検隊』
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プレイステーションで表現の幅が広がったことで、様々なジャンルが恩恵を享受しました。特にホラーゲームは、非日常を演出する手段が多様化したことで、大きく盛り上がります。ですが、20年前に発売された『夕闇通り探検隊』は、直接的な視覚表現に頼らず、それでいて得体の知れない恐ろしさを見事に表現した作品でした。
本作の主人公は、「ナオ」「クルミ」「サンゴ」の三人。全員、同じ学年の中学生です。この3人が、とある出来事をきっかけに、彼らが暮らす「陽見市」で囁かれている数々の噂の真相を確かめるべく、探険へと乗り出します。
本作のホラー体験は、恐ろしげなグラフィックが不意に飛び出して驚かす、といった類ではなく、日常に差し込む異質な感覚が徐々に恐ろしさへと繋がっていくというもの。また、噂の中には人間が深く関わるものもあり、人の内面が恐ろしさを醸し出すといった展開も。背景から台詞に至るまで、徹底して“身近さ”を感じさせるため、そのリアルな味わいが異質な感覚と結びつき、より大きな恐怖を育ててくれます。
そのリアルさは、主人公3人の関係にも見て取れます。「ナオ」「クルミ」「サンゴ」は、学校でも有名な仲良し3人組・・・というわけではなく、むしろ学校内では接点も控えめ。放課後になると集まって調査という名の探険に乗り出しますが、絶妙なバランスの上に成り立っているこの関係は、危なっかしくもどこか切なげで、彼らの行く末も気になってプレイを続けてしまいます。
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攻略の難しさや移動の手間など、難点もいくつかありますが、『夕闇通り探検隊』がプレステ時代を代表するホラーゲームのひとつなのは間違いありません。しかし最大の問題点は、現在プレイする環境が非常に乏しいことでしょう。リメイクどころかアーカイブス化もされていないため、現物を入手する以外の方法が皆無。当時、スパイクが発売した作品なので、スパイク・チュンソフトが腰を上げてくれるのを祈るばかりです。
同日に、これだけユニークな作品が一気に発売されたプレステ時代。1本1本の紹介は駆け足気味となってしまいましたが、その濃さの一端だけでも伝わっていれば幸いです。
ハード性能の向上、プレステブームの活気、各メーカーのチャレンジスピリッツなどが合わさった結果、多くのゲームファンにとって忘れがたい作品が次々と登場しました。その勢いと熱は、形こそ変われども今のゲーム業界へと繋がっています。ゲームはいつでも──昔も今も──刺激的に満ちているので、輝くその一瞬一瞬をお見逃しなく!
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