ヒロインの最強属性・幼なじみを携えた「竜三」─決別してもなお、想いを馳せるふたり
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バディ系ヒロインに、助けられ&悲劇系ヒロイン。二大巨頭とも言うべき要素を備えたヒロイン候補たちが存在感を放っていますが、『Ghost of Tsushima』にはまだ、肩を並べるに足るヒロインがいます。それは、王道中の王道、幼なじみ系ヒロイン──そう、「竜三」です。
仁とは昔からの付き合いで、年相応にはしゃいだ記憶も数知れず。今回の動乱に際しては、菅笠衆の頭として仲間のために駆けめぐる姿を見せてくれました。
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作中での初対面時には、仁はもちろん、竜三もまた破顔するほどの笑みを浮かべます。この表情だけでも、余人が立ち入る隙のない確かな絆を感じさせてくれました。蒙古によって惨劇が広がる今だからこそ、この再会が大きく心を振るわせたのでしょう。
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武士ながら「冥人」として戦う仁と、飢えに苦しむ菅笠衆を率いる頭。こうした立場をそれぞれが持つ一方で、長年の付き合いで積み上げた関係性が、ふたりを強く結びつけていました。敵に囲まれた時も、咄嗟に背中合わせで構えるほど、互いに信頼を寄せるふたり。呼吸もバッチリです。
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しかし、子供の頃のように、自分たちの気持ちだけで動けない現実もあります。竜三は仲間を救うために、食料の手配や地頭からの褒美も視野に入れて、仁との共同戦線に加わりました。その身ひとつであれば、しがらみとは無縁でいられたかもしれませんが、それは全て“たられば”に過ぎません。
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仲間を守るのが最優先ながらも、「おい、仁……死ぬなよ」と、彼の安否を気遣う竜三。その心配りは、決して利害だけのものではないでしょう。
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また仁も、「舟で壱岐に渡ろうとしたり……」と、竜三との在りし日の思い出を辿りながら湯に浸かったことも。それぞれの立場に従い、物理的に離れてしまっても、互いを想う気持ちに薄れや混ざり気はありません。幼なじみ属性の強みを、惜しみなく活かした展開です。
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しかし、このふたりの立ち位置は、竜三の仲間が蒙古に捕らわれたことをきっかけに変化していきます。仁の手助けもあり、蒙古から仲間を取り戻すことに成功した竜三は、囚虜の際に恵まれた食事を与えられていたことを知りました。
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「仲間が腹を空かしてんだよ」──身を削るように言葉を吐き出しながら、仁を裏切り、彼の前に立ちはだかる竜三。地頭の志村には仁がおり、また協力する仲間も数多くいます。
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ですが、困窮しているこの対馬で、菅笠衆を救う余裕がある人は誰もいません。皮肉なことに、蒙古を除いては。竜三が刀を抜きつつ「あいつらには、俺しかいない」とつぶやいたのは、自分を正当化する言い訳か、仁を斬りたくない想いをねじ伏せるためか。その真意は、竜三にしか分かりません。
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事実上の決別を突きつけられた仁は、それでも諦めきれず、刀を交えながら「友ではないのか」と投げかけますが、「もう、昔の話だ」と切り捨てる竜三。菅笠衆の頭、そして飢えという現実が、幼なじみの絆をあっさりと踏みにじったのでしょうか。
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実のところ、竜三が抱く仁への想いは、決別を口にしてもなお揺らいでいません。兵が恐れる仁を目障りだと判断したコトゥン・ハーンは、褒賞をちらつかせ、竜三に彼を倒すよう促します。しかし竜三は、「仁の首を取った褒美なんてもらえるかよ」と一蹴。
仲間のため対馬に背を向けて裏切った竜三でしたが、それでもなお仁を傷つけたくないと、コトゥン・ハーンが相手であっても引きません。仲間のことだけを考えるならば、こうした反応は見せないはず。裏切り、昔の話と言いながらも、竜三は変わらず仁の幼なじみであり続けました。
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決別を経ても想いがかき消されないのは、仁もまた同様でした。湯に身を委ねながらも、考えるのはやはり幼なじみのこと。「竜三、戯れ言を並べてもいつか蒙古にも見透かされてしまうだけだぞ」と、彼の行く末を案じます。
裏切られた側なのに、それでもなお切り捨てられない──それは仁が持つ優しさゆえでもありますが、共に歩んだ歴史と繋がりを持った竜三が相手だからというのも要因のひとつでしょう。
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苦渋の判断を経た竜三でしたが、それでも仁と敵対しない手段を必至に模索し、「ハーンと会ってくれ」と蒙古への勧誘を口にしたことも。もちろんその選択は、仁にとって最もあり得ない道でした。
互いに相手のことを想い、しかし受け入れてもらえぬ現実に阻まれるふたり。かつては、生まれの差を軽々と乗り越え、一緒に過ごすこともできていたのに。今の不器用な道行きは、あまりに想いが純粋すぎたのと、それを許容しない厳しい現実のせいだったのかもしれません。
幼なじみ系ヒロインとの決別もまた、ヒーローの成長を促す大事な展開。その意味でも、竜三のヒロイン度はかなり高いと見ていいでしょう。(※個人の見解です)